1部リーグ最終日、優勝を懸けた一戦は東海大と日本大という、1敗同士の戦いで決まることになった。トーナメント決勝の再戦で優勝が決まる一戦であり、東海大が雪辱なるか、あるいは日本大がトーナメントに続き2冠を達成するかというところに注目が集まり、リリーアリーナMITOは観客席に入りきれないほど人が訪れた。
立ち上がりは日本大、その後すぐ東海大が流れを奪う
立ち上がりに素晴らしい動きを見せたのが日本大。開始早々バスケットカウントやシュートブロック、スリーポイントなどが続いた。しかし東海大は慌てなかった。#11大倉(4年・G)がチームを落ち着かせるようにスリーポイントを沈めると、そこから#八村(4年・C)と#11大倉で得点を重ねて追いつき、逆転。ディフェンスではトーナメントはインサイドで#12コンゴロー(1年・C・報徳学園)相手にファウルを犯し、やすやすと得点やフリースローを与えるシーンが目立ったが、同じミスを繰り返さず、ゴール下の守りを固める。逆に日本大はファウルが続き、攻撃でもタフショットとなって、簡単に得点できない時間帯が続いた。しかし1Qは19-21と差はわずか。
日本大の城間ヘッドコーチは会見で「立ち上がりが良かったように見えたかもしれないが、そうではない」と、コメント。トーナメントでは優位に立てたゴール下のプレーが1Qから封じられ、ディフェンスでやりたいことができていない立ち上がりとなっていた。
2Qになってその流れは顕著となる。日本大は「何をやるかを把握していて、中へ切り込めなかった」(#3米須)という状況になり、外からのシュートが多くなってしまう。東海大は#60坂本(4年・PG)が持ち味のディフェンスはもちろん、ドライブやフリースローを、#11大倉も欲しいところでのシュートを確実に決めていき、一気に引き離すと、30-44で前半を終えた。
3Qも東海大の優位は揺るがないが、日本大は#3米須(1年・PG・東山)が#15鴇田(3年・SG)へのスリーポイントをアシストし、また自らもスリーポイントを沈めて食い下がる。東海大も集中は切らさず、控えも己の役割を果たしてリードを保ったまま4Qへ入るが、日本大は#12コンゴローのスティール、#3米津の3ポイントで最後まで見せ場を作り、粘り強くプレーを続行。しかし東海大は動じずに最後までアグレッシブな攻守のパフォーマンスを出し続け59-77で試合終了。リーグ戦としては3年ぶり6回目の優勝を決めた。
春は自分たちの良さを発揮しきれていなかった東海大だが、同じ相手に見事に修正を見せた。コンゴローや#63クリバリ(2年・C)相手にファウルをせず、また、#11大倉と#86八村が要所で得点を重ねて流れを保った。
「ディフェンスで圧をかけられなかった」と口をそろえる日本大は、インサイドでも支配力が及ばず、自慢の足を出す展開がなかなか出ない、もどかしい試合だった。米須が6本のスリーポイントを決めたが、本来ならば彼を起点にパスをさばいて攻撃を組み立てたかったところだろう。
東海大、日本大ともにチームとしての成長を感じた1ヶ月
1敗というつまずきはあったものの、安定感のある戦いを見せた東海大はさすがだった。春は調子が上がらず、「コンディションが悪いままやっていた」という#86八村が27得点の鮮やかな活躍を見せ、ペリメーターの確率も良かった。また復帰した11大倉は22点、スリー4本、5リバウンド、2アシストを記録。バランスよくパフォーマンスが発揮され、チームに自然な流れを生み出し、#5河村のコントロールと重ね合わせることでバスケットのリズムがグンと良くなった。それでも「できなかったこともある」という会見での言葉には、妥協のなさを見せた。またMVPを獲得した#23佐土原は、リーグ序盤を怪我で欠場したものの、復帰後は安定度の高いプレーでチームを支えた。ディフェンスでは「自分の仕事」という大きな声を出し続け、チームを鼓舞する姿も印象的だった。他にも#60坂本や#31松本、主将の#20伊藤など、6人の4年生の経験値と、そこから生み出される安定感は大きく、ベンチメンバーのパフォーマンスも後半に向かうにつれて良くなった。
