初日から熱戦が続き、海外チームのハイレベルなプレーに会場が沸く
世界の大学バスケットボールチームが集まり、ナンバーワンを争うワールドユニバーシティバスケットボールシリーズ(WUBS)。今年はアジア、オセアニアから8チームが集結。トーナメント形式で頂点を争う。
WUBSの魅力はまず “大学チーム”の国際大会であるということ。代表戦では感じることのできない、世界の大学チームの実力を見ることができる。また、日本在住者をはじめコミュニティの応援団が駆けつけて声援を送り、国内チームのみの大会よりもむしろ賑やかで会場のボルテージは高い。配信では海外からの視聴者も多く、日本国内だけの盛り上がりにとどまらないのも特徴だ。
日本からは春のトーナメントを制して2年連続で出場権を勝ち取った日本体育大学、そして全日本大学バスケットボール連盟の登録選手から若手主体で選抜された日本学生選抜の2チームが出場し、世界の頂点に挑む。
試合は第1試合からワンゴールを争う熾烈な戦いが続き、大いに盛り上がった。出場を2回、3回と重ねているチームはこの大会の戦い方もわかってきているように見え、大会ごとにレベルが上がってきている。日本チームが悲願の優勝なるかにも注目だ。

海外勢はデ・ラサール大学と高麗大学校が勝ち上がる
昨年覇者のデ・ラサール大学(フィリピン)は一昨年優勝の国立政治大学(チャイニーズ・タイペイ、以下NCCU)と対戦。前半からデ・ラサール大学が大きくリードするが、4QにNCCUが肉薄する好勝負になった。残り2分36秒には両チームに2つずつのテクニカルが発生するほどにヒートアップする中、NCCUは残り17.1秒に3点差に迫る。しかし最後のシュートが決まらずデ・ラサール大学が84-89で逃げ切り、激闘を制した。
チームハイで昨年も主力として活躍した#25フィリップスは得意の日本語で「楽しかった」この大会や日本が「大好き」と、代々木に戻ってこられたことを喜んだ。今年は最上級生としてチームを支えるが、デ・ラサールの強みは「ファミリー」。バスケットだけではなく、食事や遊びのプライベートでも常に一緒に行動する仲間たちだからこそ出せる力があるという。培ったチーム力で再び頂点に立てるかに注目だ。

日本語も堪能で、昨年はBリーグでプレーする夢も語っていた。
昨年準優勝の高麗大学校(韓国)と初出場のフィリピン大学(フィリピン)の試合は、終盤フィリピン大学が追い上げた。立ち上がりは高麗大学校のスリーポイントが高確率で当たり、ここでついた10点程度のリードを維持していく。互いに強いフィジカルと勝負強いシュートを見せたが、ディフェンスの強度が高い高麗大学校がたびたびフィリピン大学を阻止する場面が見られた。
3Qはフィリピン大学が追い上げつつも、終了時には高麗大学校が12点のリードに成功。しかし4Qは追うフィリピン大学がじわじわ差を縮め、#77フランシス アリアスの2本のスリーポイントが決まって終盤同点に追いつく。高麗大学校はゴール下をねじ込み再びリードするが、ここから残り1分の攻防は激しかった。フィリピン大学のディフェンスに高麗大学校はターンオーバーやフリースローを与えるミスを犯し、点差は1。あわやという状態になるが、#24ムン・ユヒョンのスリーポイントが残り25.8秒で決まり66-70。さらにチームはフィリピン大学からスローインで5秒を奪う好ディフェンスを見せ、ファウルゲームで逃げ切りを決めて71-75。追いすがるフィリピン大学を下した。

