2勝1敗、入れ替え戦の3戦目に勝利した国士舘大が来季の1部昇格を決めた。
指導者として大学バスケの世界に戻ってきた国士舘大の松島監督は、キャプテンだった大学4年時、アシスタントコーチ時、そして今回は監督と、異なる立場で3度の1部昇格を成し遂げたことになる。
2020年に「指導者になる」と表明してプロ生活に終止符を打ち、母校のアシスタントコーチに就任。2024年より監督として指導の全権を握っている。しかしその1年目は2部リーグで序盤からつまずき順位は低迷。後半に立て直したが課題の残るシーズンとなった。そこから自分自身の何が悪かったのかを振り返った2025シーズン、リーグ戦では2巡目を1敗にとどめて3位に食い込み、見事入れ替え戦に勝利した。
まだ指導者として道は始まったばかりだが、大学生世代の指導にかける想いの熱さは人一倍あり、また同じ想いを持ち、目印になる先輩指導者たちもいる。こうした環境の中で結果につなげていくことが期待されるが、入れ替え戦後に語ったことからも懸ける気持ちが伝わってきた。
先輩指導者の想いに刺激され苦い経験を乗り越える
─1部昇格、おめでとうございます。昨年は結果が出ずにシーズンを終えてしまいました。そこから1年でのリカバリには何が原動力になったのでしょうか。
「昨年は自分の指導方針がちょっと間違っていたなと思っています。やはり大学生なので主体性は大事だと思っていたんですが、僕がそこを学生に任せすぎて、なかなかチームのバランスが取れていませんでした。やはり選手とともに歩むべきだと考えて、今シーズンはそれができたかなというふうに思っています。あとはチームの組織づくりに関してまだ足りないところがあったので、そこをまず根本的に変えるというか、バスケット以前のチームのマネジメントを優先してやってきました」
─一昨年の鍋田選手(現B2静岡)がキャプテンの代に入れ替え戦まで行きましたが、昨年は経験のある主力が少なかった大変さもあったのかなと思いますが。
「でもやはり自分の指導力不足だったと思います。自分に力がなかったので本当に去年の4年生には申し訳ないです。いい思いさせてあげることができませんでした。そうしたことをいろいろ振り切って、自分が大学バスケの世界に戻ってきて、何をやりたかったのかっていうのをまず考え直したんですよ。なぜプロ選手としての活動をやめて、なぜこの国士舘に帰ってきたのかと考えたら、やはり国士舘を変えたい、今のまじゃ駄目だっていうことと、あとは大学バスケのために貢献するためでした。それが去年の結果で、『俺は何をしてたんだ』だとすごく考えることになりました。選手に大部分を任せてしまうなら自分がやる必要なんかないですよね。悩んでいろいろ考えた末に、自分の中で覚悟が決まったのが昨年の12月ぐらいです」

─その答えを出すまでに何かキーとなる出来事はありましたか?
「網野さん(白鷗大監督)や西尾さん(大東文化大監督)、佐々木さん(専修大監督)たちに食事に招待してもらって話したことが大きいですね。『一緒に大学バスケットを盛り上げてほしい』と熱意を持って語ってくれたんです。そこで自分が本気で頑張らないとダメだなと思わされました。あの方たちの日本の大学バスケを良くしたいとか、強くしたいという思いを聞くと、『ああ、俺はだから勝てないんだ』ってすごく自分自身が恥ずかしくなったんです」
─網野さんや西尾さん、佐々木さんが指導者として中堅の世代に入られて、下の世代のコーチを引き上げようと尽力してくださっているのは感じますが、そのようなことがあったんですね。
「その日を境に、『自分が日本一を目指さないと駄目だな』と思ったし、それがきっかけでまずチームのいろんなことを見直してきました。バスケット面ではディフェンスの強化、そしてリバウンドの強さを求めていったし、オフェンスに関しては選手の主体性を上げながら状況判断を良くするという形を、僕がコミュニケーションを取ってやるように変化しました。まだまだ1部の強豪にはほど遠いかもしれないですけど、でも、今日勝ちきったことはワンシーズンやってきたことが少し実ったのかな、というふうには感じています」

WUBSで体感したアジアの中の日本の現状に危機感
─入れ替え戦を見ると、確かにディフェンスの強度がここ数年の中ではかなり強いなと思いました。
「この夏はディフェンスの練習ばかりやってきました。オフェンスについては何も言わないですが、ディフェンスはレバンガ時代、折茂さん(現レバンガ北海道代表取締役社長)をはじめ、一流の人たちのサポートがあったおかげで自分が鍛えられて、まだその強度を覚えています。だからこそこれじゃ駄目だということを叩き込みました。あとは夏に行われたWUBSは大きかったです」
─WUBSでは日本学生選抜のスタッフとして大東文化大の西尾さんがヘッドコーチ、そして松島さんと筑波大の仲澤さんがアシスタントコーチとしてベンチに入りました。あの3日間で何を感じられたのでしょう。
「フィリピンや韓国のチームを見ていると、このままじゃ日本はあかんと本当に思いました。何よりサイズも能力もある選手たちがものすごく泥臭く頑張ってディフェンスをするんです。それを監督が徹底させているというのもすごいことだと感嘆しました。西尾さんはもちろん仲澤君とかともいろんな話をしましたが、これをちゃんとチームに持ち帰ろうと。日本のバスケットを良くするために自分はコーチとして帰ってきたのだから、ここで得られたものを生かしてまずは自チームから変えるために努力しようと決意するきっかけになった3日間でした」

