国立競技場代々木第二体育館に舞台を移した関東大学トーナメントは後半戦。関東の頂点をかけた戦いは、激しい攻守で見応えがある試合が続いた。
ベスト4に進んだのは連覇を目指す日本体育大、昨年3位の専修大、5位の大東文化大、そして、山梨学院大が創部初の突破を果たした。
連日の歓喜!山梨学院大が神奈川大に逆転でベスト4進出を果たす
白鷗大を倒した神奈川大と、東海大を倒した山梨学院大がベスト4進出のかかる大一番で白熱した試合を展開した。
立ち上がりは山梨学院大にミスが続き、神奈川大が2-11と飛び出す。しかし山梨学院大もベンチメンバーがチームを落ち着かせると、次第に勝負は互角に。2Qになると山梨学院大のディフェンスが良くなり、再三速攻が出ると逆転。神奈川大も取り替えずが、Qの終わりに#90野溝(4年・PG)が放った超ロングスリーが時間内で認められると、山梨学院大が2点リードの32-30で前半を終えた。
後半も#90野溝のスリーポイントで幕を開け、#9齋藤(2年・PF)のシュートなどで山梨学院大が最大8点リードするが、神奈川大は#35永沼(4年・F)のアタックで盛り返し、#3山本(3年・PG)のアシストやドライブで逆転。46-50で4Qに入る。
入れられたら入れ返す攻防が続いた4Q、神奈川大は#5保坂(4年・PG)が走って稼ぎ、追いつかせない。山梨学院大は#5中村(2年・PG)、#62茂木(4年・PF)の当たりが来て、残り1分半で1点差に迫った。ここから互いにゴールを割れない時間帯が続くが、残り26秒に、#98スヴェトリシック(2年・C)からのパスを受けた#14菅野(1年・PG・帝京安積)の値千金のジャンパーが決まり62-61。最後の神奈川大のオフェンスは山梨学院大に守られタイムアップ。山梨学院大が激闘を制し、2日連続の「古田コール」にわいた。
【INTERVIEW】「来るかもしれないと待っていた」阿吽の呼吸で決めた決勝点/#14菅野 陸(山梨学院大・1年・PG・帝京安積)
高3でウインターカップ初出場、U18代表、そしてB2福島での特別指定選手の活動も経ての、大学界入り。今大会はスタメンで躍動感あるプレーを見せている。勝負どころでスヴェトリシックからのパスを受け、見事にコーナーからのシュートを決めてチームの勝利に貢献した。大黒柱だった4年生たちが抜け、新生・山梨学院大を背負う期待の1人だ。
─見事な勝利でした。最後の菅野選手のシュートが勝負を決めましたね。
「イゴール(#99スヴェトリシック)がいつもシューティングとかでリバウンドを取ってくれていて、その人からのパスだったので、すごく打ちやすかったです。イゴールが攻めるかもしれないけど、彼なら信用してくれて、もしかしたら自分にパスが来るかな?と思ってコーナーで待っていたので、入って良かったです。相手のディフェンスも来たけど、気にせず、いつも通り打てました」
─出足は硬さがありミスが続きました。緊張はありましたか?
「ありました。この体育館で試合をするのは初めてなので」
─でも1年生ですがスタメンとしてすでに馴染んでいるようにも見えます。
「初めての大会なので緊張はするんですけど、先輩方とかが優しくて。どうやったらいいかとか、メンタル的な部分でもすごく支えになってくれるので、プレーもしやすいです」
─特別指定選手なども経験し、上の世界も知っていると思いますが、改めて大学の試合はいかがですか?
「強度も高いし、身長もあるので自分がプロで経験してきたことを活かせているなというのは思っています。Bリーグでは外国籍の選手が大きくてフィジカルも強いです。日本人選手でもすごくフィジカルは強かったので、そういうところでやっていたので、大学バスケではそこでの感覚は負けていないなと思っています」
─山梨学院大を選んだ理由は?
