日本体育大のリーグ最終戦、第11戦は筑波大との伝統の日筑戦となった。ゲームを通して筑波大がややリードする展開だったが、日本体育大は最後の最後に#28井手(4年・PG)のスリーポイントで同点に追いつくと延長戦ではその勢いを切らさずに勝利した。日本体育大はこの結果により5位に浮上してリーグ戦を終了。筑波大に対し、2019年のリーグ戦以来の勝利をもぎ取って、大会を締めくくった。
全11試合は日本体育大らしい試合もあったが、後半にかけてはあまりパフォーマンスの良くない試合もあった。特に、第9戦となった日本大戦は91-50の大敗となり、周囲も驚くほどだった。
主将の井手としても大いなる反省点といえよう。しかし、改善をはかる努力も行った。
「正直リーグ戦後半になるにつれ、チーム状況が少し良くない状態になっていっていました。スタートメンバーの中でも食い違いがあったり、試合に出ている人、出てない人の中でも温度差があったり、そういう部分が次第に出てきていました。その状態でなぁなぁのままやってしまった結果、第9戦の日本大戦はああいう試合になってしまったんです」
その後にはミーティングを行い、それぞれの思いの丈を話し合ったという。
「リーグ戦は自分が2年生の時に似たような感じになったことがあるし、そういうことはあるものだとも思っています。それについては自分の経験も話しました。そうやってみんなで話しあって解決できたと思うし、チーム力を上げることにもつながったと思います。おかげで昨日の試合と今日の試合にはちゃんと入れて、今日の筑波戦も試合に出ている人だけじゃなくて、ベンチも応援席も含めて試合に打ち込めました。だから最後はああいう結果になったかなと思います」
チーム競技の常として、気持ちの食い違いやぶつかり合いは日常的に起こるものだ。だが、チームの目標自体は誰しも同じはず。その共通目標を元に積極的に関わり合い、コミュニケーションをはかることで、打開はできる。井手たちも話し合うことで「インカレに向けてうまく持っていけるような流れになったし、最終戦にこういう勝ち方もできたので、インカレはいい形で入れると思う」と、皆が再び前向きになり、それがチーム力向上にもなっているという。
コミュニケーションをはかることで、改善とチーム力強化につながったのが一つの収穫だとしたら、課題はどうだろうか。プレー面では、ゲーム後半の体力、チームとしてのリバウンド、そして自分自身のプレーが鍵だと井手はいう。
「自分たちスタメンが出る時間が長いので、後半で足が止まってしまうところがあります。そのおかげで3クォーターに離されることもあるし、特に白鴎大戦は自分のところにべったりマークにつかれ、何もできずに負けてしまいました。自分が得点源であることはほかのチームもわかっているので、インカレでも自分の所を押さえてくると思います。そこで自分がそのディフェンスに負けずに、強気で仲間を活かしたり、自分で攻めたりしていければ、特に怖いところはないかなと思います」
チームの攻撃の起点は井手、そして#23小川(2年・PG)のガード陣だ。その強みをどんな状況でも発揮しなければ、という強い思いがある。見る側としても、ディフェンスの壁がどんなに厚く、高くても、ひるまずにゴールに向かう井手のプレーは、心を熱くするものがある。いいプレーをしたときも、ミスになってしまっても、その豊かな表情から感情がダイレクトに伝わってくるのも大きな魅力だ。
そんな熱いプレーの原動力になっているのは、「絶対に負けたくない」という、負けず嫌いの心にほかならない。
「もう本当にそれだけです。負けるか、という気持ちでやっています。そこは本当に自分の長所じゃないかなと思います」
下級生の頃は自分をうまくコントロールできず、悔しい想いもしてきた。しかし4年目の今季は、トーナメントからその強気がいい方向に働いているプレーが多く、本人にも手応えがある。この先のインカレでも、その長所を最大限に発揮して勝利をもぎ取るだけだ。そして同じガードの小川とも息が合えばさらに強い、と自信を持つ。
「インカレは絶対優勝します!」
井手が見ているのは常に変わらず、ただ前だけだ。