神奈川大の緒戦は幸嶋監督が「やっとうちらしい試合ができました」という試合になった。一昨年には1部リーグでもしのぎを削った明治大との、負けられない一戦。立ち上がりから流れを掴んでディフェンスで相手の攻撃起点を潰し、オフェンスでは#7東野のアタックや#87高木のアウトサイドが序盤に決まって14-4と波に乗った。そこからやや得点が止まったが、持ち味のディフェンスでは相手を波に乗らせないまま、逃げ切った。
昨年は試合数が少なかったとはいえ、練習試合をあわせても年間1勝、インカレ出場をかけたチャレンジマッチでも敗退してシーズン終了という不本意な結果に終わった。心機一転としたい今シーズンだが、ここまでは環境変化への対応に時間がかかった。大学のキャンパス移転に伴ってバスケ部の拠点がみなとみらいに移り、練習時間の制約もあって対応するのに時間がかかったからだ。それもあってか「今季も練習試合で勝てておらず、自分たちでも迷っていた」と主将の#3小針は言う。ではなぜこのようなパフォーマンスを披露できたのかというと、それはスカウティングの徹底と、皆の意識の統一だ。
「一昨日の明治大に対するスカウティングで、これ以上にないというほどディフェンスの徹底などについて話し合ったおかげです。それで流れを掴むことができました」
それだけ緒戦に向けて意識を高めていた結果だろうが、結果につながったのは4年生の集中も大きい。Aチームには#7東野、#87高木の3人しかいないが、「このままじゃだめだ」と話しあい、その結果、みんながついてきてくれたおかげで気持ちを一つにして試合に臨めた。試合の終盤、明治大の追い上げを断ち切るようなシュートを決めたのも、4年生たちだった。
「うちは幸い、去年試合に出ていたメンバーがそのまま残っています。だから難しかったのはプレーというより気持ちの部分の準備だけ。それを3日前のスカウティングきっかけに話し合うことができて、今日の試合での結果につながったんだと思います」
小針は今季、キャプテンを務めるが、既に2年時からゲームコントロールを担ってきただけに、役割や意識には大きな変化はない。幸嶋監督とも下級生の頃から長い時間話をする仲で、最近はその中でもバスケの話をする割合が増え、内容も濃くなった。
そしてそのような状況で今年掲げる目標は「神大らしさを取り戻すこと」だ。
「インカレのベスト4を目指し、全員で頑張りたいと思っています。それに必要なのは神大らしさ。神奈川大が1部に上がったときのような、うちらしいディフェンスをするチームになることが絶対に必要です。1対1で相手を完封できていた、あのときのような姿を取り戻していきたいです」
去年、チャレンジマッチで負け、申し訳ない形で4年生を引退させてしまったことが今も気になっている。だからその分スタメンとして出ていた「東野と自分はチームで一番、今年にかける思いも強いと思う」と感じている。
あの試合、小針は高校の先輩であった明星大の新田に破れ、好プレーを連発してゲームを引っ張った東野は誰よりも激しく泣き崩れた。
その悔しさを振り払い、最後に笑うために神奈川大の挑戦は続く。