「YouTubeとかで試合を見たときに、楽しそうにバスケをしていたので、そういうところでやってみたいなと思って選びました。ここは部員の人数も多くて、今までに経験のない環境でもあります。でも人がたくさんいるので、そういう人たちの応援が支えになっているなと思います。だから試合をしていても楽しいです」
─初のベスト4。次はチームも未経験の準決勝です。残り2試合に向けて。
「今の試合でも自分の中では反省する部分もすごくあったので、そういうところを今日は反省して、明日はしっかり1Qから自分の出せる力を全部出して、勝利に貢献できるように頑張っていきたいです」
専修大はインサイドの強みを活かして早稲田大を下す
専修大と早稲田大の対戦は、インサイドの強みが勝った専修大が終始リードした。立ち上がりは#97ジョベ(2年・C)、#8介川(2年・PF)がインサイド、レイアップで得点。専修大がリードするが、ミスマッチをつく早稲田大が高い機動力を活かしてディフェンスで粘り、徐々に調子を上げる。しかし武器である外角のシュートが決まって来ない。前半はインサイドでの頑張りもあり41-33と8点差にするが、後半も流れは来ない。専修大が3Qで22-10と圧倒して点差を20に広げると、そのまま逃げきり82-66。
大東文化大の厳しいディフェンスに日本大は追い上げきれず
大東文化大と日本大の戦いは、大東文化大がディフェンス・オフェンスとも流れを掴んでリードを保った。立ち上がりから大東文化大はスリーポイントをはじめシュートが好調。ディフェンスでも日本大の強みであるペイント内でプレーさせず、打たされる格好の日本大は苦しいシュートが続いた。19-9。
2Qになるとディフェンスで粘る日本大が反撃。#7新井(3年・SF)がスティールやランプレーで起点になり、点差を縮める。大東文化大は#39アブドゥレイ(3年・C)がファウルトラブルになるも#99タホリ(2年・C)がつないで崩れず、スリーポイントや、フリースローなどで着実に加点。日本大はそれでもインサイドの#12コンゴロー(4年・C)にボールを入れて得点し、30-25で前半終了。
3Qは開始早々#21富山(4年・PF)のスティールからのダンクやスリーポイントが決まり、再び大東文化大のムード。日本大は#13泉(3年・SG)、#51一戸(4年・PG)のスリーポイントがようやく決まって#12コンゴローのランニングからのダンクも飛び出すが、大東分大も#5広岡(3年・SG)のスリーポイント、#3塚本(3年・PG)の絶妙なフローターなど、持ち味を見せて49-41と点差を広げた。
4Q立ち上がりは大東文化大にファウルが続き、#39アブドゥレイがファウルアウト。日本大はフリースローで追い上げ5点差まで詰めるが、#21富山のスリーポイント、#6内山(2年・PF)のオフェンスリバウンドなど、好プレーが続いて流れを切らさない。日本大はシュートを打っていくが、決まらず、67-54。大東文化大が強敵を倒しベスト4進出。
【INTERVIEW】「誰が出ても同じ強度、同じ質で」活気とともに大東文化らしいプレーを/#77松尾河秋(大東文化大・4年・主将・PG)
強敵の日本大を得意のディフェンスで押さえ、容易なプレーをさせない40分。出場した全員がいい働きを見せた。昨年はシーズン終盤から調子を崩し、怪我も続いた。現在も#25山内、#9田中は欠場しているが、そんなことは感じさせない、チームバスケで見事な勝利。次は日本体育大に挑むが、この流れを維持し、強敵突破なるか。
─日本大に対して終始見事なプレーでした。
「相手はトランジションが早くて留学生もリングに対してアタックどんどん来る。ブレイクの部分でも留学生が走ってくるチームなので、そこをどうにかしようというところと、スリーポイントもあるチームなので、自分たちがそこにどうアクションを仕掛けるかということを話していました」
─日本大も打っていましたが、自分たちの打ちたいタイミングにさせていませんでした。
「インサイドが一番脅威なのでそこをケアしようという部分でした。そこからのパスからのスリーポイントもシンプルに渡すのではなく、しっかり自分たちがシュートコンテストまでしっかりやりって、その後はねたボールを取ろうというのを言っていたので、それが前半からできてリードする展開になったと思います」
─出場した全員がいいプレーを見せました。
「富山(#21)が最初にスリーポイントを決めてくれたり、品田(#47)、それにタホリ(#98)がスクリーンでコンゴロー(#12)のところを守ってくれたり、点にならない部分でも全員が頑張っていたと思うので、こういう結果になったかなと思います。いつもならジャヘル(#25山内)がいて、あそこが攻めていけてしまうので、頼ってしまう部分があったんですが、今は怪我でいません。でもその分、自分たちでポジションを奪いながら切磋琢磨してやってきました。今日のようなバスケをしていれば彼が戻ってきたとき、さらにチーム力が上がります。そういう意識でやっていることが、今回全員が試合に出て活躍できた理由だと思います。誰がボールを持っている時でも、同じようにシュータープレーを作るっていうのを増やしていければ、もっといいチームになると思います。今はまだ春でチームも出来上がってないんですが、ここからもう一つ、チーム力という部分を上げていけたらなと思っています」
─今年チームをまとめる立場ですね。どんな心がけでいますか?