一方、2冠とはならなかった日本大だが、リーグ戦で崩れなかった勝負強さは、今年のチームの大きな魅力だ。1敗した後も引きずらず、後半にかけて試合の中味も良くなった。今季はこれまで試合経験の少なかった選手たちが大きく成長したことも見逃せず、しかも下級生たちが中心のチームだけに、先の楽しみは大きい。城間ヘッドコーチはチーム全体のレベルアップに称賛を贈る。「リーグ戦では控えの戦士たちがトーナメントよりも頑張ってくれた。今ではスタートと控えのメンバーは、それほど力が変わらないほどのレベルまでチーム力が上がっている。みんなが頑張ってくれたが、中でも鴇田(#15)はトーナメントから非常に努力を重ねて、このリーグ戦では力をつけてそれを発揮してくれた。その部分は目を見張るものがあると感じている」という。チーム作りに取り組んだ主将の若林と4年生の働きあってこそだが、伸びしろを存分に見せてくれた、次も期待できるリーグ戦だった。
東海大学記者会見
陸川章監督
「コロナ禍の中、大会を運営していただき、無事終えることができたこと、関係者の皆様に大変感謝しています。試合の方は大倉が怪我で最初はいなかった中、チームが一丸となって、よくつないでここまできたなと思っています。大倉はプレータイムの制限がありますが、最後に戻ってきてチームが一つになって戦えたことがすごく嬉しいです。春のトーナメント決勝で負けた日大さんにリデュームできたことも嬉しいです」
#20伊藤 領(4年・PG・主将)
「まずリーグ戦を開催できた事にすごく感謝していて、その中でチームとしては一試合一試合、1か月間成長が感じられるような試合ができたので良かったと思っています。それぞれの試合で課題が出てくる中、次の試合までに課題から目を背けず、修正できたところが良かったかなと思っています」
#86八村阿蓮(4年・C)
「リーグ戦の試合を通し、チーム全体で全員が成長できた結果がこの優勝だと思います。僕たちの目標はインカレ優勝なので、そこに向けてまた一からしっかりと向かっていきます」
#11大倉颯太(4年・G)
「目標をぶらさずに、みんなで追求してきたことに対して、エクスキューションできたところもあれば、できなかったところもあります。いいも悪いも本当に差が出たリーグだったと思います。これからやるところは明確になったかなと思うので、気持ちを切らさずにインカレ優勝に向けて頑張っていきたいと思います。細かい課題はいっぱいあるけれど、ゲームを進めていく中でアジャストする力を、チームとしてもっと高めていかないといけないなと思っています。
個人としては、今日は思い切ってプレーできたところで数字もついてきたと思います。他のプレイヤーに僕がさせてもらえた、というところでもあるので、そこは本当に感謝をしたいです」
#23佐土原遼(4年・PF)
「率直な気持ちとしては、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいです。(大倉)颯太がよく言うんですが、圧倒するチームにならなければいけないということで、リーグ戦は大東文化に1敗してしまったので、そこでわかったことも、改善もあると思う。インカレで連覇するためにそれを克服して2連覇したいと思います」
◆ディフェンスでよく声が出ていたことについて
「去年のインカレの時も、自分がディフェンスのときに声を出していました。今年は夏合宿が始まる時に陸さんに、自分が声を出すことでディフェンスの士気が高まり、圧も違うから声を出して全部カバーするぐらいの気持ちでやって欲しいと声をかけられ、意識してやるようになりました。やってみてチームとしても良い方向に進んでいたので、全試合やり続けた結果が、全体を通して失点が少なかった原因の一つでもあるのかなと思っています。声を出すことは自分の仕事なので続けたいです」
#5河村勇輝(2年・PG)
「言うことは同じになってしまいますが、東海大としてこの1か月間毎試合成長しようと目標を掲げ、優勝したことがとても嬉しいです。本当に毎試合成長をチームとして感じられたので、この勢いでしっかりとインカレも連覇できるように頑張っていきたいと思います」
日本大学記者会見
城間修平ヘッドコーチ
◆リーグ戦について