─そういったハイレベルな世界を学生に認識してもらい、鍛錬するのは大変ではなかったですか。
「選手はきつかったと思います。自分がWUBSから帰ってきたらなぜこんなにディフェンスを練習するんだろうって(笑)。彼らにすればフィリピンのチームとか遠い世界ですし。だから『やってるじゃん』『いや、やってない』と言い合いながらでした(苦笑)。でもそういうことも素直に彼らが受け入れてくれて、やってくれたことにすごく感謝しています」
─そういう風に言い合える関係なのはいいですね。
「本当に素直な子が多いです。もちろんぶつかることもあって、1週間に何回もぶつかりますが、それでもお互いがちゃんと向き合って、コミュニケーションを取り合ってやってきました。本当に4年生には感謝しています。特にキャプテンの宮本(#11)なんかとは言い合いをするときもありますが、彼は歩み寄ってくれて、僕も彼に歩み寄って、2人でよく話します。そうやって一緒にチームを作っていこうっていうので、彼が本当に僕と一緒に頑張ってくれました」

大学バスケットにしかない魅力や価値を見て欲しい「ぜひ試合会場へ」
─WUBSはフィリピンもレベルが高かったですし、優勝した高麗大学校のディフェンス、特に決勝での強度は見ていても圧倒されました。出場した選手はかなり刺激を受けたという話もしていました。でも出場していない選手にも伝えようと、チームに戻って努力されたんですね。
「やはり大学バスケのために何をできるかというのが、一番僕が大事だと思っていることです。本当にまだ何の結果も残していないですけど、少しずつ、少しずつ、上のチームについていこうとしています。大学バスケは正直、いろんなことが起きて、揺れ動いている時期だと思います。でも今、かつて大学バスケに育ててもらった人たちがまだBリーグのトップで活躍していて、それを大学にいる指導者の中では誰よりも僕が近くで知っていると思っています。それを選手に伝えて、大学バスケットがあるからBリーグに行けるんだよと、伝えて育てていくことで大学バスケの価値をもっと高めていきたいと思っています」
─松島さん自身が大学バスケで育って、何度も跳ね返されながら2部から1部に上がるような活躍をしてBリーガーになったからこそ、感じるものもひとしおですよね。
「今は高校生からとか、ユースからそのまま上がる選手もいます。それはそれでいいと思います。でも大学バスケにしかないこの入れ替え戦の感動、こうやって人生をかけてやるこの瞬間というのはお金じゃ買えないと思うんですよ。それをもっと知ってほしいです。今日筑波大の選手が一生懸命やったけれど負けて2部降格となりました。泣いていましたが本当に苦しいと思います。一方、僕らはたまたま勝って次ができて、選手たちの人生の未来が開けたと思うんです。そうやって、大学バスケって一つのゲームに人生を変えるようなチャンスがあります。自分はBリーグ出身だしBリーグがユースを作って育成していく意味というのもわかります。でも、自分はこの大学バスケという場でBリーグにつながるような雰囲気づくりとか環境づくりを、ユースや他のBリーグにつながる場所に負けないように頑張っていきたいと思っています。そしてこれからインカレがありますが、ぜひ会場に見に来てほしいです。なぜなら映像じゃこの熱量を全部伝えるのは難しいと思うので」
悲願の1部昇格を遂げた学生時代のレポートはこちら↓
【2013リーグ】11/7入れ替れ戦 早稲田大VS国士舘大 第3戦
当時キャプテンの松島良豪、エースの髙橋祐二(2025年に現役引退・指導の道へ)、原修太(現B1千葉)のインタビューを掲載。
─遠方で来られない人もいるので配信も欠かせませんが、可能なら試合は現地で見て欲しいですね。
「インカレは負けたら終わりです。Bリーグに行く選手もいるけれど、ここで本格的にバスケットをプレーすることを終える選手もいます。この大学バスケでしか分からない、彼らの最後の気持ちっていうものがインカレにはあります。本当にぜひ会場に足を運んで、大学バスケの素晴らしさっていうのを感じてほしいと思います。自分もここからBリーグにつながるように頑張りたいと思っているので、ぜひ引き続き、皆さんに大学バスケのことを応援してほしいと思います」

※インタビューは入れ替え戦終了時に行いました。
松島良豪(まつしま よしたけ)
国士舘大学卒
2016-2020 レバンガ北海道
2020-2023 国士舘大学AC
2024- 国士舘大学監督


