全関は恒例の5月5日に最終日を迎えた。前年はこの大会を神戸医療未来大が、リーグは大阪産業大がそれぞれ初めて制し、勢力図が変わりつつある関西。ただその2校はいずれも準決勝までに天理大に相次いで敗れた。決勝に勝ち上がったのは、その天理大と、京都産業大。順位決定戦にも以前の伝統校というべき勢力名を連ねた。そうした伝統校の巻き返しを印象づける大会となった。
【3位決定戦】延長突入の熱戦を神戸医療未来大が制す
3位決定戦に進んだのは、神戸医療未来大と関西学院大という兵庫県の2チームになった。ここ数年は神戸医療未来大の躍進が目立つが、7年ぶりのベスト4入りとなった関西学院大が思い切りの良いアウトサイドを決めていき、序盤から僅差の競り合いが続く展開に。終盤に#13、#39中村(4年・PG)の得点が続いて神戸医療未来大が僅かにリードするも、都度関西学院大#37吉本(3年・PF)が決め返して4Q終盤まで先が見えない。最後はやはり#37吉本がゴール下を押し込んで試合は延長となる。延長で存在感を見せたのは神戸医療未来大の第上級生だった。#39中村、#36田中(4年・SG)が相次いで3Pを沈め、粘る関西学院大を押し切る格好に。78ー74で大接戦を制し、神戸医療未来大が3位となった。
「目指している応援されるチームを体現する」神戸医療未来大#15板敷 遼(4年・主将・PG)
「前半にうまくタイムシェアできて、最後に主力が仕事を果たしたことで勝ちにつなげられたと思う。昨日は天理大のバスケットに40分間付き合わされたが、今日は自分達のバスケットを取り戻せたと思う。天理大のバスケットは今までにない形で、ディレイではなく攻めるべき時は攻めてくるという感じ。リーグ戦や西日本インカレでは克服していきたい。
今年主将になり、今までは試合に出ている5人だけをまとめている感じだったが、ベンチにいるチームメイトや応援席にいるチームメイトのことも考えながらやっていくことが大事だと思っている。応援されるチームを目指しているので、それを体現できるようにやっていきたい」
「自分らしい行動で信頼してもらうことは意識している」関西学院大#6山際爽吾(4年・主将・PG)
「留学生のいるインサイドのリバウンドの面で、オーバータイムでは集中が切れてしまっていたのかなということと、大事な局面で自分が決め切れなかったことが敗因だと思う。
自分らしい行動で信頼してもらうことは意識している。特にチームが悪い時にいかに自分が声を出していい方向に持っていけるかが大事。転んだ選手を助け起こすのもまず自分がそこに行ってとか、目に見える部分も目に見えない部分でも取り組んでいくことだと思っている。
全てのタイトルことを目標にやっている。それに向けて悔いのないように過ごしていきたい。最終的にはインカレでベスト8に行きたいと思っていて、自分達の代はインカレを経験しているので、その時の雰囲気や強度を練習に落とし込んで後輩を牽引することが、この1年で求められることだと思う」
【決勝】京産大が天理大のプレスを跳ね返す
この大会、立ち上がりのプレスディフェンスが猛威を振るっている天理大。これまでのディレイドとは一線を画したスタイルが、決勝でも京都産業大に襲いかかった。#10オーギル(3年・C)のゴール下での失点に留め、その間にプレスからボールを奪い続け、#30小林(4年・SG)、#20駒田(3年・PG)らが着実に加点。11ー4となって早々に京産大はタイムアウトを余儀なくされる。今大会ここまでは、準々決勝の大阪産業大も、準決勝の神戸医療未来大もこのままプレスを打開できずに天理大に屈してきた。しかし京産大は#9宇都宮(4年・PG)が冷静だった。「最初の球出しがガードではなかったことで相手に詰められていた。それで自分が球出しすることにした」。タイムアウト明け後、天理大は#7スレイマニ(2年・C)が2ファウル目を取られたこともあり、ここから京産大が逆襲を開始。プレスを掻い潜って攻め込み、#12太田(1年・SG・大阪学院大高)の3Pを皮切りに、#75坂下(3年・SF)、#10オーギルのゴール下などで1Qのうちに一気に逆転に成功。ディフェンス面でも京産大もプレスを仕掛け、脚力を止められた天理大は完全にオフェンスが停滞してしまう。2Qには#80中村(3年・PG)が奮闘を見せるが、京産大が優勢のまま前半を5点リードで終えた。
3Q開始すぐ、#30小林が3Pを沈めた天理大。反撃ムードが出るが、京産大は#9宇都宮の連続得点でそれを断ち切りにかかる。さらに追い討ちをかけたのが#10オーギル。3つのバスケットカウントを続け、流れを完全に京産大に呼び込んだ。天理大も切れずに主将の#30小林(4年・SG)が何本もアウトサイドを沈めるが、約10点のビハインドを埋めるには至らなかった。78ー70で京産大が制し、全関では5年ぶりとなる優勝を決めた。
「今年は見ていて楽しいと思ってもらえるように」#9京都産業大・宇都宮陸(4年・主将・PG)
ー優勝おめでとうございます。いまどのようなお気持ちですか。
「僕自身が京産に来て優勝の経験というのが1年生の時のリーグ戦のみだったので、やっと取れたなという感じです。チームとしての目標だったので、まず率直に嬉しいです」
ー昨日の準決勝で負傷がありましたが、無事出場できましたね。
「昨日の怪我で、自分としてもチームとしても不安はあったと思うんですけど、スタッフが動けるように全力を尽くしてくれて、スタッフはもちろん周りの人にも感謝しないといけないなと思いました」
ー個人でもMVP受賞となりました。
「優勝してMVPを取るというのは自分としても思っていたので、取れて嬉しいです」
ー試合についてですが、出遅れましたが見事に挽回できましたね。あの場面は何が良かったのでしょうか。
「細かい話なんですが、最初は球出しがガードじゃなかったんですよ。その場合に、詰められると球出しをするのが少し遅れるんですね。それで自分が球出しすることにして。すぐにアジャストできたので、ずるずるいかなかった要因ですね」
ーそれはご自身で判断された?
