大学バスケットボールチームの国際大会として昨年初開催された、WORLD UNIVERSITY BASKETBALL SERIES(以下WUBS)。第2回となる2023年は大会規模がグレードアップし、日本から2チーム(昨インカレの1位・東海大と2位・白鷗大)にアジア、アメリカなどから6チームが参加し、合計8チームがトーナメント形式で頂点を目指す形での開催となった。
前夜祭となる10日は、日本学生選抜チームが昨年のWUBS優勝校であるアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)と対戦。両者固さも見える中で、1点を争うゲームを繰り広げて代々木に集まった観客から大きな声援を浴びた。
日本学生選抜は最後のドライブが決まらず惜敗
オープニングナイトの日本学生選抜と対戦したのは、翌日からも試合を控えたアテネオ・デ・マニラ大。下級生を主体にした布陣での対戦となった。立ち上がりはアテネオ・デ・マニラ大#25オバサのダンク、#21アモスのスリーポイントが決まり先行するが、日本学生選抜は#13塚本(大東文化大・2年)のフローターを皮切りに追い上げ、最後は#28渡邊(中京大・3年)のスリーポイントのフリースローで15-14の僅差の勝負にすると、その後は終始競り合いとなる。2Qはアテネオ大の攻撃力がやや上回り、38-31。
3Qになると日本学生選抜は#7伊藤(明治大・3年)、#20根本(白鷗大・3年)の外が当たり、#4小澤(日本体育大・1年)のドライブで逆転。#28渡邊の奮闘も目立った。しかし高さで相手にはインサイドを連続で決められるなど、互いに点を取り合い50-51。4Qも1点を争う展開が続くが日本学生選抜はディフェンスから粘りを見せる。しかし続けてオフェンスリバウンドを取られ、残り約2分からは追う展開となった。日本学生選抜は#20根本のスリーポイント、フリースローの獲得で、残り17.3秒、70-69で1点差に。その次のプレーでアテネオ・デ・マニラ大は獲得したフリースローを決めることができない。タイムアウトを挟んで最後の日本の攻撃は、1対1から#3塚本がドライブを選択するが、これを決めることはできず、リバウンド争いとなったルーズボールはアテネオ・デ・マニラ大#77エスピノーサへ。ブザーが響きタイムアップとなった。
「学生に国際経験の機会を」と提案し、エキシビションマッチが実現
このエキシビションマッチにおける日本学生選抜のメンバーは、1〜3年をメインにした12名。中国の成都で開催されたワールドユニバーシティゲームズ(7/28〜8/8)のメンバーとは異なる、「ネクスト」なメンバーが選ばれた。今回チームを指揮した松藤ヘッドコーチ(中京大)が、「コロナ禍の中、学生代表が活動する機会が減っていた」ことと、「昨年、WUBSが開催された際、学生代表が試合をできるような機会をもらえないか」と働きかけをしてきたという。本来、WUBSは“大学チーム”のための大会であり、代表戦ではない。その代わり、オープニングとして昨年のWUBS優勝校であるアテネオ大とのエキシビションマッチが形になった経緯がある。
今回のメンバーはほとんどが代表経験のない選手たち。足りないものがあるのは承知で、松藤ヘッドコーチは“これから”を担う選手の、ステップアップとなる機会となることを考えてきた。
「自分がユニバで感じた経験を伝え、リバウンドやルーズボールといったところや1対1の競り合いで、オフェンスがうまく回らなくてもシュートを決めてやる、そんな気持ちのところを求めました。最初は固かったけれど、選手たちは想いに応えてくれました。個の部分では負けないとか、強く戦うという姿勢の部分は良かったと思います。勝ちたかったけれど、負けてしまいました。でもいい試合でした」
「高さを感じたのはリバウンドの部分だけ、小さい我々の方がいいディフェンスはできていた」という。高さは気にせずコンタクトして守りたいところだったが、あと「一歩足が動かなかった」と1点差の敗因を語った。
次はさらに上のレベルとなるウィリアム・ジョーンズカップに挑む
日本学生選抜はこの企画決定後に、日本バスケットボール協会により、4年ぶりの開催となったチャイニーズ・タイペイでのウィリアム・ジョーンズカップへU22として派遣も決まった。ここにさらに早稲田大の岩屋(2年)、日本大の西村(1年)の2名を加え、14名でエキシビションマッチ翌日に現地へ移動し、8試合に臨む。
「このメンバーは“ネクスト”であり、ここからどれだけ上に上がっていけるか、次を目指してもらいたい選手が選ばれています。当初はこのエキシビションマッチだけの想定でしたが、ジョーンズカップも経験できることになりました。あちらはA代表が集う大会なので、ここよりワンランクもツーランクも上げないといけない。勝敗では難しい部分があるとは思いますが、モチベーションをしっかり持たせて、毎ゲームチャレンジをして、そこから次のステージへの意識を持たせたいですね」
求めるのは「走って、走って、走りまくる」こと。
フィジカルやサイズで負けているのはわかっているので、きれいにやろうとしたりせず、一人一人のいいところを出させるようにはたらきかけたいという。
たとえば#21月岡(日本体育大・2年)はそうした走りや勢いを期待されているメンバーの一人といえる。昨年のルーキーイヤーに新人インカレを制して大学界でブレイクを果たしたが、初の大舞台だからこそ、思い切りやれるという部分はあるはずだ。月岡自身、新たな意欲を持って臨んでいる。
「自分は代表に選ばれるのは初めてで驚きもありましたが、選ばれたからにはここで結果を残して、やってやろうという気持ちです。このチームには自分のチームのように留学生はいませんが、このメンバーで自分がどうすればいいのか、経験になりましたし、ジョーンズカップも経験することで、日本人を活かせるようになって、チームに戻ってきたいと思います」
ちなみに、この学生選抜チームにはキャプテンはいない。松藤ヘッドコーチいわく、「みんながキャプテン」だ。試合ごとに声出しを指名している状況だというが、リーダーシップをはじめ、メンタル面の成長を促すことも育成のひとつになる。準備期間の短かった仲間たちが、チームとして形になっていけるかどうかも同様だ。
次世代を担い、プロやA代表といったステージへと上がるために心・技・体は不可欠。 “ネクスト”たちの挑戦は始まったばかり、そんなことを感じさせるエキシビションマッチとなった。