【2023全関】神戸医療未来大が遂に「関西王者」に

大阪学院大の猛追を振り切って初優勝を果たし、神戸医療未来大はどこかほっとした様子でその瞬間を迎えた。

全関はこの日が最終日。3年ぶりの東淀川での最終3連戦開催であり、ベスト8以上が久しぶり、もしくは初めてというチームが複数いることから、関西の学生界に新風が吹いていることを感じさせる大会となっている。

順位決定戦はタレント豊富な同志社大が勝ち抜く

最後の2日間で順位決定戦を戦った4チームは、同志社大、京都産業大、大阪体育大、大阪国際大という順で順位が決まった。その中でも最高位の同志社大は、要所で#30島倉(2年・SF)が勝負強さを発揮し、期待の下級生たちが噛み合いつつある。ポテンシャルあるメンバーが揃うだけに、この先に更なるジャンプアップが果たせるかに注目だ。

要所で決めるクラッチシューターぶりは流石の一言に尽きる島倉。同志社大の5位に貢献した。

「この身長でインサイドをやっていることに誇りを持っている」同志社大・#21板澤明日起(4年・PF)

「優勝を目指していたので5位という結果には不満も残るんですが、自分たちは小さいのでディフェンスから走って機動力を活かしていくということを目標高くやってきて、それがこの結果につながったのかなと思います。四私大戦でも関大には負けていて、強さは身に染みて分かっていました。でも、去年はそうした後にずるずる負けて結果を得られていなかったので、しっかり切り替えて体大と京産の試合に臨めたんじゃないかなと思います。

自分たちの強みは大西や島倉の部分なので、その強みを活かしていくことを磨いてきました。サイズが小さいのは仕方ないので、自分や門川が下でボックスアウトして、ガードやフォワードが絡んでいくことをディフェンスリバウンドの面で意識しています。自分個人では一人で押し込まれるということはなくなってきていて、ロールターンをされた時とかはチームで守るようにしているんですけど、ボックスアウトや平面での体の張り合いでは戦えるようになってきているので、この身長でインサイドをやっていることには誇りを持っていますし、4年間の努力が実ってきているのかなと思います。

才能の部分には全員光るものがあると思っています。そこでチームのレベルに合わせていては関西、全国のレベルに通用しないので、自分たちが関西上位のレベルを知っている中で、コミュニケーションの中で『ここはこうした方が良い』とか、『まだまだだ』と伝えていっています。結構言い合える雰囲気なのかなと思います。ただ今回で改めてディフェンスの強度が必要だと感じました。これからの練習でも強度や高いレベルにフォーカスしていくことはやっていく必要があると思っています」

【3位決定戦】強みを強調した関西大が大差で勝利

3位決定戦は、序盤から関西大の脚力が生きたゲームとなった。ガード陣が自慢のスピードで大阪産業大を翻弄し、#7ジョシュア(2年・C)のインサイドでの強みを出させない。#89佐藤(3年・PG)や#46大内(4年・PF)が技ありの得点を重ねていき、前半だけで12点差に。追い上げたい大阪産業大をあざ笑うかのように、3Q立ち上がりに#13西田(4年・PG)のバスケットカウント、#46大内のジャンプシュート、#13西田が今度は3Pを決め、一気に勝負の方向を決定づけた。そのまま最後まで20点前後の差は動かず、74−55という大差で関西大が3位入賞を決めた。

大内が気を吐いて得点を重ねていった関西大。1部復帰のためのキーマンだ。

「1年で1部復帰に向けて同じ方向を向いている」関西大学・#13西田倫太郎(4年・PG)

ー3位という結果への受け止めは?

「今年は2部に落ちてしんどいスタートでした。全関はベスト4を目標にしていて、同志社に勝って優勝を目標に切り替えたんですけど、詰めが甘いところが出て1点差で負けてしまって、今日の試合へのモチベーションという意味では難しかったんですけど、何とか勝てました。自分たちとしては満足できる結果だと思います」

ーこの春の練習はいかがでしたか。

「チーム練習が始まったのは2月くらいからだったんですけど、2部に落ちたことで1部のチームと練習試合をすることが増えて、そういう経験ができたことが大きかったと思います。リーグで当たる1部同士というのはなかなかないので」

ーチームが出来上がるのは早かったですか?

