スタメンの平均身長190cmを超える専修大相手に、小兵である井手が躍動した。フル出場で20得点、アシスト2、リバウンドも2つ獲得。特にドライブとスリーポイントでは欲しいときに確実に決めたことは大きかった。逆転勝利は大きいが、本人の理想の展開とは別だ。
「本来は前半リードして粘って勝ちたかったんですが、専修は強かった。でも全員がここで頑張ると声をかけて我慢できたから勝利につながりました」
4月半ばに行われた日筑戦では出だしこそ良かったものの、後半突き放された。そこからここまで、反省を元に修正してきたが、気持ちの問題も大きかったようだ。
「練習の雰囲気や取組む意欲がゆるかったことがあのとき負けた原因です。1ヶ月前くらいに選手だけでミーティングを行い、そこで気持ちを入れ替えないと絶対に勝てないと話し合いました。そこから皆の気持ちも変わったし、練習もハードにやれるようになったんです」
ガードの#23小川も、同様に「日筑戦からこの2ヶ月しっかりチームの持ち味を磨けたと思う。早く試合はしたかったけど、延期の期間をさらに成長に使えた」と前向きに捉えていた。本来のトーナメントはまだチームが固まりきらない5月に開催されるが、延期の期間にコミュニケーションや取り組みを強固にできたことは、マイナスをプラスにできたという面で大きいだろう。
主将の井手は、これまで数々の悔しい思いを経て、4年目を迎えた。直近での悔いといえば、昨インカレの近畿大に対する敗戦だろう。自身の5ファウル退場のあと、チームは逆転され、敗戦した。「絶対に勝てる試合を、その先のことを考えすぎて目の前の相手を見ていなかった」と、忘れられない経験になった。だからこそ、の思いが今年はある。
「今年は自分が引っ張っていかなければいけない立場になったので、負けるという気持ちを振り払って、絶対に勝つという気持ちで毎日練習して、大会に臨みました。緒戦から相手がどこであろうと自分たちのバスケットを徹底してやろうとしていて、そして専修大にも勝ちました。やってきたことを今大会のすべての試合で出せています」
気持ちが強いからこそ、これまでは空回りも、うまくいかないときのフラストレーションも大きかった。だがそれを乗り越えていかなければ勝てるチームにはなれない。
「今年はだいぶ自分の中でも成長できたと思っていて、苦しい場面でも自分をコントロールして、プレーや審判に対するイライラも制御できるようになってきました。そしてそんな状況を我慢するよう、皆にも声をかけていけるようになったというのは、自分の成長部分だと思います」
リーダーとしての自覚が、自分を支えている。今年は自身の兄のときと同様、コートに立つ4年は一人。しかし「4年は少なくても、こういうときの方がいい」と、前向きだ。おそらく、負けず嫌いの心に火がつくのだろう。そんな闘争心あふれる姿も、魅力の一つ。頂点を目指し、必死に戦う姿を目に焼き付けたい。