勝利のポイントは「ディフェンス」という高麗大学校のチュ・ヒジュンHC。勝負強い得点が光ったが、それ以上に再三フィリピン大学からターンオーバーを奪ったディフェンスは大きなポイントだったといえる。WUBSは3度目の出場になるが、「絶対に勝たなければいけない大会として、プライド持って戦っている」が、理由の一つはこの大会を経験することは「韓国に帰った後のリーグ戦や定期戦でもいい結果を出せる」のにつながるからだ。初出場時は思うようなプレーができなかったが、2度目の昨年は準優勝。3度目出場となる今年は優勝を虎視眈々と狙う。
この試合23得点の#24ムン・ユヒョンは勝負どころのターンオーバーを反省しつつも「一番自信がある」というスリーポイントを5本沈め、チームの勝利に貢献した。現在本戦開催中のアジア大会の予選では国家代表にも選ばれているが、その後は怪我もあり復帰は1ヶ月前。それでもさすがの力を発揮した。昨年のWUBSは悔しい準優勝。今年目指すのはもちろん優勝だが「自分自身だけじゃなくて周りの選手もいる」とチームで勝利を取りに行く。

日本学生選抜・日本体育大学は緒戦突破、ベスト4進出
昨年は2チームとも緒戦敗退だった日本の2チームは、今回はともに勝利し、準決勝に駒を進めた。
若手主体で編成された日本学生選抜は初出場の香港大学(香港)と対戦。1Qから9-24とリードするとその後も順調に得点を重ねて31-98で緒戦突破。昨年は決勝に進んだ高麗大学校との対戦になり緒戦敗退したが、次のステップへと進んだ。急造チームではあるが、今年は攻撃力の高いメンバーが揃い、どこまでできるかに注目だ。
日本学生選抜の西尾HCは昨年に引き続き選抜チームを率いる。チーム練習できた時間は今年も3日程度と短いが、「昨年も選ばれて一緒にやっている選手たちが意図を汲んでくれている」と、積み重ねのメリットはある。日本学生選抜は基本的に下級生から有望株をピックしているが、若い選手たちにチャンスを与えることで「次の代表や選抜につながっていくよと言っている」と、ステップアップのための大事な場であることを伝えて奮闘を促す。次は強敵デ・ラサール大学との対戦になるが。「戦えない相手ではない」として「相手よりはまず自分たち。短い期間でもやってきたことを出して戦う」と意気込む。世界を相手に戦うまたとない機会、力を出し切ってもらいたい。

選抜チームは高さがないためインサイドの働きも問われる。
日本体育大学はシドニー大学(オーストラリア)との対戦。シドニー大学に先行されるが、2Qにリズムが良くなってくると前半は34-32と2点差。3Q、日本体育大学は#1コネがたびたびファウルをもらうとフリースローで加点。この試合初めての逆転に成功する。シドニー大学も何度も決め返すが、日本体育大学はセカンドメンバーが終盤踏ん張り46-50とリード。
最終Qは僅差の勝負となるが、日本体育大学は残り5分から#10早田、#41石川のスリーポイントが決まりこの試合最大の5点のリードに成功すると、残り1分では3点のリードになる。残り20秒、日本体育大学#11月岡が見事なスティールを見せ、シドニー大学も#11ムーアがスリーポイントを沈め残り8.5秒で点差は1。シドニー大はファウルゲームをしながら得点チャンスを狙っていくが、逆転をかけたラストシュートは決まらず64-65で日本体育大が競り合いに勝利した。

シドニー大学を1点差で下した日本体育大学。ディフェンスで再三スティールを奪ってみせた#21月岡は「この初戦を勝ち抜くというところにおいては、みんな一つの目標に向かって頑張ってきた」と、今大会に意識高く臨んできたことがうかがえる。
大会前にエースの小澤がプロ入りし、ポイントゲッターが欠けた状態だが「自分たちがやること変わらないので、いなくなった選手がいるとしてもその分団結力を見せたい」という。WUBSは世界のチームと戦える貴重な機会。また、チームはこのあと中国で行われるやはり大学生の国際大会に参加予定でハードな日程が続く。しかしどれも貴重な機会。「普段は戦えない相手チームのフィジカルの強さとか、日本では味わえないような緊張感とか雰囲気を経験しつつ、自分たちのやってきたことをどれだけ出せるかというところを追求していきたい」と次戦、さらにはその後の大会に向けてギアを上げていく覚悟だ。

月岡は日本学生選抜も含めて過去2回、WUBSに出場。3度目出場でこれまで培ってきたものを見せてほしい。
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