速攻の先頭を走り、勝負どころでスリーポイントを決める存在感。西部は今季を代表するフォワードの一人として日本体育大を引っ張る役目を果たしている。
1年のときから主力としてプレーし、もう4年目。頼れるプレーぶりはこれまでと変わらないが、内面には変化も見える。特に国際試合では世界の学生レベルの高さに刺激を受け、より意識も高まった。日本体育大は7月に小澤飛悠がプロ入りし、同じフォワードとして西部にかかる責任はこれまで以上に大きくなっている。それを自覚しつつ己のパフォーマンス向上に挑んでいるが、最大の目標はやはりインカレ。過去3年間弾かれ続けてきた大学日本一の座を手にするために、最後まで走り抜く。
2度目のWUBSの経験は何より必要だったと思えるものに
─8月の話にはなりますが、WUBSに参加しての話を聞かせてください。
「WUBSは正直、もうめちゃめちゃいい経験になったんじゃないかなって思います。通常は海外のチームとやることがほとんどない状況で、ああやって関係者の方々が機会を作ってくださって出場できることになりました。そして対戦してみたらやっぱり壁を感じましたし、自分に足りないものが身にしみて分かった大会でした」
─日本体育大は昨年も出ていますが、違いというのはありましたか?
「昨年も出場して海外のチームとも対戦したんですが、めちゃめちゃ本気というか、勝ちにいくぞという状態になれていませんでした。自分だけではなくチームも絶対優勝するぞ!という気持ちでやれていなかったと思うんです。あの大会でどういう経験ができて、どういう風に大事なのかということをあまり深く考えられていませんでした。でも今年は全力で勝ちにいった結果、3位になることができました。韓国の大学(高麗大学校)ともやらせてもらいましたが、もう本当にあの試合では今までにないぐらいの圧を感じました。あの対戦は本当に自分にとって一番必要じゃないかなと思うくらい、印象的で貴重な経験になりました」

─WUBSは雰囲気も独特で慣れないと集中しづらいものはあるかもしれません。高麗大学校は優勝しましたが本当に強かったし、同じアジア人として日本の大学生も参考にして欲しいチームでしたね。その後の中国で開催されたAUBLは欠場となりました。
「コンディションの問題で欠場となりましたが、思ったより早めに復帰できて、リーグ戦も初戦からプレーしています。もう問題はありません」
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仲間の離脱で芽生えた責任感がリーグのプレーにつながっている
─リーグ戦は初戦からいつも通りのプレーだったので安心しています。今季の日本体育大は来年1月の天皇杯まで試合が続きます。例年以上にいろんな経験をしている1年ではあると思いますが、最終学年というのは自分にとってどういう時間になっていますか?
「今までのメンバーがいる状態、つまり飛悠(小澤。7月にプロ契約でB1名古屋に加入)がいるまま変わらず4年生を迎えていたら、多分今までと何にも変わらない状況だったんじゃないかなと思います。でも飛悠が抜けた分、自分がもっとやらないといけないという気持ちが強くなりました。それに加えて4年生という最終学年の自覚も芽生えてきて、自分が引っ張っていかないといけないとよく感じるようになっています」
─小澤選手がいたときの両ウイングは強力でした。でも小澤選手を抜きにしても西部選手の大事なときのプレーは1年から今までずっと目立っていますし、そこはさすがだなと思います。
「やはり今回のリーグ戦は勝利も大事なんですけど、自分の個人のスタッツも大事にしていることが大きいです。やはり波があるプレイヤーだとこれから先プロになっても苦労しますから。だからこうやって今、順調に毎試合2桁しっかり取れてターンオーバーも少ないという状況には満足していますし、これを継続していくことを考えています」

─今の4年生は1年生の時から主力としてプレーしてきた面々ですが、そこにはどういう想いがありますか?
「それはすごくありがたいことでもありますし、僕らは正直、言葉で伝えるのがとても下手くそなんです(笑)。なのでこの恩を返すならやっぱりプレーで見せるしかない。日体大らしいプレーをたくさんして、そういう部分で後輩たちに背中を見せていかないといけない。走って、得点を取って点差を広げて、下級生たちが経験できる時間を少しでも作ってあげたいなと思っています」
─そういう意味では今年の3年生はリーグ戦でかなり出番を得ていますね。
「3年生が頑張ってプレーしてくれています。だから4年もプレータイムのシェアができる時間帯が多くて、そこは本当に助かっています。3年生はポテンシャルも一流の選手が多いし、伸びしろもありますし、45番の朝田君なんて即戦力になるぐらいです。去年出てなかったのがおかしいぐらいの得点力があります」
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インカレで勝つことこそがチームの全員の最大の目標
─来年を見据える意味でも頼もしいですね。
そして西部選手自身、最終学年になりますが、今年は大事な大会にたくさん出ている状態で、何が一番の目標やモチベーションになっているのでしょうか?
「今まで春とか秋とかも優勝しているし、連覇もやってきましたけど、結局、インカレで優勝しないと意味がないんじゃないかなと思っています。去年は春も秋も優勝させてもらって、でもインカレでは名古屋学院さんに負けてしまいました。春と秋の優勝が帳消しになったといったらあれなんですけど、本当にそれくらい何もかもなくなってしまったかのような悔しい気持ちがありました。やっぱりインカレで優勝できるかどうかが大学バスケだし、それは日体大の全員が思っているし、それをどう達成するかというところにすべてがかかっていると思います」
─そのために何を見せ、何を大事に戦っていきたいと思いますか?
「やはり日体大らしさが一番大事じゃないかなと思います。例えばこのリーグ戦でも1巡目で負けた相手には日体大らしいプレーができていません。オフェンスで走れないし、ディフェンスをできなくて決められて、インサイドもコネ(#1)のところにもボールを入れられなくて、チームとして何か迷いがありました。でもこの前の1巡目ラストは(対白鷗大戦)これが最後、くらいの覚悟で挑んで、とてもいい試合ができたと思うんです。そういう試合をどんどん増やしていくことに集中したいです」

─やっていることを突き詰めるだけですね。西部選手が大学に来て良かった部分、成長できたと思っているところはどこですか?
「自分らしさを見つけることができたんじゃないかなと思います。やはり高校時代は玲音さん(米須・現B1川崎)もいましたし、ただ指示に従っていればいいという部分もありました。でも大学に来て1年生から主力で出させてもらって、下級生のときからコート内には同学年が多い状況で何もためらわずに話せる環境になりました。そこで自分の意見をしっかり言って、自分がしたいことやみんながしたいことを共有するようになっていったんです。自分がしたいことをちゃんと表現できるようになったことが大学で一番成長した部分だと思います」
─西部選手は下級生の頃は結構クールな感じかなと思っていましたが、今はコート上で感情もよく出るし声も出ている印象です。
「やっぱりこのレベルになってくると、勝つにはみんながコミュニケーションをちゃんと取って、今起きているミスや課題をすぐコート内で修正する必要があります。そういうところでコミュニケーションの必要性を学びましたし、それは最後までしっかりやっていきたいと思います」

※インタビューは第13戦終了時に行いました。
西部 秀馬(にしべ しゅうま)
189cm/80kg/F
東山高