【2023関西リーグ1部】「不動心」を確立した大阪産業大が初優勝

優勝を決めた瞬間、今季のチームを牽引してきた高木と新谷の両名が固く抱き合った。

コロナウイルス流行による各種の制限が大幅に取り除かれ、観客や応援が戻ってきた2023年の関西リーグ。12チームによる形式に戻り、まず1試合ずつ総当たりの1次リーグを行った後、上位・中位・下位の各4チームを3区分した2次リーグ3試合を行い、最終順位を決定する方式となった。

春の全関を神戸医療未来大が制し、西日本インカレでは大阪産業大が決勝まで進むなど、勢力図の変貌を感じさせつつある昨今の関西。リーグ序盤は、近年は上位で安定した戦績を残し続けていた京都産業大が、2日目に大阪経済大に敗れるなど、その流れを感じさせる出来事もあった。

混戦のリーグ戦で最後に笑ったのは大阪産業大。チームスローガンに「不動心」を掲げた今年、タイトルにあと一歩届かなかった春の悔しさを払拭し、悲願の初優勝を果たした。

中盤まで大混戦も抜け出しに成功した大阪産業大

まず中盤までに抜け出したのは天理大だった。同時進行の天皇杯でも結果を残しつつ開幕7連勝と、計14試合のリーグ戦前半を無敗で乗り切った。この時点で、春の主役だった神戸医療未来大と大産大は既に1敗で追う展開。このまま天理大の快走かと思われたが、序盤の躓きから持ち直してきた京産大も加わり、中盤戦以降は上位チーム同士の激しい星の潰し合いとなる。神戸医療未来大を大差で退けた大産大だったが、京産大に敗れる。首位の天理大も、中位の近畿大に不覚を奪われるなど、終盤にかけて足踏み状態となってしまう。

1次リーグの最終日、最終試合に組まれていたのは大産大と天理大のゲーム。ここで大産大が天理大に大勝。これが大産大のラストスパートのきっかけとなった。勝ち点9として単独首位に浮上すると、上位4チームによる2次リーグで2連勝。最終日を待たずして、初めての優勝を手にした。

昨年の大産大は、インカレで早稲田大を下すなどした一方、リーグ6位。ギリギリでのインカレ出場であり、支柱だった小栗(現・B1秋田)が卒業したことで、今年のチームの実力は未知数の部分もあった。今年大きな存在になったのは、これまで出場経験の乏しかった#81新谷(4年・SG)。サイズはないが、アウトサイドを高確率で沈め、4年目にしてチームに大きな貢献を果たした。#7ジョシュア(2年・C)が構えるインサイドは元々大きなアドバンテージであり、高校までの経験豊富な#55高木(4年・PG)が主将かつオフェンスのタクトを振るう役回りで安定していた。ここで、高木も「新谷が得点の役割を果たしたことで、自分の負担が減った」と話すように、言わば新谷がラストピースを埋める役割を果たした。#32金友(2年・SF)ら、下級生も粒揃い。来年以降も安定した結果が期待できるが、まずはインカレで昨年以上の戦果を目指す。

インサイドの要として大阪産業大に不可欠な存在となっているジョシュア。

優勝に届かなかった上位陣は、リーグを通じての安定感という点で大産大に及ばなかったと言えよう。2位フィニッシュの京産大は、序盤の取りこぼしが響き、追い上げも届かず。天理大は1次リーグ終盤での手痛い3敗が響いた。神戸医療未来大は、1次リーグで大産大に敗れて以降は6試合で2勝に留まるなど、春の勢いを削がれた格好になった。一方、リーグ全体では混沌とした様相であったのも事実であり、大産大との大きな実力の開きがあるわけではない。上位には食い込めなかったが、5位・大阪体育大、6位・大阪学院大ともども、最後のインカレで爪痕を残せるか注目したい。

アーノルドは宇都宮とともに京産大の支柱になっている。

【INTERVIEW】「『やっぱり優勝っていいな』と率直に思う」#55高木拓海(大阪産業大・4年・主将・PG)

ー優勝おめでとうございます。一番に感じたことは何でしたか。

「高校では優勝が当たり前という環境で、大学で初めて優勝できて、『やっぱり優勝っていいな』と率直に思いますね」

ーチームとしては初めての優勝ですよね?

「露口先生からも平コーチからも、最高成績は2位と聞いているので…やりました!(笑)」

ー振り返ってみてどのようなリーグ戦でしたか?

「リーグが始まってからはあっという間に時間が過ぎて、とにかく早かったし、こうして結果がついてきて良かったです」

ー春はあと一歩タイトルに届きませんでしたが、リーグで優勝できたのは、その前の準備が良かったと言えるのでは?

