関西でも新シーズンの幕開けとなる関西選手権(全関)が開催中だ。コロナ禍の下では大会の中止もあったが、今年は2019年以来となる東淀川開催。最終3日間は、関西の学生バスケファンにはお馴染みの、5月3日からの3連戦での形式に戻った。
昨年、リーグでは上位に神戸医療未来大や大阪産業大といった、数年前までは2部で戦っていたチームが大きく躍進。それまでの強豪校を脅かし、インカレでも躍進を見せた。その変容ぶりそのままに、今大会でも近畿大、天理大といったチームがベスト8に至らず敗退。京都産業大も準々決勝で大阪産業大に及ばず、ベスト4の顔ぶれは大阪学院大以外が刷新されている。
戦国時代を迎えたと言うべき様相のなか、この日は順位決定戦と準決勝の合計4試合が実施された。前半2カードの結果、同志社大と京産大が5位決定戦進出を決め、3試合目以降の準決勝は特に白熱した接戦となった。
【準決勝GAME1】初タイトルへの渇望を見せた神戸医療未来大が制す
躍進著しく、今大会もここまで天理大を撃破している神戸医療未来大。この日の大阪産業大を相手にも、序盤は#35山本(3年・SF)、#39中村(3年・PG)の得点が出て早々に主導権を握る。だが、支柱の#32フセイン(3年・C)も、流石に大阪産業大#7ジョシュア(2年・C)相手には思うように仕事はできない。大阪産業大が何度も食い下がり、なかなか決定的に抜け出せまま時間が経過していく。すると3Q終盤、大阪産業大はそれまで封じられていた#32金友(2年・SF)が連続得点でチームを鼓舞。4Q早々に#18古川(2年・SG)のシュートが決まり、ゲーム立ち上がり以来となるリードを得ると、ここからは一進一退のシーソーゲームが続くこととなった。
互いに決め合い、あるいは惜しいシュートを決めきれない攻防の中で、残り約2分で#36田中(3年・S G)の3Pが決まった神戸医療未来大が1点を勝ち越す。反面大阪産業大は決めきれず、ファウルもかさんでフリースローによる失点がじわりとのしかかっていった。最終的には81ー73とした神戸医療未来大が押し切る格好となり、初めての3冠タイトルまで、あと1勝とした。
「今年の目標は日本一です」神戸医療福祉大・#15板敷 遼(3年・PG)
昨年のリーグ戦では、2年生ながらアシスト王を獲得。チームとしてもリーグ3位を足がかりに、初出場のインカレで初勝利し、白鴎大にも胸を借りるなど、充実の内容だった。
「白鴎大学と戦ってみて思ったのは、関東1位だと全然強度が違うなということでした。関西だと強度という点ではまだ緩い部分があるので、あの舞台に行ってそれを知れて、行ってみて良かったというのが第一の感想です。今年の目標は日本一です」
要の存在であるフセインにどうしても目が行きがち。それ以外のポジションではサイズ的に劣る部分もあるが、この日30得点の中村、勝ち越しの3Pを沈めた田中ら、顔ぶれは多士済々。板敷自身も小さな体で何度もジョシュアが構えるゴール下に果敢な攻めを見せた。
「他の大学に比べて身長がないので、その分リバウンドとか、泥臭い部分で全員が引けを取らないようにハッスルすること。そういったことを練習からしっかりやっていこうと思っています。今日は相手に留学生がいましたが、自分でもリングを狙ってたんですけど、結構ブロックされちゃいましたね(苦笑)。そこはこれから、フセインを相手にして練習していきたいと思います。(気持ちは強い方ですか?)いやあ(笑)でも、やられたらやり返したいですね」
目の前には、チームとして渇望した初優勝がチラつく。目標となる日本一を実現させるには、ここで負けるわけにはいかない。
「今からコンディションづくりをしっかりして、優勝できるようにチーム一丸となって頑張りたいです」
【準決勝GAME2】最終盤で関西大を交わし、大阪学院大が6年ぶりの優勝へ王手
昨年、リーグでは良いところのなかった大阪学院大と関西大。特に関西大は2部自動降格となる屈辱を味わった。今年は捲土重来を期す両者による2つ目のカードは、機動力に勝る関西大が文字通り立ち上がりから走った。#89佐藤(3年・SG)、#4讃井(4年・PG)といったフロント陣が自慢の快速ぶりで大阪学院大を翻弄。大阪学院大は、主将の#12柏原が「走ってくるバスケットにアジャストできていなかった。ドライブでバンバン来られていたので止める意味でもしっかり守ってやろうという意味で敷いた」というゾーンで応戦してロースコアには持ち込み、その#12柏原自身が要所で得点するが、関西大は呑まれず。#17玉造(3年・SF)が内外で得点を重ねてチームを牽引する活躍を見せる。
関西大がややリードしながら推移する攻防が続く最終盤、関西大にファウルがかさみ始める。対する大阪学院大も決して確率を上げられないのだが、この最終局面になり関西大はターンオーバー、シュートミスも目立ち始める。残り1分余り、大阪学院大は#28植田(2年・SG)が値千金のスティールに成功。これを#12柏原の得点に繋げ、大事な局面で大きな2点リードを得た。まだ逆転の芽が潰えていない関西大だが、打ち急いだシュートを決めきれない。時間をうまく使う形となった大阪学院大が辛くもしのぐ形となり、62ー61で僅差の競り合いをものにした。
「コミュニケーション、一人ひとりに気を配りながら」大阪学院大・#12柏原壮太朗(4年・PG)
「去年の主将の金田さんはプレーで引っ張るタイプでした。自分はプレーというよりは、コミュニケーション、一人ひとりに気を配るようにしています。人間良い時、悪い時の波があるので、そういう悪い時こそ声をかけるようにしています」
静かなもの言いながら、冷静さの中にもこの日はプレーに宿るものがあった。立ち上がりからシュートが好調で、ビハインドのチームを何度も奮い立たせた。
「前半に1本目が入った時から、今日はシュートタッチはいいかなと思っていた」
昨年まで在籍した金田以前にも、吉井などといったビッグマンを擁してきたチーム。今年のインサイドは#10佐々木が中心的な存在であり、例年とは異なるチームづくりを進めてきているという。
「システム自体、オフェンスの入り方も全て変わって、今年は高さがない分足を使ってやっていこうとしています。オフェンスはパス・ランを使って攻めて。ディフェンスは前からガードがプレッシャーをかけて、というやり方ですね」
決勝進出ということで、まずは一定の成果を見たと言って良いだろう。だが、ずっと関西のトップ勢力の地位を保ってきながら、一昨年はインカレの連続出場が途絶えた。チームとして目指すのはまだまだ先にある。
「今日はしんどい展開だったので、勝った瞬間はあまり実感はなかったです。今大会は、目標が優勝なので、最後に1勝して終われたらと思います。このシーズン全体の目標という意味では、2年続けてインカレに出られていません。最終的にインカレに出て、関東のチームを倒すということを目標にやっています」