「早かったと思います。去年は卒業した西村さんや糸瀬さんとか、エース級の選手もいましたが、今年はチーム全体として勝っていかないといけないので、本当に総力戦でディフェンスやルーズボールといった泥臭い部分を徹底して意識してきました」

ーこの大会で見せた速攻は強力でした。

「去年も意識をしていたんですが、エースにボールを集めていくことも多くて、苦しい場面で走ることを出していくことができていなかったです。去年までの反省を活かしていこうということで切り替えてきています。去年までもやってきていたことではあるんですが、ボールをみんなでシェアしていこうという考え方でやっています」

ーその中でご自身が意識されていることは?

「ディフェンスをしっかりやっていくことが自分の持ち味なので、スタメンで最上級生ということで、グダグダせずにビシッと試合に入ろうと意識しています」

ー最上級生としてプレー以外の面で心がけていることは何ですか?

「プレー以外の部分でもしっかりやっていこうと。ダラダラしている部分は戒めて、そういう部分からしっかりやろうとシーズンに入る前から話していました」

ー後輩たちはついてきていますか?

「僕は関大一高出身で、後輩にも一高出身が多いんですが、一高でもそういう感じでやってきたので、拒否感とか戸惑いは少ないかなと思います。1年で1部復帰に向けて同じ方向に向いていると思います」

ー西日本インカレもすぐです。

「西日本は僕と岡が教育実習でいないんですけど、総力戦という意識を持ってリーグに向けて入っていけたらなと思っています」

「どんな場面でも『不動心』を頭に置きながらやっていく」大阪産業大・#55高木拓海(4年・主将・PG)

ベスト4入りは果たしたものの、最後は連敗フィニッシュとなった大阪産業大。主将の高木もその表情は複雑だった。しかし、昨年のインカレで確かな爪痕を残し、かつての1部と2部を行き交っていたチームとは選手の表情は明らかに異なっている。前主将の小栗が植え付けた勝ちきるメンタリティーを確かに引き継ぎ、残りのシーズンでは巻き返していく。

ーベスト4には進みましたが、最後の2日間は思うような結果ではなかったと思います。

「昨日の神戸医療戦に勝って決勝に行こうと話していて、昨日の負けが今日にも響いてしまったように思います。そこが今のチームの弱さであり課題だと思います」

ーキャプテンという立場ですが、チームへのアプローチの仕方は色々あると思います。高木選手はどのようなタイプですか。

「僕自身は周りに声を掛けていくタイプなので、周りの選手もアグレッシブに声を出して、産大の持ち味であるディフェンスからのブレイクに持っていけるように。ディフェンスとリバウンドだと声を掛けていたんですけど、やっぱりそこが全然できていなかったし、徹底できていなかったので、それが今後の課題だと思います。他にも色々あるんですけど、まずはそのディフェンスとリバウンドという当たり前のことをどのくらい徹底できるかが勝敗の鍵になってくると思います」

ー金友選手、新谷選手が共に当たるような状況になればチームもグッと乗ってくる印象です。

「金友も身体能力がありますし、新谷も去年までプレータイムがなかったんですけど、シュートという持ち味と最近はドライブも行けるようになっているので、練習から噛み合って成長していければ、チームも強くなるし、ジョシュアも空いてくるので、その点も課題ですね」

ー今チームとして目指していること、それに対してご自身は何を徹底しようと思っていますか。

「チームのベースである周りから応援されるチームという姿に向けて、自分がどう引っ張るかを考えたときに、ディフェンスにしてもオフェンスにしても当たり前のことをしっかりやる。コート外でも挨拶といったことから徹底するということは、周りの選手にも言い続けたいなと思っています」

ー昨年のインカレで早稲田大を倒しました。チームとして変化はありますか。

「関東を倒すという目標を持って関西に来て、去年それを成し遂げられたんですけど、それまではチームとして勝ち方を分かっていなくて、自分たちの調子の良し悪しが影響する部分が大きかったんですけど、早稲田に勝ち切ったことは自分たちの自信にもつながりましたし、今回ベスト4にも入って、みんなにもある程度勝ちパターンというのが芽生えて定着してきたように思います」

ー今年のチームが目指していることは何ですか。

「チームのベースはぶらさずにして、それに一人ひとりが成長していくことでチームとして成長できるようにしたいと思っています。今年チームとして『不動心』をスローガンにしていて、どんな時でも目標をぶらさずにやり続けられるかが今年のベースなので、それは僕自身もやらないといけないし、周りにも伝えていかないといけないと思います。今日も判定にフラストレーションを抱えてしまうことがあったんですけど、そういう場面でも『不動心』を頭に置きながらやっていきたいと思います」

