1年間の集大成であるインカレに向け、関西でも2ヶ月間の日程でリーグ戦が行われた。新興勢力の台頭も著しい関西だが、今年は春から京産大や天理大といった以前からの強豪校の強さも目を引いている。地殻変動が続くのか、伝統校の巻き返しはあるのかにも注目の集まる大会となった。
- 神戸医療未来大をかわした京都産業大が頂点に
- 「京産のキャプテンという重圧を感じつつ楽しめた」京都産業大#9・宇都宮陸(4年・主将・PG)
- 「優勝できて素直に嬉しい」京都産業大#12太田凛(1年・SG・大阪学院大高)
- 「日本一に向かってやっていくだけ」神戸医療未来大#39中村瑞稀(4年・PG)
- 「良い終わり方ができるように残り期間もしっかり準備する」天理大#30小林京平(4年・主将・SF)
- 「もう一回関西のナンバーワンは自分だと証明したかった」関西学院大#6山際爽吾(4年・主将・PG)
- 「相手の強さに関係なく、いかに自分達のバスケットができるか」関西大#89佐藤涼真(4年・主将・PG)
- 「もう一度強い大阪学院にしないといけない」大阪学院大#14植田碧羽(3年・PG)
神戸医療未来大をかわした京都産業大が頂点に
トップを争うこととなったのは神戸医療未来大と京都産業大。12チームが総当たりで対戦する1巡目の前半の段階で、無敗の神戸医療未来大を1敗の京産大が追う展開となった。3位以下がこの時点で2敗以上を喫しており中盤にはこの2チームに優勝争いが絞られた。迎えた大会8日目の直接対決では、京産大が神戸医療未来大を下し、星を並べる。このまま並走するかと見られたが、1巡目最終日に神戸医療未来大は天理大に敗北。序盤戦で関西学院大に敗れたのを除けば総じて安定した戦いぶりを見せていた京産大が、この時点で単独首位となった。
上位・中位・下位4チームに分かれて総当たりを行い最終順位を確定させる2次リーグでは、ともに2連勝発進となったが、最後の直接対決では京産大の強さが際立った。逆転優勝のためには12点差での勝利が必要な神戸医療未来大を嘲笑うかのように、立ち上がりから相手を圧倒。前半の段階で試合を決め、全関に続く2冠目のタイトルを手にした。
インカレ出場枠が6つの関西で、中位争いは例年同様もつれた。春シーズン2回の準優勝の天理大と、2連敗発進から巻き返した関西学院大は順調に白星を重ねて上位リーグに食い込み1巡目の段階で4位以上を決めたが、中位リーグは1部復帰初年度で存在感を見せた関西大を除き、1巡目終了時点で5勝6敗で並び、最終着地が見えない状況に。関西大が3連勝で5位を決める中、最後の切符は直接対決で同志社大を破った大阪学院大が掴んだ。
「京産のキャプテンという重圧を感じつつ楽しめた」京都産業大#9・宇都宮陸(4年・主将・PG)
入学初年度こそインカレでベスト8入りを果たしたが、その後は関西でもなかなか優勝に届かず、悔しい思いを何度も味わってきた。満を持してキャプテンとなった今季は全関で久々の優勝。タイトルを逃し続けてきた鬱憤を晴らした。このリーグ戦でも、京産大の中心として華麗なプレーを見せ続けた。関西学院大に敗戦を喫したが、総じて安定した戦いぶりができたのは彼の存在なしには語ることができない。この先、自身としては更に上のステージでの戦いを見据えつつ、京産大のメンバーとしてプレーできるのは残りわずか。関西を代表するフロアリーダーとして、東京で再び存在感を示したい。
ー優勝おめでとうございます。
「最後の年で思いも強かったし、ここ数年は優勝できなくて悔しい思いをしてきたので、それを自分達の代で優勝して晴らせたのは嬉しかったです」
ー全関の優勝と違いはありますか。
「今回は我慢できたゲームが多かったなと思います。相手の流れの時間が多かった試合でも自分達のペースを乱さずにゲームを運べたことが勝利につながったかなと思っています。今年は我慢できた年だったなと思います」
ー関西学院大に敗れた時は、不安などはよぎりませんでしたか。
「受け身になってチャレンジャーになっていなかったのが一番の敗因だったかなと思います。どの相手でも受けて立つのではなく、チャレンジャー精神を持ってやっていくことが大事なんだなと感じました」
ー関西学院大の山際選手や、神戸医療未来大の板敷選手とのマッチアップに注目していた方は多いと思います。
「そうですね。その2人だけでなく、他のガードの選手には負けたくないという思いがあったんですけど、ここまで切磋琢磨してこれて良かったです。普段から2人とは仲が良くて、将来は上のレベルも目指している存在なので、この先も一緒にやっていけたら嬉しく思います」
ーリーグ戦で見えた課題は?
