数多くの試合をこなすことでチームとして成長し、2巡目を好調に勝ち進む
今季の1部リーグは群雄割拠。どこが優勝してもおかしくない中、上位は混戦となり、僅差で優勝争いを繰り広げた。緊張感ある戦いが続く中、最終的に頂点に立ったのは白鷗大。昨年のインカレ初制覇に続き、チーム初のリーグ優勝を達成した。
リーグでは1巡目からどこかが一気に抜け出すという状況にはならず、白鷗大の1巡目は東海大、日本大、大東文化大に破れて4位で折り返す。上位のライバルに対してはもう一歩、という試合が続いた。しかし前半の3敗は、網野監督にとっては後半に優勝を計算できる指針となった。「前半に#25ジョエル(1年・PF・別府溝部学園)が怪我で離脱したけれど、前半に3敗しかしなかったことで、後半にジョエルが復帰すればチャンスがある」そんな感覚だった。
主将の#7ギバ(4年・PF)は3敗していた序盤の段階では「課題となっているのが、勝ちきる力。負けた3試合ともが接戦や僅差で負けています。この先、疲れが溜まってくる中でも、勝ちきる力を養っていきたい」と語っていたが、網野監督同様、1巡目終盤あたりにやや手応えを掴んだ声に変わる。というのも、天皇杯ブレイク前の試合となった対専修大戦(第12戦)で、大接戦の末に3点差(60-63)で勝利をもぎ取り、2巡目に入っても連勝が続いたからだ。網野監督も「首位のチームにジョエル抜きで勝ちきれたことで、自信になったと思う」と振り返った試合だ。
この対専修大戦は、チームにとっては大きな1勝であり、またより一層気を引き締めるきっかけにもなった1勝だった。
「1巡目の(天皇杯による)休止前、最後の試合で専修大に勝利しました。首位を走っている専修大さんに勝ったことでチームの士気が上がったし、でも嬉しいけれど浮かれるだけではない状態にもなりました。というのも、2巡目に入ってみると、力のある強いチームでも負けるという状況が出てきています。自分たちのこれまでの経験でもそういうことがあります。だから、勝ったからこそ気を引き締め直し、練習をしっかりやり、対策を練り、残りを全勝できるようにとやっています」(#7ギバ)
強い相手に勝利したあと、さらに冷静になって自分たちのやるべきことを極めていく。天皇杯に出場した分、休みが取れず疲労が溜まって不利なはずだったが、「リーグ戦は成長の場。試合があるのは、自分たちにとってはプラスなこと。すべてはインカレにつながる」と、前向きな言葉が発せられた。網野監督も「天皇杯で違うカテゴリーのチームと戦い、勝ち上がることに価値がある」と、疲れた身体で遠征を重ねる選手たちを鼓舞しながら、2つの大会をこなした。
そして10/15の第18戦・大東文化大戦もポイントとなった試合だ。1巡目では1点差(60-61)で負けたライバルに、今度も62-57と接戦の末に逆転劇で破った。大東文化大とは天皇杯でも対戦して勝っているが、それは終わったこととしてギバは「また一から対策を立て、粘り強く戦いたい」とも語り、油断することなく戦って勝ちきった。初期に課題として挙げた、チームとして「勝ちきる力」をきちんと示しながら、白鷗大は後半戦を突き進み、優勝へとたどり着いた。
コミュニケーションを重視し、チームを鼓舞するキャプテンの姿
チームの雰囲気の良さも、好成績に結びついている。今年のチームの良い面についてギバに聞くと、プレー的には「昨年の卒業生が残してくれたディフェンスの姿勢をしっかり受けついで、単純に頑張ることや泥臭くやること、我慢することをやっていくこと」というが、それを可能にするのが仲間との絆だ。白鷗大は代々の選手、誰もが「うちはどこよりも仲がいい」と口にしてきた。それは今年も変わらない。「どこよりも」というのは明確に測るのは難しいが、そう断言できるほどの仲間との関係性は、下級生の頃から深く互いを知り、コミュニケーションを重ねていくことででき上がっていくのだという。
「同期はもちろん、みんな本当に仲がいいです。白鷗大は周辺が自然に囲まれていて、特に何があるという場所ではありません。でもその分、1年のときからみんなが一緒にいる時間が長く、お互いのことやバスケのことなど、ずっと話し合い、助け合っていろんなことを共有してきています。相手のことを深く知っていける環境だからこそ、チーム一体というスタイルが形になっていくんだと思います」(#7ギバ)
環境はもちろん重要だが、仲間たちをしっかりつないでいるのは、主将であるギバではないだろうか。網野監督との面談や、仲間の推薦、そしてみんなとの話し合いを経て今年の主将に任命された。理想にしているキャプテン像を聞くと、コート上で見られる彼とギャップのない姿だった。
「学年に関係なく、コートに出ている5人やベンチ、または観客席で応援してくれているベンチ外のメンバー、そういったみんなの横の関係を重視してコミュニケーションを取ること。そして、自分がコートに出ても声を絶やさず、誰よりも声を出す仲間を鼓舞する、そんな存在を目指しています」(#7ギバ)
試合中は後ろから声を出し、泥臭いプレーでチームを鼓舞する姿は、まさにコメント通り。礼儀正しく、試合のときは相手チームのみならず、モッパーにも挨拶に行く。また、ホームゲームの開催時には、試合後に応援に来た人たちに囲まれ、慕われている様子が伺えた。そんなキャプテンだからこそ、今年のチームもしっかり一つとなっているのだろう。
優勝を決めたのは最終日となった。前日は惜しくも専修大に敗れて2巡目は無敗とはいかなかった。それでも過去最長のリーグ戦、上位5チームの競り合いを制したのは、きわどい試合を勝ちきり、タフに戦い抜いた証拠であり、称賛に値する。
そして今年最後に残されたタイトルは、日本一を決めるインカレ。リーグチャンピオンとして臨む白鷗大は、ディフェンディングチャンピオンであり、追われる立場だ。関東1位で臨むとはいえ、「リーグ戦では1部の上位5チームにはきれいに1敗ずつしていて、どこにもチャンスがある」(網野監督)という状況。力も拮抗していて、油断はできない。
しかし長く過酷な戦いを乗り越えてきたのもすべては日本一になるため。リーグはあくまで過程であり、「すべてはインカレのために」という想いを結果で見せられるか。ギバのリーダーシップのもと、どのような戦いを見せるのか白鷗大の挑戦は続く。