【2022関西選手権】脚力を活かした近畿大が大会を制す

関西2022シーズン
スタメン抜擢の近畿大・田中が優勝に大きく貢献した。

関東でのトーナメント開催と時を同じくして、関西でも関西選手権(全関)が無観客の措置を継続しつつ、従来のゴールデンウィーク期間で開催された。一昨年は近畿大がインカレでベスト8入りを達成。昨年のインカレでも京都産業大がベスト8進出を果たしただけでなく、関西学院大が青山学院大を破るなど、じわりと存在感を関西勢も力を増しつつある。近畿大、京産大ともに今季は代替わりを迎えたが、それだけに力関係を推し量る意味でも注目の大会となった。

【最終結果】
優勝  近畿大
準優勝 京都産業大
3位  天理大
4位  大阪学院大
5位  龍谷大
6位  関西学院大
7位  立命館大
8位  同志社大

優勝したのは近畿大。カロンジという絶対的な存在が卒業し、留学生なしで臨んだ大会となったが、昨年も主力としてプレータイムを得ていた#21坂口(4年)、#56米澤(4年)だけでなく、#23田中(4年)も加えたフロント陣が一貫して好調。大会終盤でも、相手を引き離す場面では米澤、田中の脚力を活かしたオフェンスが効いていた。また、それをインサイドで下支えした#39岩﨑(3年)らの存在も看過できない。コート上のメンバーそれぞれが、自らの役割を果たしたからこそ得られたタイトルだった。

その近畿大以上にメンバーが刷新されたライバルの京産大。昨年ルーキーながらスタメンに抜擢され、今季は名実ともに中心たるべき存在として期待される#9宇都宮(2年)の奮闘は光ったが、チーム全体としての経験値はやや浅く、荒削りな部分も残った。決勝には進んだものの、決勝では立ち上がりから近畿大の速攻に翻弄されてビハインドでのスタート。これが最後までのしかかり、新しいシーズンの幕開けは悔しい準Vスタートとなった。

近畿大・イソフと大阪学院大・金田。チームの優勝のためにはそれぞれの役割が非常に重要になる。

ここ数年は近畿大、京産大を脅かしながらもタイトルを掴むには至っていない天理大大阪学院大は、今大会も2校に続く3位と4位という結果となった。天理大はイソフ(4年)とラポラス(3年)、大阪学院大は金田(4年)という強力なインサイドを擁するが、トップ2校に準決勝で屈することに。まだ構築途上の印象もうかがわせたが、コロナ禍でチームづくりに制約があるのは優勝した近畿大も同様。続く西日本、さらにその先の秋シーズンでは優勝の二文字に手をかけられるか。

【INTERVIEW】「ほとんど試合に出ていない選手もいた中で優勝できたのは大きい」#56米澤協平(近畿大・4年・主将・SG)

昨年までとはメンバー構成に大きな変化の出た近畿大。それゆえに自分たち自身も自らの立ち位置が分からなかったというが、これまで関西では常にトップの座を争ってきた経験値と、持てる力をコート上で遺憾なく発揮したゆえの優勝となった。主将となった米澤もまずは安心した表情。しかし、ライバル勢はすぐに修正してくるはずだ。このまま油断することなく、今年も最後まで関西のトップを守り続けられるか。

─ 優勝おめでとうございます。今はどんなお気持ちでしょうか。

「パト(カロンジ)が抜けて、正直に言って今年はどこまでやれるのかというのが分からず不安が大きかったんです。決勝まで来れたとはいえ京産は経験もあるので厳しい試合になると思っていました。でも最初に勢いを持って試合に入ったことで一気に10点差になって、先行できたことが大きかったです」

─ 米澤選手と、経験の少ない田中選手の両ウイングの速攻が非常に強力でした。

「そうですね。1年の時から田中と太一(坂口)と僕が揃う時はああいうスタイルのバスケをずっとやってきていて、今年は一緒に試合に出る機会も多い中で、試合の中でそれが出せたことは嬉しいですね」

