逆転、シーソーと白熱した決勝は白鷗大が4Qに引き離す
57年ぶりの日本一に挑む第一シードの早稲田大と成長力を見せて決勝に上がってきた関東3位の白鷗大による決勝は、近年まれな逆転や競り合いの起こる見ごたえのある試合になった。
1Qは互いに得点し合う立ち上がりになるが、次第に早稲田大が得点力を発揮し、#6三浦(3年・F)や#12松本(1年・SF・洛南)のスリーポイントが続けて決まると一気に10点以上の差がついた。しかしファウルも混んで#0下山(3年・PG)が2つ目を吹かれてしまう。29-21で入った2Qは1Qと反対に白鷗大が爆発。高さを生かしたゴール下や速攻などで追い上げ、#25モンガ(4年・PF)のバスケットカウントで残り4分には逆転に成功。その後も得点を重ねてこのQは32点。早稲田大はファウルが続き、またシュートが当たらず14点に終わった。

前半43-53と10点リードに成功した白鷗大だが、3Qはファウルが続く。早稲田大はここで武器であるスリーポイントが当たってきて、#7堀田(4年・SG)、#12松本に続き、#14高田(4年・SG)が2連続、合計4連続スリーポイントで残り4分には逆転に成功する。タイムアウトで流れを切った白鷗大はここから#42ウィリアムス(2年・PF)や#15小川(2年・SG)が返して同点に追いつき、互いに点を取り合って72-74の2点差で3Qを終了。

勝負が振り出しに戻った4Q、抜け出したのは白鷗大だった。シーソーゲームでリードが入れ替わる状態から、白鷗大は#15小川が爆発。3連続のスリーポイントが決まると#4佐伯(4年・SG)の1本も決まり、77-89と一気に12点のリードを奪うことに成功。早稲田大はファウルが混んで守りにいけず、得点も伸びなくなるとそのまま白鷗大が好調に得点を伸ばして83-101で試合終了。2年ぶり3度目の優勝を決めた。
インカレ決勝は逆転や競り合いが起こりにくく、近年は立ち上がりを制したチームがほとんど勝利している。それだけにリードが何度も入れ替わった今回の決勝は終盤まで手に汗を握る、見ごたえのある一戦となった。
白鷗大はチーム全員がそれぞれの持ち味を出して優勝
優勝した白鷗大はディフェンスを重視するチームだが、サイズがあってなおかつ得点力が高い選手も揃う。そのためロースコア・ハイスコアに関係なくどんなゲームにも対応できる柔軟性があり、決勝は最終的には100点を超える近年見ない高得点を取る試合となった。出場した選手のほとんどが得点をあげるという、チームでの勝利が感じられる内容だ。特に準決勝、決勝の2試合は気迫が前面に出ていい循環が続いていった。
春の大会ではまだチームも成長途上で#25モンガと当時キャプテンだった佐藤涼成(現B1広島)だけが目立つ格好だった。しかし今は「涼成が抜けたことによって、全員でシェアしながらという意識がより生まれている」(網野監督)という強さがあり、チームの成長を感じられるインカレとなった。
これで今季は春トーナメント、新人戦、新人インカレと3大会で準優勝。リーグ戦は3位とあともう一歩の壁を超えられていなかったが、最後の最後にインカレ優勝という形で成長力を示した。白鷗大はこのあと1月の天皇杯にも出場する。学生日本一としてどのような戦いぶりを見せるのかにも注目だ。

この日はBリーグの試合後はリアルタイムで試合を観戦してくれており、SNSでも連絡をくれたという。
振り切ったスタイルで見せた57年ぶりの躍進
早稲田大は#12松本が36点、#6三浦が16点と奮闘したがこの日は要である#18岩屋が5点と伸びきらなかった。選手が限られるチームだけにファウルがかさんだのも痛かった。倉石監督は「あれだけリバウンドを取られると厳しい(早稲田28本、白鷗38本)。でもちびっこ軍団でよく頑張った」とフィジカルの差がある中で戦いぶりを評価。「シュートチャンスだとかリズムだとかを作るのはサイズ関係なしにできるので、それを狙って今シーズン始めました。最初みんなびっくりして、『こんなことをするんですか?』みたいな感じだったんですけど、だんだん定着してきて信じてやってくれたのがこういう成果だった」と今シーズンを振り返った。リーグ戦の優勝は良かったものの、その分相手にも研究された。リーグ戦も2巡目は接戦が多くなり、それでも乗り切ったのはさすがだったが、「ダメな時にはどうやったら歯止めが効くか、ディフェンスの課題はありました。そして入らない時にオフェンスでどういうきっかけ作りしたらいいのかという課題も」と、長く戦う中で出てきた課題に対処する難しさを語った。

一方で、ヘッドコーチとして経験抱負かつ広くバスケットを知るだけに、日本と世界の差に当てはめたコメントも出てきた。「諸外国(と日本)は(サイズやフィジカルで)あのぐらいの差があるので、あれで対等に戦っていくような形を作らないといけない」というが、早稲田大のみならず、日本のすべてのバスケットボールチームが持つ課題が提示された試合ともいえるだろう。
しかし、今季早稲田大が見せたバスケットは周囲に驚きと興奮を与えたのは間違いない。元々シュートの上手い選手が揃った代だが、得点力だけでは勝てないというのが近年の大学バスケットの常識だった。だが持っている戦力を最大限に活かす形で選択したノーセンター、ファイブアウト、セットプレーなしでシュートチャンスを作っていくスタイルは逆に対戦相手を惑わせ、また高いシュート力がこれまで以上に生きる形ともなった。57年ぶりのリーグ優勝、インカレ準優勝という結果に拍手を送りたい。

来季以降には不得意とするディフェンス力の向上などを目標に掲げている。

