今季は喜ばしい復活が多いが、その一人が早稲田大の主将・津田だ。昨年は怪我のためにほとんどプレーは叶わなかった。その代わりベンチで声を出し、皆を鼓舞していたが、今年はそれをコート上で行っている。6月27日に行われた早慶戦でもリバウンドに跳び、またチームに声をかけて盛り上げた。
ここ数年、能力豊かな下級生が増えてきた早稲田大。オフシーズン中にはBリーグの特別指定選手として経験を積んできた選手もいる。津田も個々の能力の高さは頼もしいと感じているが、その反面、今季に足りないのはまとまりだ。
「今年は従来の早稲田より大きく、身体能力の高いチームです。でもその分、徹底ができてないところがあります。つまり、可能性は大きいけれど、まとまりを作るのに時間がかかるチームといったところでしょうか。でも勝つためには、団結力に対するアプローチは絶対に必要だと思っています。バスケットはチームスポーツなので、一体感、みんなが一つの目標に対してベクトルの向きを合わせないと、強いチームにはなれません」
まとまりのためのアプローチの一つは、声かけとして表現されている。元々コートの上では熱い選手だが、主将となり、さらに与える影響は大きくなっている。少ない4年生を代表するという責任もある。
「宮本(#7)が怪我の今は、コート上で戦える4年は自分だけです。だからこそ、自分がしんがりで声を出すことが大事だと思って、出していますね。外からは大人しく見られることは多いんですが、バスケが始まると気分が高揚して声が出ています」
アプローチはプレーからも感じられる。人が密集した場所でも高い跳躍力を活かしてリバウンドに飛び込み、身体を張る。その恵まれた身体能力は、華やかなプレーよりもどちらかといえば泥臭く、数字に現れない場所で発揮されることが多い。接触することを恐れないというのは、人に勇気を与え、また信頼を厚くもする。ただ、ここまで怪我が多いからこそ、「怪我しないことを念頭に、バランスも考えて動いている」という難しさだ。しかし、ここぞという場面に、怪我を恐れて飛び込まないという選択肢は、もちろん津田の中にない。そしてこの先対戦するであろう1部の強豪相手にこそ、泥臭いところを見せなければ勝利を引き寄せることは容易ではないとも考えている。
「自分のアグレッシブさがチームにいい影響を与えているのであれば、それは続けていくべきことです。自分たちより大きな相手、強い相手に対しては派手じゃないプレーを頑張らないと勝てません。僕としてはルーズボールに飛び込んだ回数が勝利に直結すると思うので、そこに関しては頑張りたいと思っています」
キャプテンとして、掲げるのはチーム一丸となることだ。過去は目標が先走りし、そのために必要なステップが欠けていた。そこに前述のいかにまとまれるか、が課題になってくる。
「今年は全員の意見として、チームで勝ち、チームで負ける。チーム一丸となって勝敗を決めたい。誰かのせいで負けたというチームにはなりたくないんです。個性が強くてまとまりづらいけど、そのぶつかり合いがチームを形成する要素にもなっています。そこには今までの早稲田では味わえない楽しさがあると思います」
理想のチーム像にどうやって近づいていくのか、今年の早稲田大はその課程を見ることに醍醐味があるだろう。そして、その先頭を走る津田のパフォーマンスと主将としての手腕にも期待したい。