【2021インカレ】白鴎大が逆転で初の大学日本一の栄冠に輝く/東海大VS白鴎大レポート(12/12決勝)

2021インカレ
5点のリードを得て、仲間で集中する白鴎大。

前半は東海大がリードを握り、白鴎大は得点面で苦戦

第73回全日本大学バスケットボール選手権大会、男子決勝は連覇を目指す東海大と初の決勝進出となった白鴎大の対戦となった。早朝から会場の代々木第2体育館には多くの観客が訪れて行列を作り、収容人員の半数という制限付きではあるが、空間を観客が埋め尽くす状態の中で白熱した試合が展開された。

前半は東海大のペースだった。#86八村(4年・C)によるゴール下での得点にはじまると、#11大倉(4年・G)が続き、#24松崎(3年・F)のスリーポイントも決まった。白鴎大は積極的に攻めていくがディフェンスに阻まれてボールがリングに弾かれるなど、ややショート気味、あるいは決めきれないシーンが目立つ。東海大は#5河村(2年・PG)がアシストを連発して一気に引き離そうとするが、白鴎大は残り1分から#25角田(4年・SG)がスリーポイントのファウルを獲得。その後もいいディフェンスを見せて14-7を14-11にして1Qを終了。

立ち上がり、白鴎大#66松下が東海大#5河村のシュートを阻む。白鴎大は得点では出遅れたが、ディフェンスは1Qからよく身体が動いていた。

2Q、東海大はゾーンを展開。これがハマり白鴎大は立て続けのターンオーバーとオフェンスファウルを繰り返す形になってしまう。この間に東海大はセカンドメンバーの奮闘が目立ち、早い展開や#13金近(1年・F・関大北陽)のフローターなどでリードを広げる。開始約4分でスタメンに戻すと、#86八村のスリーポイントも決まり、最大10点のリードに成功した。一方の白鴎大は残り4分半でようやくこのQ初得点。終盤にかけては#28角田のシュートや#33杉山(3年・SF)のドライブからのバスケットカウントなどで反撃も出るが、30-22で東海大の8点リードで前半を終えた。

3Q、立ち上がりは両者ミスが続くが、そこから流れをつかんだのは白鴎大。最初の2分半はノーゴールだったが、#0関屋(3年・G)のドライブを皮切りに#66松下(4年・G)、#35ミサカボ(3年・PF)、#52ブラ(4年・C)など、2分半で怒涛の12得点を挙げ、一気に差を詰める。東海大は#24松崎のフリースローはあるが、それ以外で得点が伸びない。なおも勢いを切らさない白鴎大は、ディフェンスではファウルを吹かれてもひるまず、なおも攻めた守りを展開。ただしこのQは4点から先が縮まらず、最後は東海大が#5河村のスティールから速攻を出すと、48-41で終了となった。

東海大#11大倉は後半無得点。スリーが決まらなかった。会見での長い沈黙が、口にしきれない想いを表現していた。

4Q、白鴎大が怒涛の攻撃に転じて残り3分半で逆転

最終Q、白鴎大はじわじわとファウルトラブルが苦しくなる。東海大はセカンドメンバーの時間帯に#3ハーパー(1年・PG・福岡第一)、#15島谷(3年・PG)のドライブなどでリードを保つと、残り6分間はスタメンに託す形となった。だがここで切れないのが白鴎大の良さ。#52ブラの連続得点に#66松下がジャンパーを決めると、残り4分半で52-52の同点に追いつく。東海大は#11大倉、#5河村が攻めるがシュートが決まらない。白鴎大は残り3:43、#66松下のシュートでついにこの試合初めての逆転。さらにこれに続いた#33杉山のスリーポイントがチームを盛り上げ、残り葯3分で5点のリードに成功する。ファウルトラブルの懸念は続くものの集中は切らさない白鴎大は、このリードを守ったまま試合を展開。一方の東海大は#23佐土原(4年・PF)がフリースロー、さらに残り37.5秒にスリーポイントが決まり58-61と3点差に迫った。ここから互いにターンオーバーが続くが、東海大は最終局面で#11大倉にボールを託す。白鴎大ベンチからは「大倉!」「大倉!」と大声で相手エースに対する警戒の声が上がり、体育館中に響き渡るその声に館内の空気に緊張が走る。3点ビハインドの東海大にはスリーの選択肢しかない。「自分が決めきるつもりだった」という#11大倉は、ディフェンスで迫りくる#35ミサカボをポンプフェイクでかわしシュート態勢に入ろうとするが、ジャンプしてこれを阻みにいった#35ミサカボの前にボールを取り落としてしまう。キックボールかと思われたが笛は鳴らず、そのまま#35ミサカボは自陣にボールを持ち込みレイアップで58-63。残り時間7秒足らずで東海大の反撃はなく、白鴎大が準決勝に引き続き、逆転で初のインカレ王者に輝いた。