ー大所帯のチームを牽引するのはなかなか難しいこともあると思います。

「AチームとBチームに分かれていて、どうしても全体での一体感を出していくのは簡単ではないんですけど、それでも応援してくれる仲間がいて、保護者がいて、ベンチもいて、それが一つになって産大というチームなので、副キャプテンの新谷と横山にも頼りながら良いチームを作り上げていきたいと思います」

ー「応援されるチームを目指す」というのは大阪産業大の伝統ですよね。それがしっかりと継承されていると感じます。

「監督の瀬戸さんが作り上げてきたチームで、そういうことは僕らも伝統として感じています。今ベンチに4回生は3人しかいないんですけど、その3人が中心になってそういう当たり前のことから徹底して1年間やっていきたいと思います」

【決勝】終盤にドラマも神戸医療未来大が辛くも逃げ切る

初タイトルを狙う神戸医療未来大と、この大会では6年ぶりの優勝を目指す大阪学院大による決勝は、立ち上がりから神戸医療未来大がペースを握るゲームとなった。#39中村(3年・PG)が攻め気を見せて獲得したフリースローを落とさない。この日はチーム全体としてもフリースローが堅調で、大阪学院大にダメージを与えながらじわりとスコアを伸ばしていく。絶対的高さのない大阪学院大も大事なシュートを決めていきついていくが、繰り出したゾーンディフェンスもうまく機能せず、どこか攻守が噛み合わない。前半に背負った二桁点差が重くのしかかる展開が続く。

しかし、このまま逃げ切りかと思われた試合終盤にドラマが待っていた。#17山下(2年・PG)、#10佐々木(4年・SF)のシュートが続けて決まり、更には残り1分8秒、#28植田(2年・SG)の3Pで80−83と遂にワンプレーで追いつける差に戻した。神戸医療未来大はタイムアウトで打開を図るが、ダメ押しのあと一本を決めきれず、#31吉田(2年・C)のゴール下で遂に1点差となった。どちらに転ぶか分からない状況で、残り6秒で#36田中(3年・SG)のドライブが決まり、神戸医療未来大が再び3点リード。大阪学院大はタイムアウトを挟んで#12柏原(4年・PG)に託すが、3Pは無情にも決まらず。最後は追い込まれたが、神戸医療未来大が逃げ切る形となり、関西での主要タイトルを初めて掴んだ。

最終盤に事実上の決勝点を挙げた田中。田川監督もその成長に目を細める一人だ。

「今年は絶対にインカレに行くという気持ちで」大阪学院大・#12佐々木綾聖(4年・SF)

ー僅かな点差にまで相手を追い詰めました。

「正直あと一歩、という感じです。前半の入りが良くなかったので、前半からしっかりやっていれば、というところです」

ー追い上げた時間帯は何が良かったのでしょうか。

「チームとしてやるべきことを徹底したということが良かったと思います。相手には留学生がいるので、留学生を引き出して、インサイドだったりアウトサイドだったりでバランス良く得点できていったのかなと」

ーサイズという意味では例年になく小さいチームになっています。当然バスケットの内容も変わってきている?

「最初にやり始めた時は、選手も表現できない部分があったのでそれをやり続けるということを目標にして。まだまだの部分もありますけれど、良かった部分もあったと思います。それは今後につなげていきたいです」

ー今のチームの良さは何ですか?

「全員が小さい分、全員アウトサイドからも打てるし、インサイドでも得点できるという点ですね」

ー下級生の時から留学生と対峙してきて、ご自身の成長を感じることはありますか。

「自分がやらないといけないという責任感だったり、試合に出ていく4回生も2人しかいない中で、周りを活かしつつ、自分のいいプレーを出していくという意味では成長できているのかなと思います」

ー今年目標としていることは何ですか。

「1年生の時はコロナという事情はあったんですけど、2、3年の時はチームとしてインカレに行けていないので、今年は絶対にインカレに行くという気持ちで毎日練習しています。身長が小さい分、留学生のいるチームにはその点で不利になりますけれど、リバウンドだったり、当たり負けしないことと、走っていくことが大事になると思います」

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