「一つひとつのプレーの遂行力が弱い部分があります。勢いに乗った時は良いんですが、セットプレーの遂行力があればもう少し安定した試合運びができたと思うので、そこは突き詰めていけたらと思います」
ー関西1位でインカレに向かうのは3年前と同じです。当時のチームと今のチームの違いはありますか。
「勢いに乗った時の強さや全員の力というのは上だと思うんですね。一つひとつのプレーの重みを共通理解してやっていけたらもっと強くなっていくと思います」
ーまだインカレがありますが、京産大の主将という立場はやってみていかがでしたか。
「京産というのは常に上位にいるチームで、そういうチームのキャプテンというのは重圧でした。ただ、それを感じつつ楽しめないとついてくるものもついてこないと思うので、自分としては楽しめたなという思いが強いです」
「優勝できて素直に嬉しい」京都産業大#12太田凛(1年・SG・大阪学院大高)
京産大期待のルーキーは、初年度の関西最後の大会で新人賞を受賞。軽快な身のこなしからのアウトサイドを高確率で決めていき、リーグ優勝に貢献した存在だった。インカレでも持ち味を発揮できるか。
「優勝できて素直に嬉しい気持ち。3Pの部分はもちろんそうだが、このところはドライブからの得点も出るようになって、手応えを感じている。一方で、ディフェンスの部分と、フィジカル面ではまだまだ課題があると思っている。
入学直後は遠慮して引いてしまう部分もあったが、最近はそういう部分も無くなってきている。先輩からもどんどんやっていけとプラスになるような言葉をかけられている。関西では通用したことがインカレでは通用しなくなってしまう部分もあると思う。そこに関してはどんどん相手に挑戦していきたいと思う」
「日本一に向かってやっていくだけ」神戸医療未来大#39中村瑞稀(4年・PG)
PG登録ながら、類い稀なスコアリングセンスを誇り、この大会でもその能力を遺憾無く発揮。神戸医療未来大の中心として、最後までチームを牽引し続けた。ただ、年を追うごとに自チームは戦績を上げていった印象だが、手にしたタイトルは昨年は全関のみという結果には悔しい表情を見せる。インカレの目標は優勝だと言い切り、視野は高い。このチームで最後の戦いとなる全国の舞台で、虎視眈々と上位を狙っている。
「最後の大敗は、12点差での勝利が必要だということでプレーも重たくなってしまったのかなと思う。こういう展開を自分達で修正することが自分達の課題。インカレに向けて修正していけたらなと思っている。
インカレに向けて4年生がリバウンドやルーズボールといったところで、泥臭さを示すことはできたかなと思う。ただ、関西で取れたタイトルは去年の全関西だけになってしまい、1年生から試合に出させてもらって、この大会は関西では最後なので優勝したいと思っていたので、悔しさがある。トーナメント方式の大会では勢いで勝ち上がっていけるが、リーグ戦では次の相手も決まっていて、相手にとってはスカウティングしやすいかなと思う。
このリーグ戦を通じて、留学生以外のところでのリバウンドやコンタクト面に課題を感じた。そこを修正していけたらなと思う。日本一を目標にしているので、それに向かってやっていくだけだと思っている」
「良い終わり方ができるように残り期間もしっかり準備する」天理大#30小林京平(4年・主将・SF)
惜しくも優勝には届かなかった春の天理大。更なる上積みも期待されたが、それとは裏腹に3位という結果に、主将の小林も歯がゆさをのぞかせる。これまで大学界では異端のスタイルを誇っていたチームは、岡田コーチの下で変貌したバスケットを見せている。その変貌を、進化した姿だと示すために、インカレでは巻き返した姿に期待したい。
「1巡目で大事なところで負けたりしてしまい、チーム的に苦しい時期もあった。今年の天理はディフェンスをベースにして結果が出せてきていると思う。苦しい展開はあるが、ディフェンスの強度は落とさずに、ということはチームとしてのルールだと思っている。
負けた試合に関しては、オフェンスが上手くいかないことをきっかけにしてディフェンスにもその悪循環が影響していたと思う。まだそういう時に立て直す力というのがないなと感じる。リーグに向けての準備の部分で悪かったと思うことはないが、試合の中では色んなことが起きるので、そこに対応できなかったのは自分達の甘さかなと思う。どのチームも未完成だった春は、そういう時はディフェンスさえ頑張れていれば良い結果に繋がったと思うが、秋はどのチームも仕上げてくるので、それに僕達も対抗していかないといけない。そういう状況で、自分達で立て直していくことができないといけないと感じたし、そういう部分がインカレでも重要になってくると思う。
京産も神戸医療も、オフェンスの力がすごくある。自分達はディフェンスが持ち味だが、一方で点を取れないと勝てないので、その部分は2チームの方が力があるのかなと思う。残り期間も少なくなるが、楽しんでやることはもちろん、まず自分達のやるべきことをしっかりやった上でゲームを楽しみたい。良い終わり方ができるように、残り期間もしっかり準備していきたい」
「もう一回関西のナンバーワンは自分だと証明したかった」関西学院大#6山際爽吾(4年・主将・PG)
