関東の残り4枠をめぐるインカレチャレンジマッチ2020は、国士舘大の無念の棄権により中央大がまず不戦勝となり、残り3試合はそれぞれのプライドがぶつかり合う熾烈な戦いが展開された。 1部は前述の中央大のほか、早稲田大が勝利。そして2部の明治大と明星大が1部校を撃破し、インカレへの出場権を手にした。明星大は初のインカレ出場となる。
【GAME1】矛の明星大が盾の神奈川大を破り、インカレへ初参戦
この日一番緊迫したのが第1試合。1部の神奈川大は立ち上がりから#7東野(3年・SF)がペイントに切れ込み得点。#3小針(3年・PG)のシュートも決まっていく。一方2部の明星大はゾーンを敷いて簡単には攻めさせない。得点では#7岡田(3年・SG)を中心に得点を刻んだ。#6神谷(3年・SG)の3Pが決まって最後は#29新田(4年・PG)、#10福田(3年・PF)と得点が続いた明星大が抜け出して1Qは21-24とするが、拮抗した立ち上がりとなった。
2Q、神奈川大は#7東野がシュート、速攻、アシストで見せる。しかし外のシュートに強みがある明星大は#7岡田、#6神谷、#10福田のスリーが連続で決まり、10点のリードに。しかし神奈川大も#3小針の連続シュートに#34工藤(2年・SF)の3Pが決まって追い上げ、42-45と3点差に縮めて前半を終えた。
3Q、立ち上がりに神奈川大はターンオーバーが頻発し、その間に再び明星大に11点差まで広げられてしまう。しかし#7東野が攻め込み、#19澤田石(2年・SF)の3Pも決まって再び僅差で追っていく形になると、残り4分半には#7東野の速攻で同点に戻し、#19澤田石の3Pで逆転に成功。明星大はミスが続くが、#7岡田の3Pで逆転し、61-62で最終Qへ。
4Q、序盤はどちらに転ぶかわからない状態で推移するが、神奈川大はディフェンスでファウルが続いてしまう。その間に明星大がまたも引き離して11点の差に。残り5分を切り、神奈川大は#7東野がシュートやフリースローで追い上げ、ディフェンスでも粘り強く対応するが、残り2分を切り、明星大のリードは10点。だが神奈川大は攻めてはファウルをもらい、相手のリスタートを狙ってボールを何度も奪ってチャンスを積み重ね、#3小針の連続3Pが決まると、残り約40秒で4点差。しかし明星大も落ち着いて対処し、残り時間を乗り切ると77-85で勝利を確定。創部初のインカレ出場を決めた。
2Q以降は攻撃力のある明星大が終始逃げる形になったが、神奈川大もディフェンスから粘り、#7東野が突破口となって何度も追い上げ、逆転する緊迫感のあるゲームが展開された。最後まで神奈川大がディフェンスでしつこく迫ったが、これまでは終盤に力尽きることの多かった明星大にも成長が見え、逃げ切って勝利。掲げてきたインカレ出場という目標を達成した。 神奈川大は#7東野が28点、オータムカップではあまり目立っていなかった#3小針が18点と、得点を取るべき選手がパフォーマンスを見せたが、ディフェンス面ではどこからでも打ってくる明星大を完全に押さえきることができず、リバウンドでは#12シェッラ、#23ニャシと2名の留学生の高さにも苦しんだ。
「仲間に恵まれて、仲間のおかげで勝つことができた」◆#29新田 嵐(明星大・4年・主将・PG)
勝利が決まった瞬間、両手を高々と掲げて大きくのけぞった。4年間、何度もチャレンジして夢見たインカレの切符をついに最終学年で掴むことができた。この4年の間に新田をはじめ個々が成長し、また選手層も厚くなり、チームとしての確かな成長が伺える。この先挑むインカレで、その集大成を見せてもらいたい。
―今、どんな気持ちですか?
