昨年のリーグ全敗を乗り越え、見えてきたチームの形
第9節終了時点(9/4)で4勝をあげた神奈川大。
第4戦の拓殖大、5戦の早稲田大、そして8戦の国士舘大と9戦の明治大に勝利した。リーグ戦では勝率の似たチームに勝っていくことが必須。それを、競り合いの末に制する大きな勝利だ。
神奈川大にとってここで粘って白星をあげたことが、チームにとっては大きな意味がある。昨年のリーグ戦はかなりの試合で競り合いを演じつつも、途中で力及ばず引き離され、すべての試合を落としてきたからだ。
2勝したところで話を聞いた主将の#51横山(4年・SG)も、長い負けのトンネルを潜り抜けた末の勝利に、ホッとした顔を見せた。
「ここまで、本当にディフェンスとハードワークのところを中心に徹底してやって、学生コーチの雅志(五十嵐学生コーチ)が厳しく言ってくれる中で、自分たち4年生を中心にして切磋琢磨しながらやってきました。去年はリーグを全敗で、一昨年もそんなにいい成績を残せていません。コロナもありましたが、2年間苦しい状況の中でバスケをしてきました。そしてこのリーグ戦の初戦も、強い相手(日本大)に対していいバスケができずに入ってしまって…。だからこの2勝というのは非常に大きくて、チームとしてはいい方向に向いてきたかなと思います」
2020年は試合自体がほとんど行われず、秋のオータムカップで1勝しただけ。2021年のリーグ戦は12チームによる1巡、11試合に全敗。続くインカレチャレンジマッチは明治大と死闘の末に破れ、2年連続インカレに出場することができないままシーズンを終えた。特に昨シーズンは全体を通してディフェンスはしぶとく競り合うが、決定力が及ばないという試合が多く、重苦しい時間が続いていた。
「去年はシンプルにチーム力というか、まとまりが今ひとつできないままでした。そういうものを濃くして、その上でシュートやディフェンス、リバウンドをやっていかないといけないのに、チーム力がないから、個々のプレーだけになってしまっていたと思います。結束力というのが、まだまだできていませんでした」
新型コロナウイルスの流行で練習が満足にできなかった影響は少なくない。さらに昨年は試合に出る下級生が多く、経験不足もあっただろう。また、練習場所が平塚からみなとみらいの新キャンパスに移り、アクセスは良くなったが、使える場所が狭くなるという変化もあった。環境が変わり、長く勝てない時期は苦しかったはずだが、幸い昨年は入れ替え戦が行われず1部に残った。そして重ねた苦闘の末にようやく、今リーグになって神奈川大らしさが見えてきた。ディフェンスで地道に粘る伝統的なスタイルを維持しつつ、今季Aチームに上がってきた#24中島(2年・SG)、昨年から出番を得ている#5保坂(2年・SG)など、下級生がアグレッシブにコートを駆け、4年生の横山や#34工藤(4年・SF)、#11工(4年・PF)が要所を支えている。
最初の2連勝はチームにも自信になり、それを経ての3勝目の国士舘大戦は4Qに逆転。4勝目の明治大戦は、10点差を追い上げた上に延長戦で勝利するという、激闘の末に掴んだ勝利。この4試合はいずれも4Qに勝負の山場となる時間帯が来ていたが、昨年ならば競り負けるところを、ディフェンスから盛り返した。足りなかったチーム力が、徐々に備わってきたのを感じられる大きな4つの勝利だった。
伝統の継承を意識しつつ今のチームで目指す飛躍
神奈川大は2018年から1部で戦っている。上位を伺うというところまではまだいっていないが、残留し続け、地道な奮闘を見せている。武器はディフェンス。粘りに粘ってこれまで大事な勝負を勝ってきた。今、横山が考えるのが、この神奈川大の伝統をいかに下の世代につないでいくかということだ。コロナ禍となって以降、練習はもちろん、大会が延期されたり途切れたりしたことで、下級生に神奈川大のバスケットがどういうものか、伝えることがここ数年は難しかった。
「今の下級生は、昔の神奈川大のバスケットをぜんぜん知らないし、見られていないという選手もいます。小酒部さん(現B1東京)や工藤さん(現#34工藤の兄)がいたときの、神奈川大のバスケットがわからないと思うんです。それをどう示して、教えるのかというのは一つの課題といえます」
横山がいうのは、その2018年の1部昇格初年度の頃のバスケだ。神奈川大は初の1部リーグで苦戦したが、終盤連勝を重ねて1部残留。その年優勝した東海大にも勝利している。またインカレでは優勝候補の一角だった青山学院大にあとわずか、というところにまで迫り、周囲を沸かせた。そんな先輩たちの姿を知ってもらえたら、後輩たちにも大いに刺激になるはずだ。
「最初は言葉で伝えていたんですが、最近卒業生の方からビデオをもらっていたのを思い出し、2018年のインカレの青学戦の試合を見せました。その翌々日くらいから、こんなふうにやろうという雰囲気ができてきて、きっかけになったのかなと思っています。そのインカレの試合は負けてしまったんですが、あれを見て、自分も『これが自分たちのバスケの元だな』と思いました。そこを共有したのは大きかったと思います」
言葉では伝えきれないものが、動画で見ればわかることもある。映像は手に入れば積極的に活用し、「伝え続けたい」という横山。OBたちが1部で築き上げてきてくれたかけがえのない財産を、見て、体感してもらうのは大切だ。その一方で、現役のメンバーたちもまた、伝統を作っていく立場。勝利した4試合は、今のメンバーで体現する“神奈川大らしさ”が見える試合だった。こうした勝ちを重ねることで、次の世代に伝えられるものが増えていく。
とはいえリーグ戦はまだ先が長く、少し勝ったからといって安堵はしていられない。また、上位チームにどう勝つかもこの先は追求していかなければならない。横山はキャプテンとして“チーム”で勝つことを理想に掲げる。
「ダメな時も自分が最後まで諦めず、声を出して引っ張れるようになりたいです。悪い雰囲気の時にみんなが下を向いてしまうことがあり、自分もこれまではそうでした。でもそれじゃだめだと監督に言われて、気持ちを入れ替えて臨んだ早稲田戦で勝つことができました。とにかく個人のプレーより、チームが勝っていればそれがベストです。今日みたいなゲームが続くと思うので、オフェンスが悪くてもディフェンス、そしてあとは我慢強くやることですね」
チームの柱であるディフェンスとハードワーク。これまでもこれからも、それをコツコツとやり続け、勝利を掴みに行く。