神大に負けてスタートし、神大に勝利してその壁を超える
コロナ禍による度重なる変更の中、1部昇格とインカレ出場を目指し、
必死に戦ってきた明治大。
目標だった全勝による1部昇格は成し遂げた、そして次に挑んだのがチャレンジマッチ。
明治大と神奈川大の互いのプライドがぶつかりあった試合は、
互いに一歩も引かない死闘となり、
延長戦の末に明治大に軍配が上がった。
勝利を目前に想いがあふれたのか、明治大の主将#17常田(4年・PG)は
試合の終わりを迎えるよりも先に、コートに膝をついた。
そしてインタビューで最初に出てきた言葉は
「神大のおかげ」
相手あっての自分たちなのだという、
尊敬をはじめ、さまざまな想いの詰まった一言だった。
― 試合が終わる直前、まだブザーが鳴り始める前に一度、コートに膝をつきました。あのとき、どんな想いだったのでしょうか。
「……今のチームはトーナメントで神大に負けてスタートしました。本当に、神大のおかげで良くなったというか、チームが変わったんですよね。あの1試合でみんなの気持ちの入れ方も変わりましたし、自分自身のバスケットボールに対する気持ちも変わりました。このインカレチャレンジマッチという一発勝負を神大とできるというのは、すごくありがたいことでした。本当に勝ってインカレに行くぞ!とみんなが思っていたことです。正直ここまではきつかったです。リーグを通してもいろんなこともありましたし、勝つのが難しい中で勝ち切ってきたこともありました。そういうことがあの瞬間にはいろいろ出てきました」
― トーナメントのときの神奈川大戦はどんな気持ちで臨んでいたのでしょう。勝つ自信はありましたか?
「自信は持っていました。去年から出ているメンバーも多かったですし、下級生もすごく良かった。それまでの練習試合に関してもいい結果でした。でも、あの試合ではそれをシンプルな部分、気持ちとかリバウンドとか、そういう基本的なことを貫いた神大に負けたと思います。自信はあったけど、その自信を砕かれるというか、そういうものに近いものを感じた試合でした」
― あの負けが大きなものとなって、チーム全体の意識改革が進んだと?
「そうです。今の明治があるのは、本当に神大のおかげといって過言ではないと思います。本当に」
― では、チャレンジマッチの相手が神奈川大に決まった時は、意気込みもかなりあったのではないでしょうか。
「神大と戦うことによって、本当にまた一つこのチームが変わるというか、上のステージにいくためには、本当にここで神大に勝っておかなければいけないなと思いました。負けたチームと次に対戦した時に勝つということは、本当に意味のあることだと思います。自分が1部にいた2年生の時は、リーグ戦で小酒部選手(現B1東京)にやられたりして、神大に一度も勝てませんでした(2019リーグ戦GAME1/GAME2)。神大というチームに負けたことが大きく響いて2部に降格した思い出もあったので、より一層思いは強かったですね」
― 相手もおそらく明治大に対して因縁もあるし、昨年インカレに出られていないので、同じくらい強い気持ちだったのではないでしょうか。常田選手と神奈川大の主将の小針選手(#3)の気迫のぶつかり合いを感じました。
「小針も自分も、ずっと下級生から出ていた選手です。自分としては正直どこか意識している部分もありました。彼は大学の中でもトップのガードだと思いますし、小針にいろんなことを教わったじゃないけど、本当に彼の気持ちのプレーというか、最後のあの追い上げになったジャンパーの連続に関しても、本当に気持ちで決めきっているなと思いました。ただその気持ちに負けてはいけないと思ってやっていました」
昇格のない苦しい1年を乗り越え、インカレに向かう覚悟
コロナ禍は、多くのチームにバスケット面でも精神面でも打撃を与えた。
中でも2020年度の2部以下は、昇格制度が採用されないつらい1年だった。
だがその状況でもモチベーションを保てたのは、昨年の4年生のおかげという。
昨年の主将・富田や植松はどうなるかわからない状況の中でもチームを鼓舞し、
インカレチャレンジマッチに勝利し、チームを最後の大舞台に連れていった。
それがあったからこそ、今季も試合がままならない中、
さまざまな雑念や障害を振り払い、集中することができた。
そして、ともに苦しい中で戦い抜いた2部チームのことを考えると
この先はただ単にチームのためだけ、という気持ちではないと常田は言う。
2部、そしてチャレンジマッチでベストを尽くした
それぞれの4年生を尊敬するからこそ、
インカレという最後の大舞台で持てるものをすべて発揮するつもりだ。
― 去年は入れ替え戦も行われず、2部のチームには我慢の時間がすごく長かったと思います。その状態で頑張ろうと思えた原動力は?
「すべての始まりは去年の4年生だと思います。去年の4年生がインカレチャレンジマッチで気持ちを見せて、拓殖大に勝って自分たちをインカレに連れていってくれました。インカレという舞台を経験できて、やっぱり来年は絶対に1部に上がろうとみんな思ったはずです。本当に去年の4年生があったから今の自分たちがいます。
コロナ禍というのはしょうがない部分もありますが、2部のみんなは本当に大きな影響を受けています。去年は試合数もこなせず、昇格することもできなくて、悔しい1年を送りました。今日のインカレチャレンジマッチは、そういう状況を過ごしたからこそ、2部のどのチームも思いをぶつけて1部にぶつかっていたと思います。自分としても本当にしんどい1年でした。去年、自分たちの代はもう2部でしかプレーできないんだと決まった時は本当に。でもその中で4年生がずっと引っ張ってくれました。だから、それが原動力としか言いようがありません」
― 今年の4年も立派だったと思います。今日の試合でも4年生全員がチームを引っ張っている様子が見えました。
「同期はチームのためを思って準備をしたり、何か行動するということは必ずやっています。その目標がぶれてないという意味で、いい仲間ですね。でも4年生という意味では神大もそうだし、2部で戦ってきた他のチームの4年生のプレーにも、やはり刺激を受けるものがありました。これは自分が勝手に思っていることですが、2部を背負ってじゃないですけど、今日負けた明星や国士舘、東洋の、負けてしまった4年生の分、そして今日の神大の4年生の分もインカレでしっかり結果を残したいなと思います」
― インカレに向けての抱負を最後に聞かせてください。
「今言ったこともそうですが、チームは来年1部でやることが決まっています。インカレという場をなるべく経験することが、来年に絶対つながると思います。試合数を一つでも多くインカレでこなすというのは、これからの下級生と来年のチームにとって必ず必要なことなので、その部分で何か残せるものがまだあると思います。2部の中でも自分たちはずっとチャレンジャーだよと話をしてきました。そしてここからは本当に格上ばかりの相手なので、チャレンジャー精神を持って1部のチームに思い切ってぶつかっていきたいと思います」