【2022リーグ関東1部】勝利に必要なのは、「全員が同じ方向を向き、同じ気持ちでやっていくこと」#12中村拓人/大東文化大・4年・PG

2022関東リーグ

東海大相手に第2戦で手痛い敗戦を味わう

リーグ第3戦、筑波大という負けられない相手を競り合いの末に下した大東文化大。終盤は1点を争う展開となり、最終スコアは69-66という3点差の勝利だった。司令塔の#12中村(4年・PG)はほぼフル出場、22点6アシストの貢献。試合後に西尾監督から「お前に勝たせてもらった」と声をかけられる、頼もしいプレーを見せた。

この試合の3日前、8月21日の東海大戦では、チームとして苦い敗戦を味わった。立ち上がりから東海大に簡単に攻め込まれ、ディフェンスの動きも、攻撃の連係も、何もかもうまくいかない試合だった。何度も立て直そうと試みるものの、やすやすとディフェンスを突破され、また、攻撃ではタフショットを打たされてしまう。チーム全体でフラストレーションが感じられたが、タイムアウトでベンチに戻ってきた#12中村が、「全部できていないよ!」と珍しく周囲に聞こえるような大声をあげるほどだった。

「普段はあまりああいう風に言いませんが、声を出したのは、自分の中でもどうにかして変えないといけない気持ちが強かったからです。感情的になっていたかもしれませんが、あの試合の中で何かを変えなければと必死でした」

しかし必死の想いはあっても前半につけられた差は大きく、巻き返せないまま56-81の大敗。調子の波が出やすいリーグ戦とはいえ、負けたことに加えて内容的にもダメージの大きな試合となった。

最大の反省はチームになりきれていなかったことだ。

「誰一人負けたいなんて思っていません。ただ、一人一人の勝ちたい気持ちがバラバラで、いろんな方向に行ってしまってチームプレーになりませんでした」

チームが一つにまとまるためのミーティング

第3戦までには2日しかなかった。

対戦相手の筑波大は2戦目で日本体育大に1敗してしまうという、こちらも痛いスタートを切っていた。それゆえに第3戦はどちらも負けられないという気迫が、ぶつかりあった。この2日の修正点は、チームとしての意思統一だと中村がいう。

「東海大戦の負け方がああだったので、今日の試合に向けて、ミーティングを長時間行いました。チームでもそうだし、4年生同士でもかなり話し合いましたが、プレーというより、精神的な部分の話が中心でした。どうしたら“いいチーム”ができるかということを特に話し合いました」

東海大戦はプレー面で合ったところ、合わなかったところもあったが、それ以前に「選手一人一人が、それぞれで頑張ってしまった」ことが最大の課題だった。どれだけ個々に力があっても、チーム競技である以上、みんなの方向がバラバラでは勝つことはできない。そこをもう一度一つにまとめ直すことに意識を割いた。

そして気持ちが一つになった上で、プレー面でも引っ張ることが、最上級生として自分の役目だと中村は認識していたはずだ。試合は一瞬でも気を抜くと、差が開くかもしれないという緊張感の中で進んだ。負けられないのは筑波大も同様で、締まったディフェンスに大東文化大も簡単には点を取れないターンも多かった。それでも試合のほとんどの時間を、大東文化大が数点でもリードして進められたのは、1Qから目の覚めるようなプレーをたびたび見せた中村はもちろん、コートに出た選手それぞれが己の役割を果たしていたからだ。筑波大は残り10.6秒で67-66の1点差に迫り最後まで粘ったが、最後は大東文化大が逃げ切った。

「個人としては、東海大戦の負け方が本当に悔しかったので、大東がこんなものではないというのを見せたかった。そして話し合ったおかげで、今回この試合でチームが一つにまとまれました。それが一番大きかったのかなと思います」

「これが大東文化大だ」と、まさにチームで体現できた勝利となった。

結果を出すために大事なのは“バラバラにならないこと”

今季の大東文化大は、層の厚さではここ数年で一番かもしれない。

2019年にチーム初のリーグ優勝を果たしたが、モッチ ラミン(現JR東日本秋田)をはじめ4年生が多かったこともあり、翌年はかなりチーム構成が変わり、主力に下級生が増えた。しかしそんな状況でコロナ禍に見舞われてしまったのが不運だった。成長を促進したい時期に練習がままならなくなり、昨秋はほとんど練習を積めないままリーグ戦に突入。東海大を下す金星もあげたが、全体では不安定な試合も多く8位。苦しんだシーズンとなった。

しかし、そんな中でも下級生たちは地道に力をつけてきていた。今シーズンもコロナ禍に左右された時期があったものの、3月の新人戦(2021年の延期分)で新人戦を初制覇。さらに新設の大会・新人インカレを制し、春・夏シーズンで1〜3年生たちは得難い経験をすることができた。そして秋、今度は中村ら4年生が見せる番だ。この代は1年時にリーグ戦の優勝を経験している。

「今のチームは4年生として自分と紳司(#7高島)が出ていますが、下級生は新人戦や新人インカレでしっかり結果を出してきてくれました。この先は、力のある下級生を、上級生がどう生かしていくかによって、チームのやりやすさ、強さが本当に上がるはずです。上級生の自分や紳司が中心になって下級生をうまく引っ張ることが、ここから一番重要になってくると思います」

そのために一番大事にしたいのは「チームのまとまり」だという。

「チームの一人一人が違う方向を向いてしまったら、強さはどんどん減っていってしまいます。試合は続いていきますが、チーム力を上げるには、全員が本当に同じ方向を向き、同じ気持ちでやっていくことが不可欠です。そこを一番大事にしていきたいです。西尾さんからも『バラバラになるな』ということは常に言われています。自分だけじゃなく、他の全員もみんな理解しているはずです」

部内の競争が激しくなり、プレータイムのシェアも進んでいる。「短い時間でのプレーは難しいけれど、思い切りよくやって欲しい」という中村。

「根が真面目な選手が多いので、『自分でいいのかな』と感じているかもしれない。でもチームに勢いを与えるために、思いっきりやってくれというのが自分の想いです。ミスをしてもチームでカバーをすればいいことなので。勝ちたい気持ちは本当に一人一人絶対あります。それを全面に出してやって欲しいので、これからの試合も声をかけていきたいですね」

リーグ戦は長く、波が出やすい。26試合という長丁場は、この先も何が起こるかわからない。しかし序盤で経験したこの1勝1敗の試合に立ち返れば、必要なことは見えてくる。「チームとして」一歩一歩、ここからも歩みが続く。

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