【2022関東リーグ1部】怪我を乗り越えて自身のパフォーマンスを取り戻し、チーム力の成長も見えた意義ある2位/#10喜志永 修斗(専修大・4年・主将・PG)

2022関東リーグ

ディフェンスと我慢で前半戦は首位、後半戦は粘りに粘ってリーグ2位

リーグ序盤から首位争いの主導権を握った専修大。2巡目に怪我人が続き、春との2冠はならなかったが、最後まで見応えある試合を連発し、見るものを惹きつけた。とくに周囲を唸らせたのはリーグ最終盤、大東文化大、白鷗大、日本大というトップ5のうちの3チームとの対戦だろう。2巡目、とくに終盤戦は主力が欠場する中でも踏ん張ってきたが、粘り強い戦いでライバルに競り勝ち、最終的に21勝5敗、2位でリーグ戦を終えた。

前半戦の段階では、主将の#10喜志永による好調の分析は以下のようなものだった。

「トーナメントで優勝してから追われる立場になりましたが、自分たちもなぜ勝ったのかというところがまずわかっていませんでした。そこで、自分たちの強みは何なのか、データを全部スタッフに分析してもらったんです。すると、歴代の先輩方はオフェンスが強かったんですが、今年のチームはリバウンドがリーグで一番強いという結果になりました。自分たちには歴代の先輩方のような華やかな能力はないし、あんな風にできないというのは理解しています。そうするとやはり、数字が示すようにチームでディフェンスをして、泥臭く我慢をして勝つしかありません。前半はそれができていたと思います」

終盤戦はここぞのスリーポイントで何度もチームを勢いづけた。

「ディフェンス」と「我慢」。これは春トーナメントのコート上でずっと選手たちも言い続けていた。これまでも意識してこなかったわけではないが、今年は特にこの2つのキーワードが大きな支えとなってチームをまとまらせている。

ただし、優勝したことで、リーグ戦前は逆に自分たちを見失い、「チームになれていない状況」もあった。

「言い方は悪いけど、春は誰も勝つと思っていなかったんです。新型コロナ問題もチーム内であったし、練習も十分できていない状態でした。秋に向けて自分たちのやることは変えずにやっていましたが、みんなの中ではもやもやしたものが残っていました」

このことに関しては、6月の新人戦後にも#16淺野「勝ったことによって課題が見えにくくなってしまった」と同じような感想を述べている。喜志永自体は怪我で春は欠場していたが、秋リーグに向けて合流してから、チームでプレーを合わせることにも時間がかかってしまった。さまざまなことが積み重なり、リーグ戦前の練習試合はほとんど敗戦してしまったという。ただ、それがチームとしてどうあるべきか、見直すきっかけにもなった。

「そこから、自分たちがやらなければいけないことを再構築する流れができました。なぜ負けているのかということを考えると、やはり個人の力でやっていたことが大きかったです。だったらもう一度チームで、そして4年生を中心にやろうということを再確認しました。優一さん(佐々木監督)が『4年生を中心に』、とずっと言ってくれましたね。メンバーを見れば確かにケニー(#16淺野・2年)もジャバ(#44米山・3年)もスティーブ(#13クベマ・3年)もうちにはいます。それでも、4年生こそチームの核なんです。特に自分と久原(#35)と鈴木(#14)はコートで引っ張らなければいけない。4年生が自覚を持ってやろうという話をみんなでしました」

こうした再認識と意思統一が、リーグ前半戦では吉と出た。派手な試合はなかったが、「ディフェンスとリバウンドで頑張るチームになってきた」という内容で、コツコツと勝利を積み重ねていく。

1巡目、白鷗大に60-63で破れはしたが、最後の日本大戦は延長戦を制した(80-71)、この試合では4年生の遠藤(#21)が勝利のキーマンとなり、佐々木監督「これぞ4年生」と感激する劇的な勝ちを手にしたのも印象的だった。

怪我人が続いた2巡目を、4年生の踏ん張りで切り抜ける

だが、2巡目には魔物が待っていた。どこのチームも疲れが溜まってきて欠場者が増えていたが、専修大も例にもれず、少しずつ選手が抜ける試合が続いた。そんな中、第15戦で明治大、第16戦では東海大に破れ、リーグ初の連敗を喫する。その後も不安定な試合が続く。ただ、追い込まれても完全に折れることはなかった。その証拠が、終盤の首位争いを繰り広げるライバルたちに対する勝利だ。特に第25戦は白鷗大が勝てば優勝が決まるという試合だったが、相手の士気をくじく勝利を収め(72-66)、優勝に待ったをかけた。

「前半戦を振り返ると、ケニーとスティーブに偏っていた部分が大きかったです。あの2人にかかる負担が大きく、彼らの調子が悪くなったときに負けてしまいました。ただ、後半は人がいない中でいろんな選手がプレータイムを得て、それでチームが成長して、点数がみんなにばらけるようになりました。相手としてもいろんなところに守る必要がでてきて、それが強みになったのかなと思います」

鈴木は「全員でディフェンスを意識してリバウンドを取ってファーストブレイクを出すのが自分たちの強み。そこをしっかり表現していけば結果がついてくる感覚が得られた。控えメンバーも含めて全員がやるべきことをやれているのが、このリーグで成長できたところ」という。