─ 岩﨑選手もインサイドで奮闘を見せていました。

「光はボールを回すの上手いセンターで、なおかつ今大会はポストプレーでも得点できていて、すごく頼りになる存在になってくれたと感じます。今日の決勝で初めて留学生のいるチームと対戦して、最初はひとりで守らせていたんですけど、やはり苦しい場面もあったことで後半からはチームで守るようにしました。練習でも対留学生という練習がなかなかできない状況でもあるので、そういう意味ではこれからの課題になりますね」

─ そういう中で優勝という結果が得られたことは大きな自信になりますね。

「そうですね。なので今回の結果はチームとしてもすごく自信になると思います。去年までで試合に出ていたのが僕と太一、あと高原くらいで、去年までは試合にほとんど出ていない選手もいたので、その中で優勝できたということは大きいです。西日本に向けてもっと完成度の高いバスケができればと思います」

─ 今年はプレー面だけでなく、主将ということで精神的に中心になることも求められます。

「うちは一人ひとりの能力は高いですし、高校まででもレベルの高い中でプレーしてきた選手は多いので、バスケのプレーという意味で僕から言うことはあまりないです。チーム力を上げられるようにするという意味で力を割くようにしています」

─ この先に向けて見つかった課題もあったと思います。

「先ほども話したように留学生に対するディフェンスと、チーム全体でもサイズが小さい方になると思うので、その部分をどうカバーしていくのかが課題ですね。オフェンスに関しては自由にやれていることも多くて、ボールが回っていれば僕らのスピードを活かしたプレーが出せるので、それを40分続けられるようにするだけですね。オフェンスに関しては問題なくて、まずはリバウンドとディフェンスはまだ課題が多いかなと思っているので、それを次までに修正していきたいです」

【INTERVIEW】「誰か一人に頼るのではなくチーム全体で戦っていく」#6永山快(京都産業大・4年・主将・SG)

三者三様の特徴を持っていた4年生トリオが卒業した京産大。その中でも決勝まで勝ち進んだのはさすがだったが、決勝では近畿大に気圧され後手に回った印象が強い。主将を努める永山自身も、受け身になってしまったと反省する。絶対的な存在がいなくなった部分は、チーム力で補うしかない。課題のポイントははっきりしている。下を向かず、この先の大会に向かって欲しい。

─ 決勝を終えて率直に感じることは。

「うーん……まずは出だしのところで失点が続いて10点差をつけられてしまって。どこか昨日の天理戦で燃え尽きてしまっていたというか、出だしで10点差というのが、苦しかったですね」

— 出だしだけでなく、近畿大の2枚のウイングには後半にも走られる場面がありました。

「そうですね。この一試合を通して近大の方が前向きにプレーしていて、京産はどちらかと言うと一試合を通じて受け身になってしまって。そこは次の西日本に向けて修正していかなければいけないところかなと思います」

— 苦しい時間帯に宇都宮選手(#9)が孤軍奮闘しているようにも見えました。

「今シーズンのチームはインサイドが大きいという強みと、宇都宮のガードの部分が強みになってくると思いますし、1月から4ヶ月間練習してきて、ウイングの部分が良くないかと言ったら決してそうではないと思います。それぞれの連携の部分を課題と捉えて、次の大会に向けて練習していきたいです」

— 昨年の主力の3名(北條、上田、サンブ)が一気に卒業しました。存在感の大きさを感じていると思います。

「そうですね。あの3人を主体とする形でチーム作りを行ってきたので苦しいところです。今のうちには一対一の能力が高い選手とか、ディフェンスが特別に上手い選手というのはいない状況です。今大会も最初から苦しい試合が続いたので、誰か一人に頼るのではなく、チーム全体で戦っていくというのが今シーズンの大きな課題だと感じています」

— 逆に大会を通じて得られた収穫はありますか。

「今大会が始まるまでに練習試合があまりできていなくて、今大会の試合を通じてチームとして成長していこうということはチームみんなで話していたので、その部分では一試合目の神戸医療戦に比べたら課題も見つかりましたし、強みというのも見えてきたので、そこは収穫かなと思います」

