第95回の男子のインカレは、これまでにない新しい流れで行われている。
1週間を使い、ベスト4までを決定。女子との共催となる準々決勝は、2試合ずつ2日間に分かれて国立代々木競技場第二体育館(東京都渋谷区)で開催。また、準決勝・決勝は翌週末、オープンハウスアリーナ太田(群馬県太田市)にて開催する。
9日は左ブロックの2試合の準々決勝が行われ、白鷗大(関東1位)と筑波大(関東7位)が決戦の場、オープンハウスアリーナ行きを決めた。
激しいディフェンスの応酬から、白鷗大が粘る大東文化大を下す
白鷗大と大東文化大は、関東大学界を代表するディフェンシブチーム。両者の戦いは互いに得点を入れさせないロースコア展開となる。激しいディフェンスだからこそ、リスクもある。大東文化大は1Qで#34バトゥマニ(4年・C)、#21富山(3年・PF)が2ファウルとなり苦しい展開。しかし白鷗大も簡単にシュートは決まらず1Qは14-11。
2Q、白鷗大は#20根本のドライブ、#36ポーグ(3年・PF)のスリーポイントが決まる。大東文化大は#34バトゥマニが3ファウルになり、#39アブドゥレイ(2年・C)に交代するが、フリースローを得ていくものの確率が上がらない。この間に#22内藤(1年・PG・明成)のシュートに、#71嘉数(4年・PF)のソッコ言うが決まった白鷗大がリードを広げ、前半は30-23。
後半、大東文化大は#4菊地(4年・SG)が出血で一時ベンチへ。ここで#3塚本(2年・PG)が連続でゴール下へ切れ込み3点差に迫った。白鷗大は#36ポーグのスリーポイントが入ると直後にプレスを仕掛けるが、大東文化大は#10菅原(3年・SF)がバスケットカウントのゴールを決め、こちらもプレスで仕掛け返す。しかしこの流れを白鷗大は再び#36ポーグのスリーポイントで断ち切り、#5小林(4年・PG)の速攻も決まる。大東文化大は#10菅原のスリーポイントで44-41として4Qへ。
勝負をかけたい大東文化大だが、4Qの立ち上がりに4連続のファウルをコールされてしまう。白鷗大はここで#2脇(4年・SG)会心の速攻も決まり、差を開く。大東文化大は粘るがこの日はスリーポイントが来ず、点差を縮める決定打が出ないままタイムアップ。61-51で白鷗大が準決勝進出を決めた。
白鷗大は点が止まる時間帯もある中で、#36ポーグ4本、#4佐伯3本をはじめとするチームで11本のスリーポイントが効いた。
大東文化大は試合の序盤から続いた主力のファウルトラブルで、プレッシャーを背負いつつの戦い。本来のスタメンである#9田中(2年・PF)、#25山内(3年・SG)を欠き、#4菊地が怪我のある中での戦いだった。内容を見ればずっと苦しい展開だったが、それでも途中の点差はほとんどついていない。これこそこのチームの底力といえる。#4菊地は2週間前に捻挫し、この大会には痛み止めを打ちながらのプレーとなった。自分含め、コンディションが万全で大会に入れない状況は悔しかったに違いない。しかし足は「コートに立てただけでも奇跡」という状態だった。それでも最後までディフェンスと攻めの姿勢で奮闘し、涙は最後まで見せずに大学の4年間に幕を下ろした。
【INTERVIEW】「皆が武器を作り、自信をつけてきた」ベンチからチームを支える3年生/#36ポーグ健(白鷗大・3年・PF)
お互いディフェンスチームゆえに簡単に点が入らなかったが、そこにスリーポイントで風穴を開けていったのが白鷗大だった。ポーグは4本を沈め、チームでも合計11本。追い上げる大東文化大の勢いをその都度止めた。
本格的に試合に出るようになったのは3年目の今年から。#8陳岡、#20根本の3年トリオは特に上級生になるにあたって、危機感を持ってレベルアップに努めてきた。今季はリーグ戦からベンチスタートの彼らの安定感が、チームの支えになった。この先の2試合も注目の選手の1人だ。
─ディフェンスもいい中でポーグ選手のスリーポイントが効きました。狙っていましたか?
「はい、もう決めるだけなので」
─リーグ戦のあと、インカレまでの準備はどうでしたか?
「リーグ戦も悪かったわけではないので、継続することや細かいミスについてみんなで話し合いました。一番力を入れたのはコミュニケーションです。白鷗大のチーム力はディフェンスなので、コミュニケーションを大事にしてやってきました」
─3年以下の構成で出るセカンドチームが本当に大きく役割を果たしていますが、その出来についてはどうですか?
「インカレは4年生の最後の大会なので、4年生のためというのはみんな思っています。でも3年生の性格上、盛り上がるのは好きなので、そういうところが出ているなと思います。みんな元気だし、1人が盛り上がれば、影響されて周りも盛り上がる感じです」
─3年生たちは昨年危機感を抱いて頑張ってきたということですが、それが自信に変わってきたのはいつ頃ですか?