「いやもう、ホッとしています。前半はうちのシューター陣がそんなに入っていなかったのですが、後半になって入るだろうと思って、前半は辛抱強くやっていました。でもそれでもリードしていたので、チャンスがあるなと思いました。シュートが入り出せば自分達の展開になるかなと思って、辛抱強く前半は戦いました。緊張していて手が震えるような緊迫した試合になりました。個人的には良くはなかったと思いますが、それでも最後は自分が決めたいという思いでやっていました。今日は仲間に恵まれて仲間のおかげの勝利だと思います」
―ディフェンスに対して。10点引き離しても何度か追いつかれましたね。
「でもディフェンスがきたら抜いて行こうという話はしていたので、その共通理解ができていたのでそんなに怖くはなかったです。自分たちのミスからすぐ縮められるという感じだったので、ターンオーバーをなくそうと思って、3Qも仲間がつないでくれました。本当にチームが成長していると思います」
―チームの成長について。2部リーグに上がってからは、終盤の体力負けや勝ちきれない試合などもありましたが、今日はそれもなく逃げ切りました。
「3年ぐらいまでは下級生チームという感じだったんですが、自分が4年生になってもうそういうことは言っていられなくなりました。そしてずっと一緒にやってきた仲間達がようやくここで共通理解を持って、みんなで声をかけ合ってできているのかなと思います」
―声をかけているシーンが目立ちましたが、皆が一体感を持っている感じなんですね。
「本当にインカレに向けて、初戦より2戦目、2戦目よりも3戦目という風に声をかけるようになっていきました。このオータムリーグを通して成長できたなと思います」
―キャプテンとしてはどんなことを心がけて皆に言ってきましたか。
「練習ではみんな言いたいように言って欲しいので、そんなに声をかけることはないんです。でも試合になって勝とうという気持ちを一番見せたいなと思っていて、試合の時は自分から声をかけるようにしています。今日は全員で声をかけあうことができました」
―創部初のインカレで歴史を塗り替えたということについては?
「素直に嬉しいと思います。リーグで3位になった時も歴史を変えられたと思うんですが、インカレに出ることを目標にやってきたので」
―インカレに向けて見せたいところ、また目標は?
「 ここからは突き進むだけです。この先もドライブからのバスケットを貫いていきたいと思います。目標は、とりあえずインカレに出ることを目標にしてきたので、もう一度みんなと話し合いたいと思います!」
【GAME2】チーム力の向上が見られる明治大が拓殖大を撃破
1部拓殖大と2部明治大の戦いは、1Qは18-18の同点。拓殖大は#0神田(1年・PF・福岡第一)や#24ユセフ(1年・C・開志国際)などが得点を牽引、明治大は#34富田(4年・F)のバスケットカウント、#52溝口(3年・PF)のシュートなど、まんべんない活躍が見られた。2Qになるとゲームが動く。明治大は#17常田(3年・SG)の連続得点に#56永田(4年・PF)も続いて差を広げる。拓殖大は#95齋藤(4年・SG)の3Pで食い下がるが、#31吉村(2年・SG)の連続3Pで明治大が抜け出すと、その後も#7植松(4年・PF)得点が続いて29-38で前半を終了。
3Qもペースは明治大。#7植松が好調で着実に得点を重ねていく。拓殖大は#24ユセフの奮闘もあるが得点が伸びずに48-63と大きく引き離されてしまった。大量リードを得た明治大はその後も緩まず、#31吉村、#21田邉(1年・SF・福大大濠)の3Pも好調に決まるとそのまま逃げ切り、59-81で勝利を確定。2年ぶりにインカレへの出場権を手にした。
「4年生の自分達がチームの雰囲気を作っていかないといけない」◆#7植松義也(明治大・4年・PF)
試合を通して安定感のある活躍を見せ、得点でもリバウンドでもチームを牽引する活躍を見せた。昨年は惜しくも2部降格を味わったが、今年は昨年よりも全員が一回り成長しているようにも感じられる。課題感を強く意識して臨んでいる4年生たちの姿も頼もしい。インカレでのプレーぶりに期待したい。
―今の気持ちを聞かせてください。
「正直ホッとしています。昨年はリーグ戦で敗退してインカレは出られなかったし、個人としても2年生の時に一回しか出ていないので、2年ぶりに出ることができてホッとしています」
―今日の試合を振り返っていかがですか?ユセフ選手(#24)に対する守りもとても良かったと思いますが。
「オータムカップの決勝で法政大に負けてから、去年の学生コーチの方にも協力してもらって、スカウティングを行って相手のセットプレーや、留学生のプレーを個人個人見て研究した結果が出たんだと思います」
―法政大に負けた後、主に反省して修正した点はどこになりますか?