ダメ押しになった白鴎大#33杉山のスリー。これで5点のリードに成功。

白鴎大は前半こそ遅れを取る展開となったが、徐々に調子を上げていくタイプであるせいか、あまり焦りは感じられなかった。4Qの勝負所で盛り返した要因について「一番はディフェンスの強度、そしてこのチームはどれだけビハインドでもメンタルが落ちない」網野監督。動揺しないゲーム展開は、準決勝後の記者会見で語ったことの実証であり、今年このチームの何よりの強さだ。準決勝の筑波大戦では動き自体が固いところからの逆転だったが、決勝でのディフェンスは前半から相手のターンオーバーも奪えていた。ディフェンスは後半にかけてさらに強力になり、東海大へのフィジカル的、メンタル的なプレッシャーとなって10得点に抑えた。ファウルも嵩んだがある程度計算のうちだろう。最終的には#56小室が退場になったものの、#35ミサカボがカバーし、#22杉山、インサイドでは#45シソコ(2年・C)も仕事を果たした。

リーグ戦以降、粘り強さとディフェンス力、チームの一体感では、目をみはるものがあった白鴎大。4年生は高校までのキャリア的には地味なメンバーたちだった。しかしトッププレイヤーとの対戦で揉まれることで着実に力を蓄えてきた彼らは、スタートは関係なく、大学の4年間の努力にこそ、大きな意味があるとその結果で教えてくれた。

東海大はリードしていたものの、前半からパスの合わない場面が散見され、少し集中力を欠いているようにも見えた。そして、ここまでの試合で絶対的な力を誇ってきた#11大倉が、この試合ではまさかの4得点。2回戦の大東文化大戦から中央大、専修大と3試合、詰め寄られてはそれに反撃して勝利してきたチームは、4度目にしてその壁を突破され、連覇の夢は叶わず終わった。しかしエース#11大倉の大怪我とそこからの復活、帰ってきた彼を迎え、再び見るものに夢を与えた姿は、ファンに忘れられない記憶を残してくれた。

白鴎大記者会見

網野友雄監督「ディフェンスはできている自信があり、粘り強く我慢できた」
「初優勝できたということで、非常に嬉しく思っています。今日のゲームに関しては、連戦の中で非常に準備が難しく、なかなか相手の対策をする時間を取れず、過去の映像も見ながら少しオフェンスの部分で修正を伝えて、試合に臨みました。前半は上手くそれができず、点数が伸びなかったというところがありました。ただ大会を通して、強度高くディフェンスをできる自信が、選手たちにもついていると思います。点数が取れなくても後半しっかりディフェンスをしようということと、オフェンスの部分で修正をしたことが少しずつ後半は出せたので、粘り強くやっていくことができたかなと思います。

うちのチームの選手は素直で純粋、バスケットが大好きな子たちです。1年生の時は生意気なところもたくさんありましたが、どんどん大人になり、コミュニケーションの量や質も変化していく姿を見てきました。これから巣立っていく4年生には、この経験を活かして更に成長して、社会の荒波に揉まれて欲しいなと思います」

#66松下裕汰「白鴎大の歴史に名を刻んだ」
「白鴎大学の歴史に名を刻めたということは、嬉しいです。今日の試合は前半リードされている展開で、我慢して最後までチームとして戦う事ができて、勝利につながったと思います。この1年間で学んだことは、チームの力強さがすごいなということです。仲間で助け合いながらバスケをすることで、一人ひとり自信や責任につながってきて、それが一体感になりました。インカレ優勝ということが達成できたということが、4年間で得られた何よりのものです」

#25角田太輝「我慢は覚悟していた。その上で最後にチームの持ち味が出せた」
「最後まで我慢の時間が続くというのは分かっていたことなので、チームで最後までディフェンスをして、ブレイクという形が出ました。自分たちの持ち味というものが勝利につながったと思います。自分は過去2年のインカレは不甲斐ないプレーばかりしていました。その悔しさを晴らしたいというのがあり、負けた先輩の分まで優勝は絶対取りたいと思っていたので、その気持ちが出せて結果につながりました。