「トーナメントを優勝してリーグ戦に入りましたが、このリーグ戦は初めから少しチームとして乗りきれていない雰囲気がありました。そこで学生たちがもう一度自分たちのバスケットをやろう、楽しくバスケットをやっていこうと気持ちを切り替えてくれたおかげで、少しずつ調子が上がっていきました。最終戦の東海さんには勝てませんでしたが、チームとしてはレベルアップしてこのリーグ戦を終えることができたと感じていま
◆最終戦の東海大戦について
「最初は得点が入って先行していたように見えましたが、ディフェンスの部分では我々が今までやってきていることができていなかったんです。自分たちで相手を動かしていくこととか、自分たちのやりたいディフェンスができていなかったかなと思います。それが40分間続いていて、逆に相手はやりたいことをやっていました」
#74若林行宗(4年・SF)
◆リーグ戦について
「最終的に準優勝にできたということはいい方向に捉えて、悪いところはもう一度しっかり反省してインカレに臨みたいと思います」
◆最終戦の東海大戦について
「ゲームの入りのところから、自分たちが強みとしているディフェンスから走るというところがあまりできていなかったと思っています。速攻の本数も他のゲームに比べると極端に少なかったと思いますし、東海大学さんはそこを抑えに来ていたと思います。そこで対応する力がまだ足りなかったのかなと思います」
#22飯尾文哉(3年・PG)
◆リーグ戦について
「今回2位という結果になってしまいましたが、チームとしてはトーナメントの時よりもディフェンスの仕上がりは良くなっていると思います。今日の東海戦の負けを活かし、インカレに向けてまた練習していきたいと思います」
◆最終戦の東海大戦について
「個人的には、トーナメントに比べたら自分のマークマンが圧力をかけてディフェンスをしてきていたと思います。そこをいかに崩せるかが次の自分の課題だと思うし、課題が見つかったという意味で前向きに捉え、インカレに向けてもう一度練習したいと思います」
#6野口侑真(2年・SF)
◆リーグ戦について
「トーナメントに比べると、チームとしては波がなくなってきているのかなと感じます。ディフェンスでつないで、そこからリズムを作っていくということをここまでやってこられました。今日は負けてしまいましたが、チームとしてはレベルアップできているので、またインカレに向けて頑張りたいです」
◆最終戦の東海大戦について
「自分はプレーとは少し違う話ですが、東海大さんが10点差をつけてリードをしている時に、自分達はベンチも含めてコートでも喋れておらず、雰囲気的に沈んでしまっていました。これまでリードされるという状況があまりなかったので、そこで気持ち的に下がってしまっていたのかなと思います。誰が声を出すとかそんな役割はないのでしが、みんなで声を出してもっと盛り上げていけば、食らいついていけたのかなという風に思います」
#3米須玲音(1年・PG・東山)
◆リーグ戦について
「リーグ戦は結果的に準優勝で終わったんですが、最終的にチーム力が上がったと感じています。それをしっかりインカレで発揮して、インカレでは日本一を取れるように頑張っていきたいです」
◆最終戦の東海大戦について
「前半は自分たちがディフェンスで圧をかけられなかったのが課題かなと思っています。後半はしっかりそれをやって追いつく展開が理想的だったんですが、そこでまた気の緩みがあって離されたのが課題です。自分としては前半の1Qのところで自分から積極的にディフェンスで圧がかけられなくて、チームの勢いに乗らせることができなかったなと考えています。でそこはインカレでは自分から積極的に仕掛けていきたいです」
#12コンゴロー デイビッド(1年・C・報徳学園)
◆リーグ戦・最終戦の東海大戦について
「今日の試合は準優勝に終わってしまいましたが、ディフェンスのコミュニケーションがあまりできていなかったように思います。今日は自分たちのプレーはなかなかできていなかったと思うんですが、メンタルもあまり良くなかったなと思います。相手は自分たちのプレーに対してよく準備していたと思います。まだインカレもあるのでしっかりチームで一生懸命練習して、インカレで修正します