「オフェンスもディフェンスも両方ですが、オフェンスは最初の入りが悪くいのが課題でした。法政大の前の試合も前半は入りから悪く、拓大戦は最初からディフェンスを徹底してみんなでやろうということを意識して入りました」
―4年生としてはどういうことをチームに見せたいと考えていましたか。
「自分たちがディフェンスの面だったり、ベンチに戻った時も声を出していかないと感じていました。自分達がチームの雰囲気を作っていかないと、勢いや前半の入りは良くならないと感じました。コートはもちろん、ベンチにいる時も声を出して、ベンチの雰囲気を作るように個人としてはかなり意識してやっていました」
―個人としての出来は得点も取りましたし、かなり良かったのではないですか?
「去年や一昨年まではそんなに点をとるような立場ではなかったんですが、昂矢(現B1横浜)さんや翔太(渡部・現B2仙台)が抜けて点を取る選手がいなくなりました。だから自分も個人技ではそんなに取るタイプではないんですが、オフェンスリバウンドや泥臭い部分、キャッチアンドシュートなんかを積み重ねていって、点を取って行かなければいけません。積極的に打つということは意識しています」
―チームとして去年から変化した部分はどこだと思いますか?
「みんなで守って、みんなで攻めるというのは昨年とは大きく違うと思います。昨年は翔太とか昂矢さんの一対一で何とかしてもらっていた面がありました。今のチームは個人で何点も取るようなプレイヤーはいません。だからチームでしっかりオフェンスを作っていって、リバウンドをチームでしっかり取って、点を取っていくという風になっていますが、それが去年から大きく変わった点だと思います」
―インカレに向けて。
「インカレは勝ち上がって行けば関東1部に当たります。そこに向けて1部を倒すということを目標に頑張っていきたいと思います」
【GAME3】早稲田大はディフェンスで法政大をはねのける
第3試合は怪我人の多発が懸念でもあった1部の早稲田大が、2部・法政大の挑戦を受けた。前半は早稲田リード。1Qは互いに得点が入らずゆるやかな立ち上がりとなって差はつかなかったが、2Qに入ると早稲田大は#12土家(2年・PG)がフリースロー、3Pなどで次々と得点を重ね、10点近いリードを奪う。法政大は早稲田大のディフェンスを割れず、持ち味のオフェンス力が発揮できない。#14小野(3年・G)が突破口となる場面もあったが、31-22と前半は早稲田大が9点リードで終えた。
3Qも流れは大きく変わらない。早稲田大は#41小室(4年・C)#15兪(1年・C・桐光学園)らインサイド陣も奮闘。法政大に得点チャンスを与えない。しかし46-33で入った4Q、法政大も底力を見せた。早稲田大のリードは変わらないが、10点差ほどでついていき、残り2分となってゲームが大きく動く。#31戸井(4年・C)のバスケットカウントに続き、#34濱田(4年・G)、#12千代(4年・F)の3Pが決まると残り18.1秒で56-54と差がわずか2点に。しかし早稲田大はファウルをもらってフリースローでこの法政大の追撃をかわし、最後は58-54で逃げ切り勝利となった。
早稲田大は#7宮本が怪我で今季の残り試合は欠場となったが、ルーキーの#15兪がそれをカバーし、インサイドのリバウンドで奮闘。また、チームとしては#12土家が得点を牽引し、ディフェンスでは強いフィジカルを活かして法政大をはねのけた。まさに一丸となった勝利で、インカレの切符を手にした。
法政大は立ち上がりからディフェンスの攻略ができず、司令塔の#30水野が守られたこともあって得点が伸びなかった。4Qの巻き返しであとわずかまで迫ったが、逆転するまでには時間が足りなかった。
「敗戦の淵に立たされた時に皆にスイッチが入った」◆#41小室 悠太郎(早稲田大・4年・主将・C)
立て続けに怪我人が出てしまい、危機感があったという小室。4年にとっては負ければ引退となるだけに緊張もあったはずだ。しかし勝負のかかった大一番ではチームが機能して踏みとどまった。今年初の1勝をもぎ取るため、40分走り続け、結果を出した。
―試合を振り返っていかがですか。
「とにかく今季初めて勝って、インカレに出ることができてよかったです」
―法政大はどこに注意していましたか?