白鴎大に来て、チームメイト、網野さんや石井アシスタントコーチに出会えました。インカレ優勝というのも嬉しいんですが、保護者だったり今まで育ててくださった方々に恩返しできたことが嬉しいです。何よりも一番長く時間を過ごして来たバスケ部のみんなといられたことが、4年間で一番楽しかったなと思います。ここを選んで本当によかったと思います」

#52ブラ グロリダ「足りないものを考え、チームで埋めた」
「前半は相手の流れでした。自分たちはシュートが決められなくて、ハーフタイムにどうやって自分たちの力を出すかということを考えて、まずディフェンスをして相手のことを止めてからオフェンスをすることだと思いました。チームでそれができてこの勝利ができたと思います。

絶対に卒業するまでに優勝すると決めていて、3位になったときや4位になったときはあと一つ足りない状態でした。それを網野さんやアシスタントコーチと話して、自分の考え方に何が足りないのかを考えました。個人でやるよりはチームでやったほうが優勝できるんじゃないかと思っていて、まさにチームでできたんじゃないかなと思います」

#56小室昂大「学年を問わずベンチで励まされていた」
「リーグ戦から、チームでやるべき事をしっかり遂行できたところが勝因につながったと思いました。あとは4年生の気持ちが何よりも強かったと思います。今日は自分らしいプレーができなくて少し苦しいところがあったんですが、同学年だけでなく、下級生からも試合中『頑張れ』とか『前を向け』という言葉が出てきました。仮に今日優勝していなかったとしても、自分はこのチームで最高に良かった。最高のチームメイトと最高のチームです。白鴎大は無名選手が多いと言われているので、無名なら逆にスター軍団に勝ってやろうと一人ひとり思っているところがあったので、そんなところも気持ちの一つにはなっていました」

#0関屋 心「4年生が残してくれたものを引き継ぐ」
「これがチームプレーなんだなと改めて感じました。(3年の)自分にとってはまだ終わりじゃないので、4年生が残してくれたチームプレーを引き継いで、来年もしっかり頑張りたいと思います」

#2脇 真大「リバウンドとディフェンスが鍵だった」
「前半相手の流れに持っていかれていたんですけど、タイムアウトやハーフタイムの時に、みんなで我慢しようと声をかけていました。鍵になっていたのがリバウンドだったので、リバウンドとディフェンス、そこがしっかりできたと思うので、この優勝につながったのかなと思います」

東海大記者会見

陸川 章監督「このチームを誇りに思う」
「今日の残念な結果はすべて私の責任です。選手たちは持てる力を1回戦から決勝まで出し尽くしてくれたと思います。このチームを作ってくれたのは4年生たちであり、誇りに思います」

#11大倉颯太「悔しいけれど、その一言では言い尽くせない」
「正直にいうと、負けを認められません…スタッフの皆さんにこんなに素晴らしい環境を作ってもらって、それに答えられませんでした。

今年は怪我からのスタートで、チームに戻ったときにみんなが温かく迎え入れてくれ、すぐにチームに馴染ませてくれました。僕がチームに合流していない時期も、みんなと連絡をとっていましたしチームが始まる前、4年生たちとどういうチームにしたいのかどういうチームにならなきゃいけないかと話し合い、みんなが同じ方向を向くためにやってきました。復帰してからは陸さんが使ってくれて、僕も満足のいく役割を果たせたと思います。でも最後に負けてしまって、これが全てだと思うので悔しいというか、その一言で終わらせられないですけど、申し訳ないという気持ちでいっぱいです」

◆陸川監督に4年間で教わったこと
「陸さんから学んだこととして、リーダーである上で、チームがいい時こそ上を見すぎないで平常心でいるというか、ニュートラルな状態でいること、そしてチームが下を向いている時は下を向かずに上を向かせて、自分が上を向いてチームを引っ張ること。一言で言うとこんな感じなんですが、自分の性格を変えてもらうようなアドバイスをしてもらえて、幸せな4年間でした」

#20伊藤 領「颯太を中心にしたチームをインカレで見せられたよかった」
「僕個人としては、この試合だけではなくて、このチームの戦力としてやれなかったこと、それが悔しいです。今回の決勝に関しては自分たちの思うような結果にならなりませんでした。チームも特に4年生たちは悔しいと思うんですが、3年生以下に今後の目標を託して、また来年この場所に戻ってきてほしいなと思います