「キャプテンとしてチームの初めの目標として、チームの雰囲気を良くしようということを考えています。誰かが言ったことに反応するとか、監督の言うことにすぐリアクションをとるということを、自分たちの中で意識しようとしています。コートの内外でも、応援に来てくれている大東のチームメイトというのも、しっかり声を出してくれていたので、それで大東の雰囲気ができているんじゃないかなと思います。そこに自分が率先して声を出していくことで、周りも声を出していくと思うし、その周りもまたそれにリアクションをしてくれるので、そういうことを繰り返してやっていこうと思っています。去年はキャプテンだった菊地さんがしっかり声出してくれていたけれど、自分たちが反応しきれていなかったところがあるので、それも反省して。そこをしっかり改善していこうという思いでやっています」
─そういうところも含めて今年の大東文化大の見どころは。
「今年の大東は活気のあるチームです。誰が出ても同じ強度、同じ質でいられるということを目指しています。そこを見てほしいかなと思います。次も自分たちのやることをやって、勝利を目指します」
前半は互角、後半日本体育大が抜け出すが拓殖大も粘る
拓殖大はディフェンディング・チャンピオン日本体育大に挑んだ。元々シュート巧者が揃う両チームだけに、前半は互角の戦いで互いに点を取り合う。ディフェンスも良く、拓殖大はインサイドで#23ムトンボ(4年・C)を乗らせず27-27で1Qを終え、2Qも互いに譲らず46-45。
3Q、拓殖大は次第にシュートが落ちてくる。すると日本体育大#7西部(3年・SF)の足が出て、速攻が3連続で決めるとここでようやく大きなリードに成功。拓殖大はディフェンスでは粘るがオフェンスが停滞し、61-50。4Qも気持ちを切らさず攻め#83吉本(4年・SF)が粘りを見せていくが、ほかがなかなか決まってこない。日本体育大は3Qでついた点差を維持し、79-69で逃げ切った。
【INTERVIEW】「自分たちはチャレンジャー、失うものはなにもない」危機感を持って挑む新シーズン/#88大石 隼(拓殖大・4年・主将・PG)
前半は互角、後半はシュート確率が落ちてくる中、チーム全体で粘りを見せて大崩れはしなかった。メンバーは大きく昨年とは変わらないが、ゲームに絡む4年生が多い。得点力は高いが、近年はリーグ戦で苦戦してきており、チームに危機感はある。今季はミーティングを重ね、チームで意思疎通をはかりながらチームを作ってきた。目標は年間を通して結果を出すことになるだろう。そのためにも今大会でやるべきことをやり通したい。
─惜しい試合でした。前半は互角でした。
「チームとしてもディフェンスを大事にしようと言っていて、ディフェンスからリズムを作ることができて、前半ついていくことができました。後半になってシュート決めきる力がなくて、結果的に最後離されてしまったので、そこが課題かなと思います。やはりディフェンスに力を入れていると、体力がまだまだ足りないなというのは感じています」
─最後まで諦めずに攻守粘ったところも見えました。チームとしてまとまっている様子が見えます。
「去年からメンバーもほとんど変わっていなくて、4年生が10人近く一緒にやっているので、その中で一人一人がリーダーシップを発揮してくれているのが、いい形で出ています。特に自分たちは1部の下位チームなので、チャレンジャーという気持ちを忘れないでやっているし、失うものはないので、そこを思い切ってやれています。雰囲気明るくやるしかない、というところもありますね」
─1年を通してはリーグで苦しむなどしてきています。トーナメントではいい雰囲気ですが、昨年との違いはどのようなところでしょうか?
「去年は自主性というか、どこかで誰かに任せてしまったところがあったと思います。今年は自主性というところは出てきて、一人一人の役割もしっかりしているので、やるべきことを遂行できています。だからやっていて楽しいチームです。4年生が中心になって、後輩たちを巻き込んでいこうというふうにやっています。自分たちでは変わったのかどうか実感しづらいところがあるんですけど、楽しさはあるので、雰囲気はいいと思います」
─主将として何を大事にしていますか?
「一人一人とコミュニケーションをとることを大事にしています。後は練習だったり、試合で気づいた点はすぐミーティングを、そして何度もミーティングを重ねるということを意識してやっています。まだまだ力不足だし、やるしかない、と思っているところです。ミーティングなんかも積み重ねていかないと上位チームには勝てないと思っています。去年入れ替え戦でギリギリ残れているので、今年はそういう経験をしたくない。しっかり1部で結果を残して引退したいなと思っています」
─山梨学院大のように、下からのチームが結果を出しているので負けられないですね。
「本当にそうですね。山梨は個人的にも一つの注目チームで、下から上がっていくという部分でいい刺激になっています。自分たちも負けてられないと思います」
─今日は最後まで粘りがありました。明日以降も負けられない戦いです。
「ディフェンスの部分は1部の上位チームでも守れるディフェンスになってきているなと思います。そこは明日以降も継続してやっていきたいなと思っています。残り2試合、どことやっても常にチャレンジャーの気持ちでやるのは変わりません。ディフェンスからしっかりやりたいと思います」