「そうですね。最初にやられたことで監督に言って。自分なりに考えた末に実行しました」
ー途中からゾーンプレスを敢行しましたが、天理大のものとは性質の違うものだったかと思います。
「僕たちの目的は、前から潰すのではなく、ハーフコートバスケットをする時間を少しでも短くすることだったので、その点が天理とは違う性質です」
ー3Qではオーギル選手を使ったオフェンスが効きましたね。
「僕とオーギルのツーマンピックに対応できていなかったので、止められるまでやるぞと言っていました。それが3連続で決まって良かったです」
ーオーギル選手は少しフラストレーションを溜めながらのプレーもこの3日間の中で見られましたが。
「プライベートでもしっかり話すことが一番のメンタルケアだと思いますし、スタッフではなくチームメイトである僕が言う方が効果的だと思います。そういうことをしつつ、バスケのことでもコミュニケーションをとることで今日の結果に繋がったのかなと思います」
ー主将になってこれまでとの違いはありますか。
「去年まではチームを勝たせることにこだわっていましたが、今年は勝たせつつも色んな人に応援されるチームを目指しています。それに向けてチームにも意識づけを図っている感じです。今の京産を見ていたら分かると思うんですけど、楽しくやれているので、見ている方にも見ていて楽しいなと思ってもらえるようにやっていきたいです」
ー今年の目標はなんですか。
「今年は三冠を取ることを目標としているので、1個目を取れたことに慢心せず、またゼロからスタートする気持ちで西日本とリーグ戦に臨んでいきたいです」
「今年こそ優勝してやろうと思っていた」#10ヒシグバータル オーギル(京都産業大・3年・C)
ー大学では初めての優勝ですね。
「僕が入学してから準優勝ばかりで、今年こそ優勝してやろうと思っていたのでチームで勝てて良かったです」
ー3Qは大活躍でしたね。
「はい、あれは本当に気持ちよくて、陸さんからの合わせだったんですけど、めっちゃ良かったです」
ーアジャイ選手がオーギル選手について、アウトサイドのプレーをこなせるのが強みと話していましたが、その点はご自身も意識されていますか?
「それは意識しています。卒業した後もBリーグでプレーしたいと思っていて、僕よりもゴツい選手はいっぱいいるので、色んなプレーができるように、ということは意識していますね」
ーモンゴル代表での活動もありますが、そこで得られる経験も大きいと思います。
「その経験ができるというのは本当にすごいことで、去年の8月に召集された時はスタートで出してもらえたんですけど、今年の3月に呼ばれた時はフルメンバーが揃っている感じで出番も少なくて。でも試合に臨む態度とかも色々学べたので、良い経験ができました」
ー今大会での課題はなんでしたか。
「最初から自分たちで流れを掴めていない点は課題です。一個一個のプレーをしっかり作り上げていくことが大事だと思います。個人的には、やはり審判との関わり方ですね。何かあるとすぐにカッとなっちゃうので、西日本では文句を言わずに頑張ろうと思っています(笑)」
ーこの先に向けて。
「三冠を取りたいと思っているので、まずは西日本もしっかり勝ち上がっていきたいです」
「ディフェンスの強度はどのチームよりも高い」天理大#30小林京平(4年・主将・SG)
ー決勝は残念な結果でした。
「もちろん優勝を目指していたわけで、結果負けてしまったことは悔しいんですけど、まだまだ自分たちは完成していないので、次につながるものだったのかなと思います」
ープレスが効かずに苦しい展開になってしまいましたね。
「最初は昨日までのようにいい流れを作れたと思うんですけど、後半にかけて京産大も攻略してきてうまく引っ掛からなくなりました。そういう時にどうするのか、ということがまだ課題です。西日本に向けて修正していきたいですね」
ー大会で感じた収穫と課題はなんですか。
「ディフェンスの強度はどのチームよりも高いと感じました。今大会僕たち自身が自信を持って勝ち進んでいけた要因です。課題としては、細かなシュート力の部分ですね。最後の何点差がついた、といったことに響いてくると思うので、細かな部分ですが修正していきたいです」
ー苦しい状況で何本もアウトサイドを決めていたのが印象的でした。
「点差も開いてしまって、自分がチームを引っ張っていかないといけないということもあるので、入らなくてもしっかり打ち続けようと思って打っていきました」
ー主将という立場ですが、意識されていることは。
「自分自身は、プレーがうまくいかなかったとしても声をかけるとか、そういうことはできることだと思っています。プレーではなく姿で引っ張るというか。そういうことは意識しています」
ーその意識は、ここまで成果に繋がっていますか。
「自分で言うのもあれですけど、準々決勝と準決勝は点差を開けて勝てたので、チームを引っ張れたのかなとは思います。ただシュートの確率とかはまだまだなですし、細かいところでの声掛けとかはまだまだできるのかなと思います」
ーチームとして今年目指していることは。
「大きな目標としてインカレ優勝を掲げています。リーグ戦につながるように、次の西日本でリベンジして、タイトルが取れるようにしっかり頑張りたいです」