◆陸川監督に4年間で教わったこと
「この1年間は颯太(#11大倉)の怪我から始まりました。颯太が練習にいなくても自分たちの中心には颯太がいて、彼は復帰するということを言ってくれていたので、それに対して自分たちも彼がいつ帰ってきてもいいように準備をしていました。聖芽(#60坂本)のアクシデントが本当に悔しいことがあるんですが、またインカレで颯太を中心にこのチームを見せられたというのは、本当に良かったと思っています。このチームはコート内外で颯太を中心に回っていたし、本当に家族以上の関係を、ビッグファミリーをこのチームで1年間築けたのが本当によかったなと思います」

#86八村阿蓮「陸さんの人柄に惚れて東海大学に入り、精神的に成長できた」
「負けという結果は変わりません。このチームメイトと一緒に戦えたことに誇りを持って、今後もこのことを忘れずにバスケットを続けたいと思います。

◆陸川監督に4年間で教わったこと
「この4年間で一番成長したのは、人間的なことだと思っています。陸さんの人柄に惚れて東海大学に入学して、1年生の時は自分のエゴも出ましたし、しょっちゅう切れてダメなプレーもいっぱいあったんですが、その度に陸さんが大人になれと言ってくれました。年々陸さんの言ってることがわかるようになって、精神的に成長できた4年間だったと思っています」

#23佐土原 遼「後輩たちには目標を達成して欲しい」
「このチームで本当に良い後輩、いい同期に恵まれたなと感じています。インカレだけ見てみても競る試合がほとんどだったんですが、同期や後輩たちがいてくれたから、勝ちきることができたんだと思っています。今日は負けてしまいましたが、次につながる試合だったかなと凄く思っています。後輩たちはインカレの厳しさを痛感できたと思うので、自分たちが成し遂げられなかったBリーグを倒すこと、そしてインカレに勝つという目標この2つを成し遂げて欲しい。個人的には大学レベルでもまだまだなのに、これからBリーグにいってプレーするので、日々鍛錬、努力をしなければなと今日の試合をして思いました。

◆陸川監督に4年間で教わったこと
「4年間一緒に過ごして自分の中で最も成長したなと思うのは、前までだったら負けた後は下を向いて立ち直ることがあまりできなかったんです。今日負けて悔しいのは悔しいんですが、やはり下を向かずに次のステージに向かってちゃんと努力しようと、今日の自分のプレーの反省を試合直後に整理したので、そこは成長させてもらった部分なのかなと思います。Bリーグでも負ける試合はあります。その時も下を向かず、常に前を向くということはチームに伝染させていきたいなと思います。それが教わったことです」

#60坂本聖芽「怪我の悔しさはあるが、仲間にここまで連れてきてもらった」
「自分はこのインカレ期間に怪我をしてしまって、本当に悔しい気持ちはあるんですが、今いるメンバーに託して、ここまで連れてきてもらったことに本当に感謝しかありません。陸さんからもポジティブな言葉をかけてもらったので、優勝はできなかったですけど、このインカレという舞台に立てて良かったです」

◆陸川監督に4年間で教わったこと
「陸さんからはたくさんのことを学ばせてもらいました。一番は自ら学ぶということです。こういう負けだったり、失敗だったりをした後に、どうするかということと下を向かずに上を向いて自分が次に何をできるかということを考えることを、本当にこの4年間で学んで今の自分がいると思います」

#5河村勇輝「自分がゲームを壊してしまった、申し訳ない思いでいっぱい」
「まずこのインカレができたこと、こうやって決勝で戦えたことを、陸川先生を含め、スタッフの皆さん、チームを引っ張ってくれた4年生に感謝しています。その中でも、どの試合でもいい流れがきた時に、ガードの自分がチームを上手くコントロールできなかったり、今日もやっぱり大事なところでターンオーバーしてしまったりということがありました。スタートもベンチから出ている選手も本当に素晴らしいプレーをした上で、自分がゲームを壊してしまったので、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも本当に決勝の舞台に出させてくれた先輩方、チームメイト、陸川先生に感謝の気持ちを忘れずに、今後もしっかり恩返しできるように成長した姿をお見せできるようにしたいと思います」

タイトルとURLをコピーしました