— 今年のチームスタイルは。

「京産はずっとそうなんですけど、ディフェンスでアグレッシブに前から当たっていく堅守速攻のバスケットで、今年は特に3人が抜けてしまった分、そういうところで勝っていかないといけないと思っています」

— キャプテンとして意識していることはなんですか。

「経験の少ないメンバーも多い分、試合の中でどうしても悪い時間帯というのが出てきます。そういう時には積極的にみんなを集めて声かけをしていこうと思っています。自分に特別なリーダーシップがあるかというとそうではないんですけど、4年生同士で仲は良いので、僕が悪くても副キャプテンの佐原にもカバーしてもらって、悪い時間帯はみんなを集めて、まずコミュニケーションを取っていくということは大切にしています」

【INTERVIEW】「悔しい思いを良い経験だと捉えてこの先は優勝できるようにする」#33石井良樹(天理大・4年・主将・PG)

このオフ期間に、長年チームを率いてきた二杉監督が逝去した天理大。ただし昨年途中から就任した岡田コーチの下で、新しいエッセンスを加えながらも今までのチームスタイルを踏襲しつつ大きな目標を掲げ、高い意識で戦おうとする姿勢は崩れていない。今季の目標はインカレ優勝だという。そのためには、関西三冠タイトル奪還は必須だ。天理大のビッグタイトル獲得は6年前の西日本インカレにまで遡らなくてはならず、今のメンバーには優勝という経験がない。近畿大、京産大の牙城を崩せば、関西での優勝はもちろん、最後の大目標にも近づいていけるはずだ。天理大のスタイルを40分間持続させる高い集中力を磨いていく。

ー 最後は勝ったものの、3位という結果に対する受け止めは。

「優勝を目指してやってきたんですけど、昨日がタフなゲームで最後は我慢比べになりました。それで負けてしまって今日は3位決定戦になったんですけど、オフの期間中に二杉先生が亡くなられて、二杉先生の思いを受けて、二杉先生と一緒に戦っていく気持ちでやっていこうと、次の大会に向けて意味のある試合にしようというテーマを持って臨んでの今日の結果でした」

— 大会を通じて見えた課題は。

「気持ちの部分では最初からエナジーを出してやれたんですけど、去年の主力選手もいる中で気の緩みの部分もあったと思います。一番は不注意なミスが出てしまったこと、オフェンスリバウンドを取られたことであったりで、自分たちのイージーミスで負けにつながってしまったと思います」

— 内容的には天理大の志向するバスケットはできていた印象です。

「去年と違って、もっとエナジーを上げていこう、インテンシティーを上げていこうと言いながらディフェンスを作ってきたんですけど、途中途中でそれが下がってしまった場面もあったと思っています。それをどれだけ修正していけるかだと思うので、もっとレベルアップしていきたいと思います」

— まだ今の出来には満足していない?

「そうですね。まだ満足はしていないです」

— 先ほどのお話にありましたが、二杉監督が亡くなり、バスケットの中身にアレンジしていることはありますか。

「あるにはありますけど、ベースは二杉先生のスローゲームを基本にしています。それに新しいの部分も入れ込みながら作っている感じですね。今大会ではイージーミスでなかなか点が取れない時間帯も多くて、まだ決め切る力が足りないと感じています」

— 今季目標としていることは。

「今年はインカレ優勝を目標にやっています。この全関での悔しい思いを良い経験だと捉えて、この先の大会で優勝できるように頑張っていきたいです」

— キャプテンとしてはどのような形でチームにアプローチしていますか。

「アップの場面とかでみんなの集中が悪い時は集めて、モチベーションを上げたり、思うように得点できない場面では自分が声を出して雰囲気を高めたり、プレーでもハッスルして、声を出して引っ張っていくように意識しています。ただ、もっとコントロールできる余地はあると感じているので、この先も続けていかないといけないですね」


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