「みんな入る選手なので、リバウンドをしっかり取って、それを40分設定できて相手を54点に抑えられたんだと思います。ただ最後はぼんぼん打たれてしまったので、そこはしっかり修正する必要があると思います」
―オータムカップからは少し期間が空きましたが、どのような練習をしてきたのでしょうか。
「新しくやることは特になく、主にディフェンスをやって、あとはオフェンスの確認でした」
―オータムカップよりも集中してディフェンスができていたように思います。
「昨年も同じなんですが、例えばリーグ戦の終盤の神奈川大戦は負けたら終わりでした。国士舘大との入れ替え戦もそうです。敗戦の淵に立たされた時に早稲田はいつも力を発揮するようなところがあります。監督さんももう何十年もそういうチームだよ、ということをおっしゃっていました。それを言っていただいたことですスイッチが入ったのか、ディフェンスもがっちりはまったので、今日のような結果になったと思います。でもインカレではこれを1回戦からしっかり出していかないと戦えないと思うので、最初からやれるようにやっていきたいと思います」
ー宮本選手(#7)がケガということですが。
「彼は骨折してしまったのでもう今季は無理で、来年に期待ということになります。ただ津田(#8)が戻ってこられたのと、星川(#13)が今日はちょっと出れませんでしたが、彼も戻ってくれば今日みたいに40分出場をするということはないと思います」
―インカレに向けてはコンディションはもちろんですが、他にどういうところを大事にしていきたいですか?
「ディフェンスは、今日はできたところあったんですが、オフェンスが止まった時間帯がありました。そこで自分たちのバスケットができなかったので、そこをもう一度修正したいです。ディフェンスはこのまま継続していきたいです。4年生が中心になっていい雰囲気作りをして、臨みたいと思います」
「点を取りにいけ」スコアラーとしてコートを縦横無尽に駆ける◆#12土家大輝(早稲田大・2年・PG)
怪我人の多い状況で、オータムカップでは得点に徹するかのように、シュートを放ち続けた。ゲーム終盤に立て続けにシュートを入れる力もあり、集中力の高さは特筆すべきところだ。人数が少なく苦しい中で土家の得点が希望の光であったことは間違いない。
―今の率直な気持ちはいかがですか?
「去年も入れ替え戦の同じような戦いを経験しました。今年は怪我人が多い中で自分たちができる最大限の力を出して勝てたことはすごく嬉しいです。2年連続でインカレを経験できるのはすごく嬉しいです」
―チームとしてのディフェンスの手応えはどうですか。
「自分達はメンバーが少ない中で、40分近く出る選手が多い状況です。ここを一本守ろうという所でみんなで声を出し合って、結束できたのがよかったのかなと思います」
ーオフェンス面では土家選手が得点を取っていますね。
「他にも津田さんという得点を取れる選手がいるんですが、今は怪我をしています。監督からは点を取りに行けと言われたので、マッチアップもがガードではなくてシューターの人にしてもらって、自分が30点ぐらい取る気持ちでやっています。ただ1Qと3Qの最初のシュートセレクトがすごく悪くて、ブロックされるシーンも多かったですし、そこは試合ですぐ修正できないといけないと思っているので、インカレに向けては改善したいです」
―オータムカップをどうしてチームの成長を感じられましたか?
「まず練習の雰囲気が変わりました。4年生が練習前の自主練から緊張感のある雰囲気を作ってくれて、自分たち下級生がしっかり声を出して盛り上げていった結果、チームで戦う雰囲気になっていきました。4年生がすごく引っ張ってくれていました」
―インカレに向けて。
「星川や津田さんが帰ってくるので、サイズ的にも大きくなってメンバーも増えるので、もう少し走れるバスケをしていきたいと思います」