序盤いきなり2連敗スタートとなった関西学院大だが、それを糧に逆襲に成功。優勝した京産大を下すなどして中盤は順調に勝ち星を重ね、1巡目終了時点でインカレを決めた。主将とな理、名実ともにチームの中心となった山際がこのチームの核であることは衆目が一致する。3年ぶりのインカレで、関西を代表するガードとして恥じない戦いを示せるか。
「インカレでは強力な留学生のいるチームとも当たることになるので、そういったチームにも勝ち切るというテーマを持ってやっている。うちのインサイド陣が、不器用ながらもしっかり体を張ってくれて、ガード陣が後ろを信じて前からプレッシャーをかけていって、相手の嫌なことをやれている。勝てると思っていたところで連敗して雰囲気を落ちかけたが、4年生が、3試合目を初戦だと切り替えて。最初の連敗が気持ちを切り替えられた一番大きなポイントだった。それをプラスに捉えられた。ディフェンス面では怪我人が復帰してきて前からプレッシャーをかけることでディフェンスからオフェンスへの切り替えを、試合の中で出せるようになった部分が良くなったかなと思う。
しんどいときやもう一歩頑張らないといけない時に、チームメイトにフォーカスして声を掛け合ったりとか、そういうメンタル的な面を意識した。バスケットでは全員でアタックすることを意識した練習をしてきた。1巡目に京産に勝てた試合などではそれが表現できていたと思う。
自分がキャプテンとしての期間がというよりも、周りの4年生の存在が大きいのでこのチームでやれるのが残り少ないという意識が強い。自分は2、3年の時に結果が出せなくて、一方で宇都宮、板敷といった2人は結果を出していて悔しい思いだった。その中でもう一回関西のナンバーワンは自分だと証明したかった。今年はその悔しい思いを晴らせたので、彼らの存在は大きかった」
「相手の強さに関係なく、いかに自分達のバスケットができるか」関西大#89佐藤涼真(4年・主将・PG)
実に9年ぶりのインカレ出場となる関西大。昨年は2部を戦ったが、1部に復帰したばかりとは思えない戦いぶりだった。インサイド、アウトサイドともにメンバーが充実し、バランスの良さが際立つ。関西以上に強度の高い全国のチーム相手に、関西で磨いてきたバスケットがどこまで通用するか、必見だ。
「優勝を目指していたので5位というのは悔しい。ただ、インカレ出場を決められたのでは良かった。自分達はオフェンスよりもディフェンスのチームだとチームの中でも話していて、ディフェンスから作っていくのが持ち味だが、どのチームを相手にしてもそういう自分達のバスケットが遂行できたとは感じる。試合の中でその遂行ができていない時間帯にミスが続いてしまったところは反省点だと思う。
夏の関東遠征で体の強さや決定力の違いというのを感じてきた。それをリーグに生かしていこうと準備をしてきたが、インサイドの2人(岩本、倉ノ下)が成長してくれた。
自分達よりも強いチームが相手になると思っているが、相手の強さに関係なく、いかに自分達のバスケットができるかが重要。それを遂行した上で、勝利という結果がついてきてくれれば、と思う。インカレに向けて、この1年やってきたことをさらに磨いていこうと思っている」
「もう一度強い大阪学院にしないといけない」大阪学院大#14植田碧羽(3年・PG)
下級生が主体ながら、全関でもベスト8入りするなど、限られた面々で確かな戦績を残してきた今年の大阪学院大。3年生中心のチームでもまとまりの良さが見え、中盤戦の苦しい時期も見事に乗り越えた。勝負どころで冴えたのは植田のアウトサイドシュート。小さい体から積極的に狙っていき、大事な一本で何度もチームを救ってきた。今年最後の大会でも、強敵相手に持ち味を存分に発揮したい。
「1巡目では6連敗もあって、さすがにそこではチームとしても落ち込む部分があった。4Qに気持ちが引いてしまい、相手にリードを逆転されることが多かった。そういう時はディフェンスを頑張って、リバウンドを取って、という自分達のバスケットをするしかない。自分としてもチームにそういうことを言い続けてきて、1巡目最後の体大戦ではチームがそれを体現できたと思う。東京のコートに立ちたい思いも強かったので、ここまで全員で繋いでこれた。
自分自身が元々チームメイトに対して指摘をしていくタイプなので抵抗はなかったが、これまではプレーで示すことに力を入れていたので、どう声をかけたらみんなが同じ方向を見てくれるかを考えながらやってきた。自分はそういう気持ちを持って言い続けないとダメだと思っていたので、練習中でも雰囲気が少しでも悪ければ集合して喝を入れるという行動は積極的にやるようになった。
この身長で、スタートで出て活躍するにはどうしたらいいかを小さい頃から考えてきて、ディフェンスでも負けてはいけないし、点を取って存在感を示さないと、いつ出られなくなってもおかしくない。ただ、気負いすぎるのも良くないので、普段は目立つのはそんなに好きではないが、バスケットをすることに関しては、相手の観衆が多くても、それを自分の観衆に変えてやろうという思いがある。見ている人を楽しませたい気持ちもあるので、そのためには自分がハッスルしないといけないし、大きな声を出したり、重要なところで決めないといけないと思う。チームのOBにも偉大な選手がいて、それも伝統になっているので、もう一度強い大阪学院にしないといけないと思っている」