今季は日本大のエースとしてチームを牽引する。厳しいマークを受ける試合も多いが、それでもリーグ戦の特点ランキングは5位と昨年よりもスコアを伸ばし、ここぞというところでチームを支えてきた。
ルーキーイヤーからワンポイントの出場で得点センスを見せていたが、昨年からめきめきと頭角を現した。そのきっかけの一つとなったのが、U22代表候補として選ばれてさまざまな経験を積んだことだ。人生で初めてという選抜の場では得意分野以外では他の選手との差を感じ、また国際試合では海外選手とのフィジカル差に圧倒され、意識が変わった。そこから自分に足りないものをプラスするために猛練習に励み、フィジカルやディフェンス力の強化に励んだことが己を成長させた。
今季も春は学生代表に選ばれていたが、惜しくも直前の怪我でトーナメントと代表はともに不出場。しかしその悔しさを練習にぶつけられたことがよかったと前を向く。今はチームの勝利と己の成長、両方を追い求めてこの先もまだまだ上を目指していく。
「もっとできる」今よりさらにいいパフォーマンスを目指して
─今季のリーグ戦はいい試合もあれば、苦しい試合もあるという状況です。今年は結構マークに苦しんでいる試合もありますね。
「確かにそういう部分はあります。でも僕にマークが来ているということは、そのほかの選手、例えば哲汰(#20山田)とか、泉(#13)とかが楽に攻めやすくなるということでもあります。だから自分にマークが集まるのは個人的には苦しいんですけど、チーム的に見ればむしろ大丈夫なことなのかなとも思っています」
─そうすると、昨年は大事な場面で新井選手の活躍が目立ったのは、昨年の4年生がマークを引き付けてくれていたからこそ、という部分もあるのでしょうか。
「そういう感覚です。そして今年は自分が4年だからこそ自覚と責任を持って、マークが厳しくてもはねのけて、プレーでチームを引っ張っていけたらなと思っています」

─そういう状態で戦うリーグ戦は、個人のパフォーマンスについてはどう評価していますか?
「もっとできると思っています。1巡目よりは2巡目のほうの点数が伸びていないというのはあって、マークも厳しくなっているので難しさも感じます。でも調子が上がっていると思える試合もいくつかあります。調子の維持をしてもっと頑張りたいところです」
─昨年は4年生の主力がすごくたくさんいて、みんながリードしてくれたところがありました。今年の4年生はどういうカラーですか?
「今年もやはり同じです。下級生から試合に出てきたメンバーが多く、4年の泉や奥浜(#11)はもちろん、下地(#99)もセカンドメンバーとして出てきて、仕事をしっかりこなしてくれるのでとても信頼しています。3年ですが哲汰も任せるところは任せられる選手なので、思い切りやってもらえたらなと思っています」
─昨年の強力な4年生たちが抜けたチームですが、今年はその分一人一人がすごく頑張っているというのをリーグ戦を見ていると感じます。
「誰が抜けたからとか、そんなに意識をしているわけではないんですが、今年も全員が点を取れる選手たちです。そこは去年と変わらない日大の特徴ですね。昨年はデイビッド(コンゴロー・現B3徳島)のところで点数を取れていた分を、今年はもっといろんな選手に分散させているという違いがあります。泉や奥浜、哲汰、みんなが責任感というか、自分たちがやらないといけないという意識になっているので、その点ではいい感じにまとまってきているなと思います」

強い想いで4年生として責任を果たす
─春は怪我があってトーナメントや李相栢盃に参加できず残念でしたね。
「春は結構自信あったんですよ。春先から練習もしっかり積んで、5月のトーナメント前まではかなりいい状態に仕上がってきていました。でもトーナメントの1週間前に練習で怪我をしてしまい、大会は欠場に。李相栢盃の代表戦も控えていたのにそこにも行けなくなってしまい、とても悔しい思いをしました。でもそこからものすごくシュート練習など、それこそ怪我をしてよかったと思えるくらいにたくさん練習して、このリーグ戦に向けては一生懸命にやってきたんです。そういう取り組みのおかげで気持ちもプレーもポジティブに変えていくことができました。それを実際にこのリーグ戦で活かせているという感覚もあるので、怪我はしたけれどそうやってしっかり練習できたのでよかったなと今は思えています」

─そうだったんですね。そしてリーグ戦は少し苦戦もあって5位という状況ですが、この先はどの辺を改善しようとしていますか?
「とりあえずリバウンドが課題です。リバウンドさえ取れていれば勝てているはずの試合が多いです。あとはディフェンスをもっと強化しないといけないです。うちは全員が大きくて動けるのでそこは強みですし、あとはリバウンドが取れれば必ず結果に結びつくと思っています」
─大会としてはインカレを残すのみで4年目も大詰めですが、大学に来てよかったと感じているところは?まず日本大は数多くの部員がいますし、高校生の時点ではどういう活躍をしたいという想いだったのでしょうか?
「最初はぜんぜんできると思っておらず、Aチームに入れるかな?みたいな感じでした。でも飯尾さん(現B1島根)や米須さん(現B1川崎)など、すごい先輩がたくさんいたことが大きかったです。とりあえず上手い先輩から盗めるものは盗んでいこうと思って、練習の段階から吸収しようととにかく必死でした。そして気づいたら『あれ?意外とここまで来れてる?』みたいな感覚を持てていたというか…」
─追いつきたくなる先輩に恵まれたことは大きいですね。そして向上心を持って練習したことも。
「とにかく練習するのみです。でもやれば確実に成長できるというのは、1年1年、自分自身のプレーで感じています」

─新井選手が2年生くらいの頃、先輩が「楽人はもっと自分を出していい」と言っていたことがありました。期待してくれていたんだと思いますが。
「そうなんですか?確かに下級生の頃は遠慮している部分もやっぱりどこかにあったんだと思います。でも3年生ぐらいになってから自覚も生まれてきて、今はもうチームを背負っているという責任をひしひしと感じています」
─頼もしいです。今年の4年生は進路について、Bリーグのドラフトが開始されるものの未知の部分も多く、難しい学年になっています。ドラフトについてはどのように考えていますか?
「それはもう常に考えていて、でも考えても結局、リーグ戦やインカレで頑張るしかないんですよね。とりあえず1試合1試合、自分のパフォーマンスを最大限に出してアピールするだけだなと思っています。一方でチームが勝てればいいという思いもあります。チームと個人、どちらも大事だなと感じていますが、4年生としての責任を果たすためにも最後までやりきります」

※インタビューは第18戦終了時に行いました。
新井 楽人(あらい がくと)
190cm/88kg/SF
沼津中央高