確かに欠場者が続いて苦しかったが、その代わりに多彩な選手が出場機会を得ることができた。喜志永と鈴木の両キャプテンはチームを引っ張るプレーを見せ続け、鈴木は得意のドライブで、喜志永は何本ものクラッチシュートで、流れを呼び込んだ。

「後半戦は勝負どころのチームに当たるとき、だいたいみんな自分を見るようになっていきました。でも自分の後半戦のクラッチシュートは、ほとんど入っているんじゃないかというくらい、確率よく入りました。それと同時に、自分に対するみんなの信頼というのが目に見えるようになったし、自分もそれに応えなきゃいけないなと。キャプテンとして、最後の責任を背負う部分は自分が、と考えてプレーしていましたが、結果につながりました。本当にインカレに向けて終盤の試合は良かったと思います」

大東文化大に勝利し、佐々木監督が喜志永と鈴木を出迎える。今季は鈴木がゲームキャプテン、喜志永がチームキャプテンとして牽引役を担っているが、終盤戦はこの2人の奮闘なくして語れない。

二度の大怪我を乗り越え、ようやく見せた本来のプレー

このリーグ戦は、喜志永にとっては大事な復帰戦だった。

一昨年、昨年と続けて左右の膝の大怪我に見舞われ、長いリハビリの時間を送ってきた。昨年は一旦復帰したが再び反対側の膝を怪我し、昨インカレと今春のトーナメントは応援席で見守るしかなかった。

「1回目にやった膝はもともと靭帯が緩い方だったので、メンタル的に切り替えたんですが、逆の方もやってしまって…。それで昨年はインカレに出ることができませんでした。開さん(昨年度主将のキング開・現B1横浜)たちの代には思い入れが強くて、絶対に勝てると思っていた代だったので、そこに貢献できないことが本当に悔しかったです。インカレは病院にいて、本当は行けない予定でしたが、筑波大との3位決定戦は先生に『最後はどうしても先輩たちと一緒にいたいから』と無理を言って退院させてもらい、代々木に行きました。もちろん開さんたちには『無理をしなくていいよ』と言われましたが、あの人たちと一緒にいた時間は自分にとってかけがえのないものだったので、行かないわけにはいかなくて」

昨インカレは4位。筑波大に最後は破れたが、4年生たちが怪我を押して奮闘し、会場からは両者に温かい拍手が送られた。左から#1山本・#28野﨑・#23キング・#46寺澤・#95齊藤。キングは今リーグ戦も時折後輩の応援に訪れていた。

そんな思いをしただけに、大学生活最後の年、残されたリーグとインカレにかける想いは想像できる。ただ、リーグ序盤は個人的には納得いくパフォーマンスができていなかった。長い間動いておらず、鈴木がメインガードになっていたため、チームメイトとの合わせの課題もあった。足の不安は言わずもがなだ。だが、幸いにも膝の具合は安定しており、一つ一つ懸念や課題を克服していけた。そうして「やっと(思うように)できました…!」と納得いく自分の動きに笑顔が出たのは、リーグ戦を10試合近く消化した頃だった。

「最初は本当に自分との戦いで、我慢するしかなかったです。でも手術後の膝にはアクシデントが何かしら起こりがちですが、それは今起きていません。長い間動いていなかったので、水が溜まって腫れることもありましたが、それも動き慣れてくるとだんだん無くなってきます。ただ思うようなプレーができていないのは、もどかしかったです。でもそういう状態で我慢しながら出て、監督にも自分がダメでも使ってもらっていたので、メンタル面では頑張らなくちゃな、と本当にいろんな意味で葛藤し続けました」

これがリーグ前半の状態だったが、後半戦になれば何度もチームのピンチを救うプレーを連発。コートを縦横に駆け巡る姿は、両膝を怪我したとは思えないほどしなやか。3年目まではどちらかといえばコントロール主体のポイントガードだったが、それだけではなく、鮮やかに得点を重ねる喜志永の姿は新鮮でインパクトがあった。

「優一さんにも『やっとだね』と言ってもらいました。本当に本来のプレーがこうやって戻って来て嬉しいし、チームを勝たせられるようになった実感があります。苦しい期間はチームがかみ合いませんでしたが、最後の5試合では本当にチームとして勝つことができました。そして、このリーグ戦でこんな風に戦い、接戦を勝っていけたことで、これからの専修大学の形ができたのかなと感じています。やっとチームとして戦えている、そんな感覚です」

春はバラバラだったところからスタートしたチームは、見えない壁にもがきながらも自分たちのあるべき姿を追い求めた。そして帰還したリーダーが本来のプレーを取り戻し、先頭でチームを引っ張った。

喜志永たち4年生は、チームづくりにおいて「個人が駄目になったらチームが駄目になるという形にはしたくない。ムラのない安定したチーム、それぞれがやりたいことがあっても、勝つためにやるべきことをやるチームにしたい」と目指す姿を掲げてきた。怪我人を出しても、競り合いで追い詰められても、ギリギリでも踏ん張る今年の専修大は、その理想にかなり近づいたようにも思える。

新たな魅力を獲得した“チーム・専修大”。その最後の勇姿はインカレでどのように表現されるだろうか。手強いライバルたちが揃う今年、どの戦いも簡単ではないだろう。しかし培ってきたチーム力で粘り強くあきらめず、最後まで戦い抜くことは間違いない。

見事なチーム力を見せてくれたリーグ戦だった。
#10喜志永 修斗(きしなが しゅうと)/4年/PG/181cm/84kg/豊浦

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