「リーグ戦の途中ですね。いつもは脇さん(#2)や涼成(#88佐藤)が出ている時間帯で点を離してくれて、点差を維持するような形だったんですが、セカンドで出たときにリーグの途中からはもう点差を離すこともできたり、逆に負けているときも追い上げることができて。流羽(#8陳岡)も大(#20根本)も自分で点を取れるようになって、そこから自信になっていきました」
─能力はあると思いますが、それでもそこまでは自信はなかったんですか?
「やはり1・2年の頃には試合に出られていないというのがあって、大学のレベルで自分たちができるのかどうかというのもわかりませんでした。例えば行くべきところで行ききることができるかどうかもわからないなかで、今年はトーナメント、WUBS、リーグ戦を経験して結構通用しました。自分が通用した部分をみんなが練習して、自分の武器にできていきました。それがリーグ戦の途中から上がっていった理由だと思います」
─まだ2試合あります。
「去年は準優勝で終わって、自分は応援席から見ていました。でもとても悔しくて。でも勝つには4年生の力があってこそで、今日も4年生が耐えてくれた結果でもあります。僕らは4年生を勝たせるために全員で頑張っていきたいと思います」
─昨年決勝もそうですが、今年のWUBSも決勝は惜しい試合でした。
「自分たちが負ける試合は1Qで離されている試合です。そうなると追いつくのに体力が必要だし、同点になったときに相手の方も余裕がある状態です。だからスタートの部分がとても大事ですね。初戦の大阪産業大もそうだし、大東文化大戦も最初にいい形で入れたので勝てたと思います。残りの試合もそこを大事にしていきます」
前半は互角の勝負、3Qに筑波大が浜松学院大を引き離す
準々決勝のもう一試合、日本体育大を破って勝ち上がった筑波大は、4年間で1部まで駆け上がり、インカレ初出場でベスト8まで進出してきた山梨学院大との一戦となった。
前半は互角だった。筑波大は#34三谷(4年・SF)のスリーポイントが当たる。山梨学院大も攻めあぐねつつ、#5中村(1年・PG・福岡第一)のオフェンスが決まると、最後は#67武内(4年・SG)のスリーポイントが入り、1Qは18-24。山梨学院大は2Qに反撃を開始。序盤に#67武内のスリーポイントが続けて決まると、#46河田(4年・SF)、#90野溝(3年・PG)のドライブが決まり同点。筑波大はシュートが決まらない時間が続き、フリースローも入らない。山梨学院大はここからシーソーゲームで粘り、#67武内のスリーポイントも再び来る。前半は37-38と筑波大のリードは1点になって終えた。
3Q、開始早々山梨学院大#46河田のドライブが決まるが、その後は筑波大の流れに。#34三谷のスリーポイントが続いてチームを盛り上げる。山梨学院大はペイント内でのプレーができずアウトサイド一辺倒になってくるが、これが決まらない。このQ8点と伸びず、13点差がついてしまうと、あとは筑波に余裕が出る展開となった。山梨学院大は4Qも攻め続けるが、筑波大のディフェンスも厳しく、ゴールは簡単ではない。しかし#26小野寺(4年・PF)、#14上床(4年・SF)ら、ベンチメンバーの4年生も得点に絡んでベンチを湧かせる。山梨学院大は終盤、ベンチ登録されている7人の4年生を変わり代わりに出場させていき、タイムアップを58-73で迎えた。
筑波大は2年ぶりにベスト4進出。リーグ戦からは課題の一つだったスリーポイントが好調に切った。一方、山梨学院大は初めて尽くしが続いた1年間をベスト8で締めくくった。
壁を超え続けた山梨学院大の軌跡
山梨学院大は4年間で3部から1部まで駆け上がってきた。主力の4年生たちとの分かれに、古田監督は「寂しい」と泣き笑いをみせたが、それもそのはず、4年生の歩みがチームの歩みともいえる。#67武内、#46河田、#64山田、#2カボンゴ、#68高橋らを1年のときから主力として起用し、3部のときは「2部の実力がある」、2部のときは「1部の下の方の実力がある」とチームに言い続けてきた。それは選手たちを盛り上げるためではなく「僕は本当のことしか言わない」と、長らく日本のバスケット界の一戦で活躍してきた古田監督の真実の認識だった。その言葉の通り、コロナ禍で1年遅れたが、チームは2021年に3部を全勝、2022年に2部を2位で1部昇格し、主力が4年生になった勝負の年には1部で9位の実力を示した。
それでもそれは彼らの力であり、「自分は何もしていません。試合で指揮はするけど、日頃の練習やどういうバスケをするかは学生たちに任せています」という古田監督。2019年の秋に監督に就任して5年となるが、試合以外では選手の自主性に任せ、個別にアドバイスもしない。だからこそ選手や学生コーチたちが自分たちで考え、育ち、作り上げてきたものは尊く、もし別の監督に代わったとしてもゆるぎないところまで高められたとも感じている。「『古田悟が監督をしているチーム』としてではなく、『山梨学院大学』として認識されるチームになってくれたと思います」。この言葉は学生たちにとってもなによりの称賛ではないだろうか。主力の4年生が一気に抜けてもそれは変わらないとする。ベスト4を掲げた目標には一歩足りなかったが、それでも見事な軌跡を描いてここまで到達したチームは、今年の結果を礎にまた来季へと続いていく。