チームとして「まだまだ」という感覚で終えた新人戦、「秋は勝ちにこだわっていく」
専修大は3月の新人戦で4位。最終戦は不戦敗で終わる形だったが、新人チームでひとまず結果を残し、そこで活躍していたメンバーもトーナメントにも絡んで、優勝を勝ち取った。その上で、再び戻ってきた2022年度の新人戦の舞台。ベスト8をかけた戦いでは白鷗大と対戦するとあって、見逃せない一戦だった。
今回の新人チームは機動力が高く、全体的にサイズもあるが、ノーセンターの構成。その中でオールラウンダーの#16淺野(2年・PF)がインサイドを担った。「全員が何でもできるメンバー。だから2、3番の選手にまずはポストアップさせ、自分は外に出ることでインサイドの選手を外に引き出し、そこでローポストを突くつもりでした」というゲームプランは、立ち上がりは拮抗した勝負に持ち込むことに成功。またディフェンスでも簡単にやらせない激しさを見せた。
しかし2Qになって白鷗大の#25ジョエル(1年・PF・別府溝辺)にゴール下を支配されていくと、苦しくなった。「2Q、モンガー(ジョエル)には1対1ではディフェンスにつけたけれど、イージーにカッティングからのレイアップにいかれ、またリバウンドもやられてしまいました」と劣勢の要因を語るが、202cm・106kgと、サイズも幅もある相手に苦労させられた。さらに、次第に個々で打開しようとしたり、チームになりきれていなかったところも不完全燃焼の様子を感じさせるが、結果として受け止めている様子が伺えた。
春シーズンとしてはここで終わりになるが、秋はまた全体チームで優勝を目指す。トーナメントのあとはチームの結束力も強くなり、練習の雰囲気もよくなったという。「勝ちにこだわり、全勝できるように頑張っていきたい」と前を向くが、春の王者としてのプライドを示したいところだ。
個人のレベルアップために何が必要か、今は課題探しの途上
淺野は5月のトーナメントでも、全体チームのスタメンとして得点・リバウンドで貢献。チームを盛り上げ、声をかける様子も目立った。こうしてチーム一丸で勝ち取った18年ぶりの優勝は、専修大がようやく頂点へと突き抜けられた見事な勝利だった。しかし、喜びは大きいが、個人的レベルでいうと、見ようとしていたものが見えない優勝にもなった。
「優勝はめちゃくちゃくうれしかったです。でも、僕個人としては“優勝してしまった”、という感覚もありました。というのも、僕はもともとオールラウンドなプレーが持ち味ですが、自分が現時点でやれることを発揮して優勝できました。逆に自分に何が足りないのか、トーナメントの中では明確に把握することができなかったんです。だからこそ、自分がこれから何をすればいいのかということを、大会が終わってからすごく考えています」
チームとして勝ち取ったものは得難い。しかし欲をいえば、もっと成長のきっかけとなるような、新たな壁や課題を得たいという思いが改めて沸いてきているのだ。
「来たボールでシュートを決めるとか、リバウンドに飛び込むとか、そういったプレーはこれまでもやってきたことです。『新しく挑戦した』『これができなかったな』というものが、トーナメントの中では自分の感覚として把握でませんでした。だから今は自分自身が今からやるべきこと、いわば課題を探している最中ですね」
新たな環境で過ごしている大学での時間を有効に活かし、さらなる成長を
現時点でも年代別の代表候補にも入っている、期待の選手だ。将来はプロを目指す。今できることをハイレベルにしていくことだけでも、武器になることは間違いない。だが大学2年の今だからこそ、自分がどんな課題を乗り越え、何を身につけるかについて、自問だけではなく、さまざまな経験の中からもさぐっていこうとしている。例えば今季はスタートとしてやっていく中で、意識して変えていこうとしている部分もある。その一つが「思い切ってシュートを放つこと」だ。
「高校時代はそこまでシュートに積極的ではありませんでした。でも将来は日本代表に入りたい気持ちがあるし、そこで生きていくためには2、3番ポジションができなくてはいけません。だからアウトサイドがやれる、留学生のいるチームでプレーしたくて、専修大に来ました。それに、高校時代は我(が)を出すようなプレースタイルではなかったけど、個々の力でやる専修大みたいなところなら、いい意味で“自分の我”を出す機会もあると思ったんです。そういった部分では、今回の新人戦では、『自分でやらなければ』という機会を得られているので、成長できている部分なのかなと思います」
チームプレーを重視する洛南から、個人技を活かして戦うスタイルの専修大という、新しい世界に足を踏み入れ、1年目から多くの刺激をもらってきた。「専修らしく見えるのは見た目だけ。まったく違う世界に来てしまった」と高校時代とのギャップに笑うが、新しい環境だからこそ、新しい武器を加えていくことができるに違いない。そして、新人戦終了の1週間後にはすぐ、自分を試す機会がやってくる。6月18日に開催される日本女子代表の前座試合のエキシビションマッチで、U22のチームと対戦する学生代表メンバーに選ばれた。そこではまさに2、3番のポジションに入るため、自分の課題が見えるかもしれないと期待する。
大学バスケの4年間でいえば、2、3年目は迷ったり、模索したりしながらきっかけを掴んでいく時期だ。そんな只中にある淺野がこの先どのような選手に成長していくのか、その道程もまた興味深い。