【2024シーズンの選手たち①】「求められているものを汲み取りきれず苦しかった」苦悩の中で見せた爆発的プレー/#7星川開聖(筑波大・2年・SF)

2024関東リーグ

東海大戦で29得点、逆転劇の牽引役に

193センチ103キロの身体が、その重量感を感じさせず軽々と躍動し、東海大のコートを切り裂いていった。東海大の強固なディフェンスをものともしないゴールラッシュで、あっという間に試合展開を筑波大有利なものへと変えていく。

10月27日の東海大のホームゲームで筑波大#7星川は第3Qだけで17得点1アシストと躍動し、試合の流れを逆転させた。最終的にはチーム全体の奮闘もあり、追い上げる東海大を振り切りアウェイの筑波大が勝利。星川は合計で29点。首位の東海大を倒し、チームとして6勝目を手にした。

大観衆が詰めかけた中で始まった東海大との一戦。

今リーグの筑波大は開始序盤から苦しい戦いを強いられた。開幕前から複数の主力に怪我人を出しただけではなく、試合が進むにつれてもその数は増えていき、黒星が続いて順位は低迷。星川自身も怪我で1巡目の終盤まで欠場。公式戦復帰は天皇杯の休止期間後だった。そこからはまずまずの働きを見せるが、チームとしての課題はいくつもあった。中でも1部12チームの中でも最低という得点力には「点数が止まる時間を少なくしないといけないし、そのためには自身のプレーも上げていかなくては」と復帰後の9月29日の試合で語っていた。

復帰すぐの日本大戦では28得点をあげるが、チームとしては敗れた。

「練習の復帰は9月に入ってからです。天皇杯で試合の休止期間があったので、その間はチームでも課題を認識して練習できていました。久し振りに試合に戻って、練習してきたことはやれていたので、個人としてもチームとしても感触は悪くなかったと思います。ただ勝てていないという面ではまだまだ。ここから試合をしながら調子を上げていきたいです」

前向きなコメントだったが、その後も筑波大は怪我人が続き、結果もついてこなかった。競り合いの末に敗れる試合も多く、10月19、20日の17・18戦は、ホームゲームで連敗してしまう。「本当にショックで、メンタルにもダメージを食らった状態」となるが、それだけではなく、これ以上負けが混むと2部との入れ替え戦進出もありうるという状況に陥ってしまう。そこから迎えたのが26日と27日の19・20戦だった。

引き付けてからのアシストも見せた。

中央大戦の勝利で得られた良い感覚を東海大戦でも持続

ひとつも負けられない状況に追い込まれたチームは、まず26日の土曜日、19戦で中央大と対戦する。1巡目は接戦の末に6点差で勝利した相手だったが、2巡目の対戦は余裕を持った試合運びで5勝目をあげる。これがチームのモチベーションを高めたと星川はいう。

「まず先週からの1週間を、今週勝つためにやってきました。そして26日の中央大戦で良い内容で勝てたのが大きいと思います。それがみんなの自信になっていました。そして東海大戦は、出だしは相手がいい流れで簡単にスリーポイントを打たせてしまったりして、自分たちの課題である悪い入りになってしまいました。でも2Qに立て直すことができて、ハーフタイムにもみんなで鼓舞しあって、いけるぞ、という感じになりました。昨日中央大に勝てたことで下を向かずにやれる、という感覚がありました」

その東海大戦、試合は1Q、24-11と東海大リードだったが、2Qは星川の言う通り立て直して点数は11-25と真逆の展開になる。セカンドメンバーが東海大ディフェンスをこじ開け、星川、#13岩下、#19間山、#3黄ら主力もバランスよく得点して勝負を五分に戻した。そして3Qに星川が爆発的なプレーへと続いていく。

「2Qの途中あたりで、ボールを貰ってからすぐドライブに入る形で気持ちよくプレーできていました。先生やコーチ陣にもそれでいいといわれたし、そこで自信がついて、後半も同じように気持ちよくやれたと思います。特に3Qはなんかこう、久しぶり“ゾーン”に入っている感じで、シュートが落ちる気がしませんでした」

自分でも言うように、3Qは開始2分頃から星川の独壇場だった。東海大もディフェンスで食い止めようとするが、星川のサイズと幅を簡単に守ることができず、かつ柔らかくしなやかなプレーに翻弄されて次々にゴールを許してしまう。レイアップからアウトサイドまで、まさに“ゾーン”に入っていたといってよく、ホームの東海大の応援が大多数であろう観客席も固唾を飲んで星川のプレーに見入る雰囲気になっていった。

4Qは東海大も次第に落ち着き、反撃を仕掛けて17点差を5点差にまで縮めるが、対する筑波大も集中を切らさずチームでディフェンスを粘り、最後は追いつかせずに逃げ切った。全員の奮闘で盛り返した内容にチームに笑顔が弾けたが、試合後俯いてベンチに戻ってきた星川を、メンバー、スタッフ、そして吉田監督が笑顔で出迎えた。

勝利に#6副島と抱き合う。

「怪我をしたこともそうですけど、最近ずっと迷惑をかけていました。復帰してからもチームを勝たせることできていなかったし、吉田先生の求めていることとかを自分で汲み取りきれていなくて、そこがずっと苦しかったです。その想いがあふれてきて涙が止まりませんでした」

吉田監督からは試合後特に何かを言われた感覚はないというが、吉田監督をはじめ、スタッフたちの笑顔は言葉にはなっていなくても十分「よくやった」という気持ちが感じられるものだった。

筑波大はこの19・20戦で今リーグ初の2連勝。苦しむ中で手にした大きな価値ある2勝となった。課題の多いリーグ戦の反省とここからの修正は尽きないが、チームとしても個人としても会心の出来となった東海大との試合をこの先にも活かせるか、まだ戦いは続く。

吉田監督も満面の笑みで出迎えた。
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