「正直、春は勝てる試合を落としていましたし、西日本は僕がいない中で決勝まで行ってくれましたし、僕らの可能性はまだまだあると思うんですけど、最後に粘って勝てるようになったと思います。ベースを忘れずにこれからもやっていきたいと思います」

ー今年の大阪産業大は、新谷選手抜きには語れませんね。

「これまで3年間、試合に出れない状況の中でも腐らずやっていて、僕自身もこのリーグはあいつがいるからこそ余裕が持てたし、あいつに打たせておけば入るという気持ちでいたので、ゲームメイクもしやすかったですし、本当に助かりました。新谷のシュートが入る分、僕は魅せるバスケよりも、チームとして大事にしている気持ちの部分だったり、そういうところでキャプテンらしくやっていこうと決めていたリーグ戦でした。今日なんかは僕自身は全然シュートが入らなかったんですけど、自分自身は走ったり、新谷も3Pを決めたりで、体現できたことが良かったかなと思います」

ー大所帯のチームをまとめる大変さはあったかと思います。その点はいかがでしたか。

「ユニフォームをもらっている4年生は3人だけで下級生が多いので、難しいし、大変な部分の方が多かったんですけど、まとまったら改めてチームとして強いなと思いますし、このリーグ戦で終わりではなく、インカレでベスト8というのが今年の目標なので、少しゆっくりしてから、チームとして目指すところに向けてやっていきたいと思います」

ーこのリーグ戦で良かった点、悪かった点はどのようなことでしたか。

「悪かった部分は、自分たちにフォーカスできないというか。我慢すべき時に我慢しきれないだとか、走らなきゃいけないのに重たいバスケットをしたりだとか、チームが若い分『勝てるだろう』と油断したりだとか、そういう部分が難しくて、それで2敗してしまったのかなと思うんですけど、我慢して走り切るというのがうちのバスケットなので、それが最後の優勝につながったのかなと思います」

ー悪かった点というのは、乗り越えられつつあると思います。

「そうですね。まだまだ伸びしろはあると思うんですけど、乗り切れたのは成長した証なのかなと思います」

ーインカレの戦いについて、現時点でのイメージはありますか。

「どこと対戦するにしても結局は自分たちとの戦いだと思っています。自分たちのバスケをしっかり体現できるような準備をやっていけたらなと思います」

ー昨年は早稲田大を倒していますが、求めているのはそれ以上の結果だと思います。

「去年の秋に4年生が残してくれた結果を超えないといけないですし、僕らがベスト8を達成することで次の学年につながっていくと思いますので、今年だけではなく来年、再来年のことにもフォーカスしながらやっていきたいです」

ー大阪産業大は、結果が出ない年でも「応援されるチーム」を目指すという伝統があります。それがこうして実を結んだことについて、思うことはありますか。

「今日もBチーム、保護者の方々もいっぱいきてくださって、先生たちからも常日頃から学生らしくやりなさいと言われるんです。本当ならわざわざ言われることではないのかもしれないんですけど、そういう言葉をありがたくもらって、バスケができているので、そこに結果がついてきて本当によかったと思います」

【INTERVIEW】「プレーでチームを引っ張っていくことで高木を助けたい気持ちだった」#81新谷亮(大阪産業大・4年・SG)

ー優勝の率直な感想をお願いします。

「優勝できたことについては、嬉しいというよりも、ホッとした気持ちというのが一番です」

ーご自身の今年これまでのプレーを自己採点するとどのくらいですか。

「去年までが全然やったんで…。まあ、80点、90点くらいあげても良いのかなあと思います(笑)」

ーシーズンが始まる時に、ここまでの出来になるというイメージはありましたか。

「正直、先のことはあまり考えていなくて、プレータイムを貰えたからには、その日その日を100パーセントの力でプレーすることだけを考えてました」

ー新谷選手のシュートフォームを見ていると、自信を持って打っていることが伝わってきます。

「チームから期待されている役割が、3Pを打つこともそうですし、決め切ると言うことでもあるので、自分にパスが回ってきたら、自分が打てるタイミングであれば打つということだけを考えてプレーしています」

ーこのリーグ戦で勝ち切れた要因は何ですか。

「個人としてもチームとしても、全関と西日本は悔しい結果だったので、リーグ戦こそは優勝して、自分たちが掲げているインカレベスト8に繋げていくとチームの全員が強い気持ちを持てていました」

ー最上級生としての役割を果たせたのではないでしょうか。

「そうですね。シュートが入らない時や、チームがうまくいっていないときこそ、4年生で作ってきたチームなので、気持ちをぶらさずに、『不動心』というテーマを元に、高木ともそうですし、他の4年生と一緒に作り上げられたのかなと思います」

ーコート上での高木選手との役割分担という意味ではどうでしたか。高木選手は、新谷選手が得点してくれるので助かったと話していました。

「高木も得点力は持ち味なんですけど、自分から見て調子が上がっていなかったので、副キャプテンでもあるので、自分がプレーでチームを引っ張っていくことで助けたいという気持ちはありました」

ー高木選手とは優勝が決まった直後、一番に抱き合っていましたね。

「副キャプテンというのは高木に指名してもらって、一緒に頑張っていこうと言ってくれたので…。すいません…(目に涙を浮かべる)。 ここまで一緒に頑張ってきた仲なので、チームをまとめてくれている立場ということもあって、なんとしても助けたいという気持ちでした。どうしても優勝に導いて貢献したいという気持ちで。感情的になりました」

ーチームへのアプローチや、チーム力という意味では今年一年いかがでしたか。

「自分たちは優勝することだけを考えてやっていたので、悪い状況だったとしても、練習からキャプテンと自分から声かけをしていたので、チーム全員が目標に向かってやってこれたんじゃないかなと思います」

ーインカレに向けて。

「この大会よりもレベルアップした状態で臨まないといけないと思いますし、ベスト8という目標はそんなに甘くないと思うので、さらにレベルアップしてインカレに向かいたいです」

ー高木選手はインタビューを終えた後に、これで小栗選手を越えてやったと仰っていました。

「え?そこはまだまだじゃないですか(笑)? この優勝は自分たちだけの力じゃないですし、スタンドの応援してくれる学生、保護者の方のたくさんの支えがあって、チームとして優勝が掴めたと思っています」

【COMMENT】「チームを勝たせられるようにという気持ちはより一層増した」#9宇都宮陸(京都産業大・3年・PG)

「一言で言うと…やっぱり悔しい。目標は優勝だったので。ただ、最初に1勝2敗からスタートして、『今年の京産は弱い』と言う声は自分の耳にも聞こえていて、そこから練習中からもみんなで優勝を目指して頑張ろうと、より一層声を出して頑張るようになり、それが結果につながり、最終的に2位になれた要因かなと思う。

一方で、去年からもそうだが、やはり自分たちの甘さが出てしまったのが、最初の敗因だったのかなと思う。初戦の同志社はまずまずの内容だったが、それに満足してしまって、勝てるだろうという慢心が、その後の連敗になってしまったのかなと思っている。

チームのオフェンスという点について、自分だけが攻め続ければ良いという問題ではないので、味方メンバーが何が得意なのかというのを練習からもすり合わせていくことが大切だということを、改めて感じた。ただ、去年よりも責任感は増したと思う。自分自身はプロを目指しているので、自分のパフォーマンスが良いだけではなく、ガードとしてチームを勝たせられるようにという気持ちはより一層増した。」

インカレではベスト8の先の壁を乗り越えられていないので、ベスト4、優勝を目指してやっていきたい。一昨年ベスト8に行ったが、それでも慢心せずに謙虚にどれだけ真面目にやれるかが結果につながると思うので、この1ヶ月、ベスト4を超えられるようにやっていきたい」

【COMMENT】「天理のバスケットはぶらさずに戦っていきたい」#24坂口竜也(天理大・4年・主将・C)

「最終戦で大産大に勝利したが、1次リーグで大差で負けていて、2次リーグではリベンジするぞという気持ちだったので、結果としては勝てて良かったと思うのと、インカレに向けて良いゲームができて、次につながる内容だったのかなと思う。春は結果が出ない中で自分たちのバスケットを再確認して、チームとしてやるべきことをぶらさないように徹底してきて。全関、西日本では良い結果ではなかったので、3位という結果が出て少しホッとしている。

少しシステムを変えたところもあったが、その中で元々のディレイオフェンスをしながら天理のバスケットをするということは、多少なりともはできたと思う。ただ、まだまだ得点が取れない時だったり、自分たちのリズムが作れない時には単調になってしまっていたので、そういうバスケットをインカレでは突き詰めてやっていきたい。

自分自身は良かったという思いより、反省の方が大きいかなと思っている(苦笑)。もっともっとチーム力を上げられると思っていて、単調になってしまうのは一人でやり過ぎてしまうことが要因だと思うので、仲間を信頼するチーム力というのをつけていきたいと思う。

僕自身は派手に得点を取るとか、そういうことはあまりできないので、声で引っ張る、ディフェンスで引っ張る。そういう誰でもできることでチームを引っ張ること。それをぶらしてしまったらチームとして崩れてしまうと思うので、それをやり切るようにしている。かつての佐々木隆成さんと同じ背番号だが、意識していなくはない(笑)。高校の先輩でもあるので、受け継ぎたいと思っているが、一方で荷が重い番号でもある。だからこそ、下級生の時は試合にあまり出られなかったが、この番号を背負っているからこそ頑張るんだという思いを持っている。

インカレでは去年予選リーグで敗退して悔しい思いをしているので、まずは一戦一戦目の前の相手を倒していって。相手によって戦い方を変える部分はあると思うが、天理のバスケットというのはぶらさずに戦っていきたい」

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